Baseball Freak 主砲の一振り 7

sky-high

文字の大きさ
上 下
141 / 181
キャンプイン

棚からぼたもち?瓢箪から駒?

しおりを挟む
Glanzにとって2つの難題とも言える、南方のポジションと正捕手の存在。

選手も徐々に仕上がっていき、オープン戦が待ち構えている。

そろそろ実戦に慣れなきゃならない時期に差し掛かってきている。


「こうなりゃ、南方を指名打者にして、滝沢と比村のツープラトンでキャッチャーやらせるしかないのか…」


守備部門の監督中田はため息混じりに呟く。


去年はそれでリーグ優勝を果たしたが、今年もそれで二連覇を達成出来るのか。


去年は選手達がキャリアハイと呼べる程の数字を叩き出した。



今年も好調を維持出来るかと問われれば、Noと言わざるを得ない。


他球団は徹底的にGlanzをマークするだろうし、研究されまくっているに違いない。


しかし、その厳しい包囲網を掻い潜っていかなければ二連覇は達成出来ない。



二連覇を成し遂げるには、更なる進化が必要となる。




キャンプも終わりに近づいたある日、南方はベンチに置いてあったキャッチャーミットを手にはめ、キャッチャーの真似事の様な事をしている。


真似事なのだが、本職の様にも見え、サマになっている。



「おぉ、傍から見ると随分似合ってるじゃんか」


中田が声を掛ける。


「そ、そうっすか?」


南方も満更ではない表情を浮かべる。


「実は自分、キャッチャーミットって好きなんですよ」


「キャッチャーミットが好き?形がか?」


「ハイ…形もそうだけど、これだけ大きいと何でも捕れそうな気がして」



南方は学生時代から通常のグラブとは別にキャッチャーミットを保有していた。


特に何をするワケでもないが、キャッチャーミットを手にするだけでワクワク感が止まらない。



(キャッチャーミットが好きとは変わってんなぁ、コイツは…
っ!待てよ、この格好がサマになってるとしたら…)


中田はある事を閃いた。


「おい、南方。オマエそう言えば、打席では球種を読んで打つって言ってたよな?」


南方は来た球を打つのではなく、ピッチャーの球種を把握し、どのコースにどの球種を投げるのかを予測して打つタイプだ。


「ハイ、頭の中で読み合いっていうか、ピッチャーではなく、キャッチャーと対戦する気分で打ってます」


「オマエ、ちょっとキャッチャーやってみないか?」


「エッ!マジっすか?!」


南方の声のトーンが上がった。


「でも、ピッチャーの投げた球捕れるか?」


「やってみます!是非やらせてください!」


興奮気味に答える。



中田の提案で、急遽紅白戦が行われた。


南方は急造キャッチャーとしてマスクを被る。


バッテリーを組むのは同期の皐月。


「あくまでも余興みたいなもんだから、リードは任せるよ」


「じゃあ、自分がサイン出すんで、気に入らなければ首を振ってください」


軽い打ち合わせの後、本塁でミットを構える。

プロテクターを付けてしゃがむ姿はとても急造のキャッチャーとは思えない程、サマになってる。


バッターは庵野。



「オマエ、キャッチャーやった事あるのか?」


「いえ、初めてっす」


「その割には、それっぽい構えじゃんかよ」


「あざっす」


南方は配球を組み立てる。


(この人はインコースが得意だ。じゃあ、初球はこれでどうだ)


サインを出した。


皐月は大きく頷き初球を投げた。


126 km/hのストレートがインコース低めに決まった。


「ストライクワン!」


南方の構えたミットはブレる事無く、しっかりしたキャッチングを披露する。


「おぉ~、中々やるじゃんか」


中田は驚きの声を上げる。



「OK、ナイスボール!」


皐月に声を掛け、返球する。


「アイツ、キャッチャーの練習してたんじゃないのか?」


そう思わせる程の出来映えだ。



続いてのサインは先程よりやや内寄りのコースでカーブを要求する。


皐月は首を振る事無く、頷いた後、2球目を投げた。


フワッとした大きな弧を描いたボールが縦に割れるようにミットに入った。


「ストライクツーっ!」


(次はコレだ)


再びサインを出す。



3球目を投げた。


またもやスローカーブで、同じコースより更に内側だ。


(ボールだ)


庵野は見送った。


だが、南方は本職顔負けのフレーミングでストライクゾーンにミットを動かす。


「ストライクアウト!」


「ウソっ!今のボールでしょ?」


「僅かに入ってるよ」


「そんなぁ~…」



見事なフレーミングで見逃し三振に仕留めた。



「おい、今の見たか?」


中田は隣に座る滝沢に聞いてみた。


「ハイ。あんなフレーミングどこで覚えたのか…あれは一朝一夕で身につくもんじゃないですよ」


滝沢も唸るほどのフレーミングだった。


「アイツ、本気でキャッチャーやりたいんじゃないのか」


南方の本気度が伝わる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」 義姉にそう言われてしまい、困っている。 「義父と寝るだなんて、そんなことは

お父さん!義父を介護しに行ったら押し倒されてしまったけど・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
今年で64歳になる義父が体調を崩したので、実家へ介護に行くことになりました。 「お父さん、大丈夫ですか?」 「自分ではちょっと起きれそうにないんだ」 「じゃあ私が

親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。 「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」 「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」 「・・・?は、はい」 いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・ その夜。

俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・

白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。 その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。 そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。

処理中です...