81 / 182
6月オールスターファン投票
無回転
しおりを挟む
先頭打者の室井を三球三振に仕留めた東山。
だが、次から三人連続で怪物バッターが襲いかかる。
【2番ん…センターぁ~、唐澤ぁ~、背番号1ぃ~っ】
相変わらずのアナウンスだ。
一説によると、ウグイス嬢はかなりの熟女で、声だけ聞くと20代と勘違いするらしいのだが、誰も正体を見た事は無いという。
そんな中、バットを手に唐澤が素振りをしながら打席に入る。
インターカンファレンスでは、アポロリーグを代表するピッチャーを次々と打ち崩した場面が多く見られた。
今年からバッティンググローブを外し、素手でバットを持つ事によって、バッティングの感覚をよりリアルにさせた事が功を奏す。
(イヤなバッターが立て続けに登場すんのかよ…)
唐澤の次は鬼束、鬼束の次は結城と、気が休まるヒマが無い。
相手投手はこの打順で神経をかなりすり減らすらしい。
いつもの様に、自然体の構えで力みが全く感じられない。
一見スキだらけのスタンスだが、どこを投げても打たれそうなオーラを放っている。
「私わかります(^^)」
「今度は何だ」
「唐澤選手は球種が読めるタイプですち!」
「らしいな。結城も同じタイプなんだろ?」
「んだな(^ ^)」
「何が言いてえんだよ!」
とにかく前置きが長い。
「唐澤選手や結城選手は、櫻井監督と同じ頭に球種が浮かぶ閃きタイプですち!」
「閃きタイプ…とは?」
「集中力を極限に高めると、ピッチャーが投げた瞬間に球種が分かるみたいですち!」
櫻井の全盛期はおよそ4割近い確率で球種が浮かんできたという。
ちなみに、結城や唐澤は3割程の確率らしい。
(どんなに打つバッターでも、残りの7割は凡退するんだ。
そう考えれば、ピッチャーの方が断然有利じゃないか)
東山は自分に言い聞かせる。
比村がサインを出した。
(ん?)
もう一度サインを見た。
(ホントかよ…)
少し戸惑いつつも初球を投げた。
ハーフスピードの球がお辞儀するように低めに沈む。
唐澤はピクリとも動かない。
「ボールワン!」
滅多に投げないパームボールを投げた。
ルーキー時代はパームを多投したが、長打になりやすい為、最近は封印している。
(こんな球通用しないって)
低めに外れたせいで見送ったが、ストライクゾーンに入ったら長打を打たれていただろう。
続いて2球目はワンシームを要求した。
(これも最近投げてないっつーの!)
それでも比村はワンシームを要求する。
シンカー気味に変化するワンシームだが、パーム同様最近は投げていない。
(打たれてもオレのせいじゃないからな)
仕方なくサインに頷き、2球目を投げた。
アウトコースからボールになるワンシームだが、唐澤は素早くバットを合わせた。
「打たれたっ…」
打球はライトへグーンと伸びるが、僅かに切れてファール。
「あっぶねぇ~…」
胸を撫で下ろす。
それにしても、パームやワンシームと最近投げてない球を要求するのは何か意図があるのだろうか。
(次はまともなサインを出してくれよ)
比村がサインを出した。
(…エェ~っ?)
