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顔を変えた過去

新たな顔

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東南アジアでは、現地の女と酒池肉林の宴を楽しんでいた達也と小島は翌日、貧民街にある怪しげな場所を訪れた。

「ここだ。いいか、ここからオレたちの再スタートだ」

「…やっぱり止めよう…オレ無理だよ」

「お前さぁ、借金払えるのかよ?どうすんだよ、ここまで来てやりたくない、なんてよ」

達也は何がなんでも、この計画を成功させなきゃならない。

「…ごまかせるのか?その自信がないんだよ」

「いいか、もしお前がオレに成りすましたら、今よりもっと、私腹を肥やすことが出来るんだ」

「だったらお前、オレになっても、何の得にもならないだろう?」

その通りだ。
達也が小島に成りすましても、何の得にもならない。

なのに、オレになりたがる。
これは、何かあるに違いない。

「オレな…もう、疲れたんだよ。
金も、もう必要ない。だから、お前がオレの代わりになって、上手くやってくれりゃいいんだよ。
な?お前のやりたいようにやりゃいいんだよ。金も女も、そしてお前の好きなギャンブルも、やりたい放題になれるんだ!それでも止めるのか?」

この誘惑に、小島は決意した。

「…わかった、じゃやってみよう」

「よし、行こうぜ!」

二人は、怪しげな建物の中に入っていった。

部屋に入ると、お香の匂いが充満してる。
少し甘い香りだ。

奥にはカーテンが仕切られており、医療器具が充実している。

達也と小島は、カーテンで仕切られたベッドで仰向けになった。

そして、数人の医師らしき人が達也達のいるベッドに入っていった。

(いよいよだ…オレは生まれ変わる。アイツらを騙してやる)

全身麻酔を打たれ、医師のなすがまま、手術は行われた。

手術が終わり、顔中に包帯が巻かれて、しばらくはその状態で過ごさなければならない。

達也と小島は、互いに顔をすり替えるように整形手術をした。

今は手術を終えたばかりなので、顔を確認することは出来ない。

だが、手術は成功したみたいだ。

後は包帯が取れるまでの期間は、じっとしているしかない。



それから、一ヶ月が経過した。

医師によって、包帯を外された。

二人とも鏡で顔を確認した。

「スゲー、オレ小島になってるよ」

手術の影響からか、滑舌が良くないが、自然と戻るらしい。

「これがオレ?」

小島は達也の顔になり、あまりのそっくりさに、ビックリしていた。

達也は身長182センチ、体重70キロ。
小島は身長180センチ、体重は68キロ。

体格もさほど変わらない。

だからこそ、達也は小島を選んだ。

「よし、これで完璧だ!小島、オレたちは再スタートだ」

「あぁ…だが、まだ信じられないな…オレがお前になるなんて」

「だろ?オレもお前になりきってら!手術は成功だ」

達也は小島になり、小島は達也に変わったのだった。

「小島、もう少しここで遊んでから帰ろうぜ!日本に帰ったらお前は社長だ。上手くやってくれよな」

「…う、うん。だが、クセとかバレないようにしないと」

「お前左利きだろ?人前では、右手使うようにしろよ」

達也は右利き、小島は左利きだ。
ちょっとしたクセの違いでバレてしまう。

「それと声だ。しばらくは旅行先で喉をやられて声が上手く出せないとか言って、常にマスクをすれば分からない。それじゃ、今日はまた歓楽街で再スタートを祝って遊びまくろうぜ!」

「…お、おう。じゃ、楽しんでから日本に帰ろうか」

達也のアイデアで顔をすり替えた小島だが、一抹の不安を抱えていた。

(オレ、アイツになりすませるのだろうか?第一、社長だなんて…)

「小島ぁ、心配すんな!お前は日本に帰ったら社長だ。いいか、ただひたすら横柄な態度とって、テキトーに対応してりゃいいんだよ!な、簡単だろ?」

「そ、そうかな?」

「いいか、会社の金は、お前の金同然だ。自由に使って、一生遊べる程の金を手にして、会社が傾き始めたら、他のヤツに社長業を譲ってやりゃいいんだよ!
その後、会社が潰れようが、お前には全く関係ないからな。どうだ、この作戦は?」

金…人間はこの言葉に弱い。

金の為なら人を欺く。人を陥れる。そして人の命をも奪ってしまう。

「とにかく今日は遊ぼう、遊んで遊びまくろうぜ」

達也の陽気な言葉に、小島は金の欲にかられ、日本に帰ったら社長として、好きな事をしよう!
徐々に、小島の表情が明るくなっていった。

(バカが!!もう、会社には金なんて無えんだよ!そして、お前はオレの身代わりに消される…今日がお前の最後の女遊びだ!)

そんな事は露知らず、小島は女を選んでいた。
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