I Love Baseball 主砲の一振り 6

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3月・4月 ペナントレース開幕

本領発揮

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片山のストレートは常時142~145km/h 過去に151km/hをマークしたが 今はどんなに全力で投げても140後半ぐらい。

ボールの回転数が2100rpmと平均的 球種はフォーシーム ツーシーム カットボール 縦横のスライダー カーブ サークルチェンジ。

それらはプロの世界では平均的な変化量で 突出した球種は無い。


どれをとっても平均的な投手の片山だが マウンド度胸と年々進化するコントロールの良さで大崩れすることの無い 安定感のあるタイプだ。


間を使ったピッチングでバッターを打ち取るのが最大の特徴だが 万人受けしない地味なタイプの投手だ。


昨年19勝を挙げて自身2度目の最多勝を獲得したが
防御率は3.99と辛うじて3点台をキープ。


せめて 3点台前半ぐらいまでに抑えたいと思い
降谷から縦のスライダーを教わった。


縦のスライダーで奪三振を奪うピッチングを身に付け
今年は左のエースとしてGlanzの先発陣を牽引する存在になるつもりだ。





トップの刀根は3球 2番姫野は僅か1球で打ち取りツーアウトとなって 迎えるバッターは昨年新人王の清武。


【3番ファースト清武。背番号8】



メイプル産の黒のバットを右手に持ち 大股でゆっくりと右打席に入り左足で足元を固める。


186cm92kgと恵まれた体格から 目にも留まらぬスイングスピードでボールを遠くに飛ばす典型的なパワーヒッター。

2年目の今年は日本一と打率3割を目標に掲げ オープン戦から絶好調。



(さて、コイツはインコース低めの落ちる球が苦手なんだよな…)


毒島はマスク越しから清武の様子を観察する。


ややベースに覆い被さるようにしてグリップの位置は肩口よりやや高め。



「ヨシ」


それを見て毒島はサインを出した。


インコース膝元へのカットボールだ。


しかし 片山は首を振る。



それならばと 今度はインコースへのストレートを要求する。


これも首を振る。


「2年ボー相手に、インコース投げる必要は無いんだよ」


そう言うと今度は片山がサインを出した。


(バカヤロ、アウトコースなんて投げたら打たれるぞ!)


清武はアウトコースを逆らわずライト方向へ打ち返すのが得意だ。


昨年12本のホームランをライト方向へ打っている。


だが 片山は強気でアウトコースのサインを出す。



(ったく…初回だし、打たれても長打じゃなきゃいいか)


そう思い ミットを構えた。


「そう心配すんなって…コイツにはまだ打たれるワケにはいかないんだよっ!」


クセのないフォームから初球を投げた。


アウトコースへボール一個分外したストレート。

清武は遠いと思い見送る。


だが ボールはベース手前で小さくスライドした。


「ストライクワン!」


「エッ…」


清武が呆気に取られる。


「今の入ってるのか…?」


今日の主審はベテランの矢野だ。


矢野はアウトコースの球を広く取る傾向がある。


今のボールは微妙なコースだった。

片山はその事を知っていてアウトコースへ投げた。


「絶対入ってないと思うんだけどなぁ」


ブツブツ言いながら清武は再びバットを構える。


「甘いなぁ、2年目…使えるものは審判でも使わないと」


不敵な笑みを浮かべ 次のサインを出した。


(またアウトコースかよ…)


初球と同じアウトコースだ。


(2球続けてアウトコースはヤバいって!)


だが 片山はサインを変えない。


(マジかよ…)


「チッ…」


と軽く舌打ちをしてミットを構えた。


基本に忠実なオーバースローから2球目を投げた。


初球よりもかなり外に外れたボールが縦に割れるように変化する。


「ボールだっ!」


今度こそはボールだろうと確信して見送る。


「ストライクツー!」


「そんなバカなっ」


これも微妙なコースだ。


ストライクと言えばストライク ボールと言えばボールという非常に厄介なコースだ。


この判定に一塁側ベンチから酒井監督が出てリクエスト判定を要求した。



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