今度はフォークだ。
ルーキー時代には二種類のフォークを投げていたが、それすらも封印している。
現在の東山の全球種は、ストレートにスライダー、カットにカーブ、シンカー、大きく沈むチェンジアップ。
以前はそれらの球種に加え、パームやフォークも投げていた。
(何でフォークまで封印したんだっけ…)
全く思い出せない。
(まぁいいか)
今は目の前のバッターに集中だ。
東山が3球目を投げた。
縫い目に指を掛けてないせいか、無回転になり、空気抵抗を受けて揺れながら落ちた。
比村は慌ててミットを出すが、予測出来ない軌道に戸惑い後逸してしまう。
「ボールツー!」
「今のは何だ?」
投げた本人でさえ、どう変化するのか分からない程だ。
だが、次から三人連続で怪物バッターが襲いかかる。
【2番ん…センターぁ~、唐澤ぁ~、背番号1ぃ~っ】
相変わらずのアナウンスだ。
一説によると、ウグイス嬢はかなりの熟女で、声だけ聞くと20代と勘違いするらしいのだが、誰も正体を見た事は無いという。
そんな中、バットを手に唐澤が素振りをしながら打席に入る。
インターカンファレンスでは、アポロリーグを代表するピッチャーを次々と打ち崩した場面が多く見られた。
今年からバッティンググローブを外し、素手でバットを持つ事によって、バッティングの感覚をよりリアルにさせた事が功を奏す。
(イヤなバッターが立て続けに登場すんのかよ…)
唐澤の次は鬼束、鬼束の次は結城と、気が休まるヒマが無い。
相手投手はこの打順で神経をかなりすり減らすらしい。
いつもの様に、自然体の構えで力みが全く感じられない。
一見スキだらけのスタンスだが、どこを投げても打たれそうなオーラを放っている。
「私わかります(^^)」
「今度は何だ」
「唐澤選手は球種が読めるタイプですち!」
「らしいな。結城も同じタイプなんだろ?」
「んだな(^ ^)」
「何が言いてえんだよ!」
とにかく前置きが長い。
「唐澤選手や結城選手は、櫻井監督と同じ頭に球種が浮かぶ閃きタイプですち!」
「閃きタイプ…とは?」
「集中力を極限に高めると、ピッチャーが投げた瞬間に球種が分かるみたいですち!」
櫻井の全盛期はおよそ4割近い確率で球種が浮かんできたという。
ちなみに、結城や唐澤は3割程の確率らしい。
(どんなに打つバッターでも、残りの7割は凡退するんだ。
そう考えれば、ピッチャーの方が断然有利じゃないか)
東山は自分に言い聞かせる。
比村がサインを出した。
(ん?)
もう一度サインを見た。
(ホントかよ…)
少し戸惑いつつも初球を投げた。
ハーフスピードの球がお辞儀するように低めに沈む。
唐澤はピクリとも動かない。
「ボールワン!」
滅多に投げないパームボールを投げた。
ルーキー時代はパームを多投したが、長打になりやすい為、最近は封印している。
(こんな球通用しないって)
低めに外れたせいで見送ったが、ストライクゾーンに入ったら長打を打たれていただろう。
続いて2球目はワンシームを要求した。
(これも最近投げてないっつーの!)
それでも比村はワンシームを要求する。
シンカー気味に変化するワンシームだが、パーム同様最近は投げていない。
(打たれてもオレのせいじゃないからな)
仕方なくサインに頷き、2球目を投げた。
アウトコースからボールになるワンシームだが、唐澤は素早くバットを合わせた。
「打たれたっ…」
打球はライトへグーンと伸びるが、僅かに切れてファール。
「あっぶねぇ~…」
胸を撫で下ろす。
それにしても、パームやワンシームと最近投げてない球を要求するのは何か意図があるのだろうか。
(次はまともなサインを出してくれよ)
比村がサインを出した。
(…エェ~っ?)
今度はフォークだ。
ルーキー時代には二種類のフォークを投げていたが、それすらも封印している。
現在の東山の全球種は、ストレートにスライダー、カットにカーブ、シンカー、大きく沈むチェンジアップ。
以前はそれらの球種に加え、パームやフォークも投げていた。
(何でフォークまで封印したんだっけ…)
全く思い出せない。
(まぁいいか)
今は目の前のバッターに集中だ。
東山が3球目を投げた。
縫い目に指を掛けてないせいか、無回転になり、空気抵抗を受けて揺れながら落ちた。
比村は慌ててミットを出すが、予測出来ない軌道に戸惑い後逸してしまう。
「ボールツー!」
「今のは何だ?」
投げた本人でさえ、どう変化するのか分からない程だ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる