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梅雨入り 6月後半
衰え
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初球のスライダーは微妙なコースだったが、判定はボール。
選球眼の良い吉川が見送ったせいでボールと判定されたのか。
しかし、滝沢は再びスライダーのサインを出す。
(ボールになるのに、またスライダーを投げろってか?)
戸惑う篁だが、滝沢はサインを変えない。
(まぁ、オレがサインを出してるワケじゃないし、キャッチャーの言う通りに投げればいいか)
気を取り直し、2球目を投げた。
初球と同じ、斜めに変化するスライダーがアウトコース低めに決まった。
「ストライクワン!」
「エッ…」
今度は吉川が驚き、主審を見る。
「さっきと同じコースでは?」
「いや、今のはギリギリ入ってた」
主審は自信を持って答える。
「そんなバカな…」
吉川は首を傾げるが、必要以上に抗議すると後々面倒な事になると思い、判定に従った。
「私わかります(^ ^)」
「ん?」
ひろしが再び解説する。
「今日の主審は高橋さんです(^ ^)」
「んなこたぁ、分かってんだよ!」
「んだな(^ ^)」
何が言いたいんだ…
「高橋さんは、低めを取る傾向があります(^ ^)」
「ナニ?」
「あのコースをストライクと判定すれば、吉川選手は見送る事が出来ませんち!」
「まぁ、そうなるわな」
要は、あのコースに投げれば吉川はバットを振らざるを得ない。
そこにつけ込んだ配球をしているというワケだ。
「それだけじゃないですち!」
ひろしは続ける。
「滝沢選手はフレーミングが上手いキャッチャーです(^ ^)」
「あぁ…そうか、そういう事か!」
感の鈍い榊でも理解出来た。
あのコースは判定が難しい。
審判によっては、ストライクとコールすれば、ボールとコールする者もいる。
では、ストライクとコールさせるにはどうすればいいか。
それはキャッチャーのフレーミング次第でもある。
滝沢はフレーミングに定評がある。
それを利用すれば、審判はストライクとコールするに違いないと。
「そういう事ですち!」
「あのコースに投げろって、お前が指示したのか?」
「私負担かからないようアドバイスしました(^^)」
という事らしい。
その吉川は4球目のスライダーを引っ掛け、ショートゴロのゲッツーでスリーアウトチェンジ。
「今までなら、あのコースは難なく長打に出来たのに…アイツも今年で36か。さすがに衰えてきたかもな」
かつてのライバルだった財前がポツリと呟く。
「衰え?吉川が衰えてくれたら、99ersなんて軽く捻り潰してやるわい!ワハハハハハハ!」
「バカ言ってんじゃねえよ、カントク!
アイツは選手兼監督なんだぜ!
選手としての力は衰えても、監督としての能力は衰えてないんだぜ!」
「そりゃそうだけどよ」
衰えたなら、衰えたなりの戦い方があるはず。
99ersはそう簡単に戦力ダウンするハズが無いと財前は思った。
選球眼の良い吉川が見送ったせいでボールと判定されたのか。
しかし、滝沢は再びスライダーのサインを出す。
(ボールになるのに、またスライダーを投げろってか?)
戸惑う篁だが、滝沢はサインを変えない。
(まぁ、オレがサインを出してるワケじゃないし、キャッチャーの言う通りに投げればいいか)
気を取り直し、2球目を投げた。
初球と同じ、斜めに変化するスライダーがアウトコース低めに決まった。
「ストライクワン!」
「エッ…」
今度は吉川が驚き、主審を見る。
「さっきと同じコースでは?」
「いや、今のはギリギリ入ってた」
主審は自信を持って答える。
「そんなバカな…」
吉川は首を傾げるが、必要以上に抗議すると後々面倒な事になると思い、判定に従った。
「私わかります(^ ^)」
「ん?」
ひろしが再び解説する。
「今日の主審は高橋さんです(^ ^)」
「んなこたぁ、分かってんだよ!」
「んだな(^ ^)」
何が言いたいんだ…
「高橋さんは、低めを取る傾向があります(^ ^)」
「ナニ?」
「あのコースをストライクと判定すれば、吉川選手は見送る事が出来ませんち!」
「まぁ、そうなるわな」
要は、あのコースに投げれば吉川はバットを振らざるを得ない。
そこにつけ込んだ配球をしているというワケだ。
「それだけじゃないですち!」
ひろしは続ける。
「滝沢選手はフレーミングが上手いキャッチャーです(^ ^)」
「あぁ…そうか、そういう事か!」
感の鈍い榊でも理解出来た。
あのコースは判定が難しい。
審判によっては、ストライクとコールすれば、ボールとコールする者もいる。
では、ストライクとコールさせるにはどうすればいいか。
それはキャッチャーのフレーミング次第でもある。
滝沢はフレーミングに定評がある。
それを利用すれば、審判はストライクとコールするに違いないと。
「そういう事ですち!」
「あのコースに投げろって、お前が指示したのか?」
「私負担かからないようアドバイスしました(^^)」
という事らしい。
その吉川は4球目のスライダーを引っ掛け、ショートゴロのゲッツーでスリーアウトチェンジ。
「今までなら、あのコースは難なく長打に出来たのに…アイツも今年で36か。さすがに衰えてきたかもな」
かつてのライバルだった財前がポツリと呟く。
「衰え?吉川が衰えてくれたら、99ersなんて軽く捻り潰してやるわい!ワハハハハハハ!」
「バカ言ってんじゃねえよ、カントク!
アイツは選手兼監督なんだぜ!
選手としての力は衰えても、監督としての能力は衰えてないんだぜ!」
「そりゃそうだけどよ」
衰えたなら、衰えたなりの戦い方があるはず。
99ersはそう簡単に戦力ダウンするハズが無いと財前は思った。
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