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キャンプイン
棚からぼたもち?瓢箪から駒?
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Glanzにとって2つの難題とも言える、南方のポジションと正捕手の存在。
選手も徐々に仕上がっていき、オープン戦が待ち構えている。
そろそろ実戦に慣れなきゃならない時期に差し掛かってきている。
「こうなりゃ、南方を指名打者にして、滝沢と比村のツープラトンでキャッチャーやらせるしかないのか…」
守備部門の監督中田はため息混じりに呟く。
去年はそれでリーグ優勝を果たしたが、今年もそれで二連覇を達成出来るのか。
去年は選手達がキャリアハイと呼べる程の数字を叩き出した。
今年も好調を維持出来るかと問われれば、Noと言わざるを得ない。
他球団は徹底的にGlanzをマークするだろうし、研究されまくっているに違いない。
しかし、その厳しい包囲網を掻い潜っていかなければ二連覇は達成出来ない。
二連覇を成し遂げるには、更なる進化が必要となる。
キャンプも終わりに近づいたある日、南方はベンチに置いてあったキャッチャーミットを手にはめ、キャッチャーの真似事の様な事をしている。
真似事なのだが、本職の様にも見え、サマになっている。
「おぉ、傍から見ると随分似合ってるじゃんか」
中田が声を掛ける。
「そ、そうっすか?」
南方も満更ではない表情を浮かべる。
「実は自分、キャッチャーミットって好きなんですよ」
「キャッチャーミットが好き?形がか?」
「ハイ…形もそうだけど、これだけ大きいと何でも捕れそうな気がして」
南方は学生時代から通常のグラブとは別にキャッチャーミットを保有していた。
特に何をするワケでもないが、キャッチャーミットを手にするだけでワクワク感が止まらない。
(キャッチャーミットが好きとは変わってんなぁ、コイツは…
っ!待てよ、この格好がサマになってるとしたら…)
中田はある事を閃いた。
「おい、南方。オマエそう言えば、打席では球種を読んで打つって言ってたよな?」
南方は来た球を打つのではなく、ピッチャーの球種を把握し、どのコースにどの球種を投げるのかを予測して打つタイプだ。
「ハイ、頭の中で読み合いっていうか、ピッチャーではなく、キャッチャーと対戦する気分で打ってます」
「オマエ、ちょっとキャッチャーやってみないか?」
「エッ!マジっすか?!」
南方の声のトーンが上がった。
「でも、ピッチャーの投げた球捕れるか?」
「やってみます!是非やらせてください!」
興奮気味に答える。
中田の提案で、急遽紅白戦が行われた。
南方は急造キャッチャーとしてマスクを被る。
バッテリーを組むのは同期の皐月。
「あくまでも余興みたいなもんだから、リードは任せるよ」
「じゃあ、自分がサイン出すんで、気に入らなければ首を振ってください」
軽い打ち合わせの後、本塁でミットを構える。
プロテクターを付けてしゃがむ姿はとても急造のキャッチャーとは思えない程、サマになってる。
バッターは庵野。
「オマエ、キャッチャーやった事あるのか?」
「いえ、初めてっす」
「その割には、それっぽい構えじゃんかよ」
「あざっす」
南方は配球を組み立てる。
(この人はインコースが得意だ。じゃあ、初球はこれでどうだ)
サインを出した。
皐月は大きく頷き初球を投げた。
126 km/hのストレートがインコース低めに決まった。
「ストライクワン!」
南方の構えたミットはブレる事無く、しっかりしたキャッチングを披露する。
「おぉ~、中々やるじゃんか」
中田は驚きの声を上げる。
「OK、ナイスボール!」
皐月に声を掛け、返球する。
「アイツ、キャッチャーの練習してたんじゃないのか?」
そう思わせる程の出来映えだ。
続いてのサインは先程よりやや内寄りのコースでカーブを要求する。
皐月は首を振る事無く、頷いた後、2球目を投げた。
フワッとした大きな弧を描いたボールが縦に割れるようにミットに入った。
「ストライクツーっ!」
(次はコレだ)
再びサインを出す。
3球目を投げた。
またもやスローカーブで、同じコースより更に内側だ。
(ボールだ)
庵野は見送った。
だが、南方は本職顔負けのフレーミングでストライクゾーンにミットを動かす。
「ストライクアウト!」
「ウソっ!今のボールでしょ?」
「僅かに入ってるよ」
「そんなぁ~…」
見事なフレーミングで見逃し三振に仕留めた。
「おい、今の見たか?」
中田は隣に座る滝沢に聞いてみた。
「ハイ。あんなフレーミングどこで覚えたのか…あれは一朝一夕で身につくもんじゃないですよ」
滝沢も唸るほどのフレーミングだった。
「アイツ、本気でキャッチャーやりたいんじゃないのか」
南方の本気度が伝わる。
選手も徐々に仕上がっていき、オープン戦が待ち構えている。
そろそろ実戦に慣れなきゃならない時期に差し掛かってきている。
「こうなりゃ、南方を指名打者にして、滝沢と比村のツープラトンでキャッチャーやらせるしかないのか…」
守備部門の監督中田はため息混じりに呟く。
去年はそれでリーグ優勝を果たしたが、今年もそれで二連覇を達成出来るのか。
去年は選手達がキャリアハイと呼べる程の数字を叩き出した。
今年も好調を維持出来るかと問われれば、Noと言わざるを得ない。
他球団は徹底的にGlanzをマークするだろうし、研究されまくっているに違いない。
しかし、その厳しい包囲網を掻い潜っていかなければ二連覇は達成出来ない。
二連覇を成し遂げるには、更なる進化が必要となる。
キャンプも終わりに近づいたある日、南方はベンチに置いてあったキャッチャーミットを手にはめ、キャッチャーの真似事の様な事をしている。
真似事なのだが、本職の様にも見え、サマになっている。
「おぉ、傍から見ると随分似合ってるじゃんか」
中田が声を掛ける。
「そ、そうっすか?」
南方も満更ではない表情を浮かべる。
「実は自分、キャッチャーミットって好きなんですよ」
「キャッチャーミットが好き?形がか?」
「ハイ…形もそうだけど、これだけ大きいと何でも捕れそうな気がして」
南方は学生時代から通常のグラブとは別にキャッチャーミットを保有していた。
特に何をするワケでもないが、キャッチャーミットを手にするだけでワクワク感が止まらない。
(キャッチャーミットが好きとは変わってんなぁ、コイツは…
っ!待てよ、この格好がサマになってるとしたら…)
中田はある事を閃いた。
「おい、南方。オマエそう言えば、打席では球種を読んで打つって言ってたよな?」
南方は来た球を打つのではなく、ピッチャーの球種を把握し、どのコースにどの球種を投げるのかを予測して打つタイプだ。
「ハイ、頭の中で読み合いっていうか、ピッチャーではなく、キャッチャーと対戦する気分で打ってます」
「オマエ、ちょっとキャッチャーやってみないか?」
「エッ!マジっすか?!」
南方の声のトーンが上がった。
「でも、ピッチャーの投げた球捕れるか?」
「やってみます!是非やらせてください!」
興奮気味に答える。
中田の提案で、急遽紅白戦が行われた。
南方は急造キャッチャーとしてマスクを被る。
バッテリーを組むのは同期の皐月。
「あくまでも余興みたいなもんだから、リードは任せるよ」
「じゃあ、自分がサイン出すんで、気に入らなければ首を振ってください」
軽い打ち合わせの後、本塁でミットを構える。
プロテクターを付けてしゃがむ姿はとても急造のキャッチャーとは思えない程、サマになってる。
バッターは庵野。
「オマエ、キャッチャーやった事あるのか?」
「いえ、初めてっす」
「その割には、それっぽい構えじゃんかよ」
「あざっす」
南方は配球を組み立てる。
(この人はインコースが得意だ。じゃあ、初球はこれでどうだ)
サインを出した。
皐月は大きく頷き初球を投げた。
126 km/hのストレートがインコース低めに決まった。
「ストライクワン!」
南方の構えたミットはブレる事無く、しっかりしたキャッチングを披露する。
「おぉ~、中々やるじゃんか」
中田は驚きの声を上げる。
「OK、ナイスボール!」
皐月に声を掛け、返球する。
「アイツ、キャッチャーの練習してたんじゃないのか?」
そう思わせる程の出来映えだ。
続いてのサインは先程よりやや内寄りのコースでカーブを要求する。
皐月は首を振る事無く、頷いた後、2球目を投げた。
フワッとした大きな弧を描いたボールが縦に割れるようにミットに入った。
「ストライクツーっ!」
(次はコレだ)
再びサインを出す。
3球目を投げた。
またもやスローカーブで、同じコースより更に内側だ。
(ボールだ)
庵野は見送った。
だが、南方は本職顔負けのフレーミングでストライクゾーンにミットを動かす。
「ストライクアウト!」
「ウソっ!今のボールでしょ?」
「僅かに入ってるよ」
「そんなぁ~…」
見事なフレーミングで見逃し三振に仕留めた。
「おい、今の見たか?」
中田は隣に座る滝沢に聞いてみた。
「ハイ。あんなフレーミングどこで覚えたのか…あれは一朝一夕で身につくもんじゃないですよ」
滝沢も唸るほどのフレーミングだった。
「アイツ、本気でキャッチャーやりたいんじゃないのか」
南方の本気度が伝わる。
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