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新たな出発

もう少しまともなウソをつけ

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翌週、いつものように教室に入った。
凜は席に着いてスマホを弄っていた。。

この女をどうやってこらしめようか?

そんな事を考えながらも、席に着き、教科書とノートを取り出した。

凜はオレの事を見る事はなく、授業中も黒板に書かれている文法をノートに書く。

オレは教科書を広げながら、凜に対する復讐をあれこれと考えていた。

するとオレの机に凜がメモ用紙をサッと置いた。

そのメモ用紙を見た。

【どう?レンタルの件?やってみない?手荒な事してゴメンね】


ゴメンねだと?ゴメンで済む事じゃないだろ!

腹が立つが、ここは敢えて凜の誘いに乗ることにした。

凜の書いたメモ用紙の裏に

【詳しい事は明日聞かせてくれる?昼間なんてどうかな?】
と書いて凜の机に置いた。

凜はそれを見て、またメモ用紙をオレの机に置いた。
【いいよ、仕事は大丈夫なの?】

更にオレは裏に返事を書いた。

【大丈夫、一日休むから明日の午後にオレのアパートに来てくれないかな?】

そう書いて、また凜の机に置いた。

凜はオレの方に顔を向け、ニヤっとOKサインを出した。

これでコイツはオレが誘いに乗ったと思っているはず。

その後は、これと言った会話もせずに授業が終わり、家に帰った。

翌朝、オレは会社に連絡を入れた。
体調不良により、一日休ませて欲しいと。

会社も体調が悪いなら仕方ない、早く治して明日からまた来いよ、と言ってくれた。
あの女の為に、仕事を休むのは申し訳ない。
だが、これでヤツをハメる事が出来る。

オレは午前中銀行に行って、沢渡さんから貰った残りの金全てを引き下ろした。

後は凜が家に来るのを待つだけ。

午後イチでピンポーンとチャイムが鳴った。

ドアを開けると、満面の笑みで凜が立っていた。

「どうぞ」

オレは凜を部屋に招き入れた。

「お邪魔しまーす」

能天気にコイツはホイホイと部屋に入った。

「何飲む?コーヒーと紅茶とミネラルウォーターしかないけど」

「じゃあ、コーヒーで」

「ミルクと砂糖は?」

「んー、ブラックでいいよっ」

オレは台所でコーヒーを淹れて凜のテーブルの前に置いた。

「ありがとう、いただきまーす」

さぁ、どんな話をしてくるのやら。

オレは敢えて凜から話を切り出すまで、その事を言うのは控えた。

「ここ家賃どのくらいなの?」

「ん?月に55000円だよ」

さり気なく金の話をしてきた。
ここから本題に持ち込もうって魂胆だろう。

「もっといいとこに住めるよ、古賀くんなら」

「今の給料じゃここの部屋の家賃だけで精一杯だよ」

「だからあの話持ってきたんじゃん」

「あの三人組がそうでしょ?ずいぶん手荒なマネしてくれたよね」

「ゴメンね、あんな手を使って。でもどうしても、古賀くんにはこの仕事引き受けて欲しいの、お願いっ!」

「中山さん」

「何?」

「オレを紹介してどうすんの?そこまでしてオレを引き込むって事は、何かあるからでしょ?もう隠し事は無しで言ってくれよ」

コイツの事だ。何か裏があるに違いない。

「んー、実は紹介するとね、いくらかマージンが入ってくるのよ。だからちょっと乱暴だったけど、あの三人組に頼んだの。
でも、決して古賀くんを痛め付けるとかじゃなく、この仕事してもらいたい、それだけなの。だからお願い、あの事は謝るから」

「何であの三人組に頼んだの?」

色々と聞きたいことはある。

「実はあの三人組の一人が中学の同級生で、私と付き合おうってしつこいの。
だから私、その条件として、古賀くんをレンタルボーイにさせたら付き合うわって言っちゃったの、ホントにゴメン!」

…そういう事か。

「何でオレにこだわるの?他の男に頼めばいいじゃん」

執拗にオレに勧誘してくるのは何なのか?そこを知りたい。
どうせ、16のガキだと思って軽く見られてるフシがあるからな。

「どうしてって?うーん、女の直感かな」

「直感?」

「古賀くん、たまに見せる目付きや表情を見て、何か他の人と違うなぁって。上手くは言えないけど、何か女の人の扱いは上手そうに思えたから」

オレの事を観察していたのか。

「で、そのレンタルってのは大体いくらぐらい貰えるの?」

「それは月にって事?」

「うん、月に平均するとどのくらい貰えるワケ?」

「それは人によりけりかな。指名が多ければ多い程、貰えるし、100は楽に越えるわね」

「100と言っても、取り分は6:4だから60万じゃないの?」

「んー、でもほら、小遣いとか貰えるから。そこは会員制で、年収もかなり貰ってる人じゃなきゃ入れない条件なの。
金と暇をもて余してるセレブなんてケッコーいるのよ」

セレブねぇ。

そのセレブ相手に股開いて大金得るのか。
風俗嬢と一緒じゃねえか。

「で、オレを紹介すれはいくらマージン貰えるの?」

オレも凜を注意深く勧誘する事にした。

「マージン?まぁ大した額じゃないけど」

「いくらぐらいなの?」

「んー、その紹介した人の容姿や性格とかもあるからね。
登録するにはそれなりの審査があるのよ。いい人材ならかなり貰えるしね」

いい人材?
しかも、秘密の仕事だろ?
こんなに口が軽くていいんだろうか。

「で、中山さんて毎月いくらぐらい貰えるの?」

「何で?」

「だって肝心な事でしょ?もし中山さんがオレの立場だとしたら、やっぱりそういうの気になるでしょ?」

どう答えるか…

「そうねぇ、少なくとも300は貰ってるかなぁ」

一瞬、凜は目を逸らしながら答えた。

何かで見たことあるが、人はウソをつく時、目を右に逸らすらしい。

全員がそうとは限らないが、コイツは話を大きくしてるに違いない。

何故、月に300万も貰って、尚且つマージンにこだわるのか。

マージンと言っても、それほど大した額ではないだろう。

コイツは月に300万貰ってるなんていうのはウソに違いない。

300万どころか、100万すら貰ってないんじゃないかと思う。

オレを世間知らずのガキだと思って上手い話を持ち込んできたが、こっちは兄に色々と騙されて、そのテの話はたくさん聞いてきた。

こんなヤツは、兄と比べたらまだまだだ。

聞き出すのはこれぐらいにして、そろそろ本題に入ろうか。
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