Baseball Freak 主砲の一振り 7

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5月 交流戦前

二刀流とルーキー

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試合が始まった。

先発片山はこれが2度目の登板。

前回は2点に抑えながら敗け投手となったが、調子は決して悪くない。

先頭の刀根をストレートでショートゴロに打ち取ると、2番姫野はスライダーでサードゴロ、3番新外国ルークを縦のスライダーで空振りの三振に抑え、三者凡退で1回の裏を終了した。


対するSuper Phoenixの先発林は、サイド気味のスリークォーターから大きく曲がるスライダーとシンカーをコーナーに決めるスタイル。


トップバッターの石川をスライダーでセカンドゴロに打ち取り、2番クロフォードをストレートでセンターフライに打ち取る。


3番白石はフルカウントまで粘ったが、シンカーに手を出し、ショートゴロでスリーアウト。




そして序盤は投手戦となり、中盤の5回へ。

この回先頭は6番麻生。


第1打席はシンカーを引っ掛けサードゴロに倒れた。


「さて、そろそろワシの実力を見せつける時が来たようじゃのぉ」


偉そうな口調で黒のバットを手にすると、悠然とした歩調で打席に向かった。


「アイツ、全然懲りてねぇじゃん!」


キャプテンの石川が呆れた顔でその様子を見る。


「また調子こいたら、ボコってやるよ」


片山は涼しい顔で言う。


「ボコるって…今は何かとうるさいから、なるべく穏便にした方が」


「何言ってんだよ、ああいうのは身をもって教えてやらないとなぁ」


結城と違い、典型的な元ヤンタイプだ。



打席に立ち、神主打法と呼ばれるフォームで正面にバットを構える。


バットがユラユラと動く。


グリップを上下に動かすヒッチと、スイングの際に手首を前後に動かすコックが特徴だ。


タイミングとパワーが生まれる動作だが、一長一短で身につけられるものではない。


それだけ、野球に対して真摯な気持ちで取り組んでいる証だ。



表情が一段と険しくなる。


1球1球に対する真剣度が伝わる。



マウンド上の林は初球ボールになるスライダーを投げた。



麻生はボールと読んだのか、バットを動かさず見送る。


2球目はインコースへ142km/hのストレートが決まりストライク。


3球目、外へ逃げるシンカーに手を出すが、打球は左に切れてファール。


カウントはワンボール、ツーストライクとなった。


4球目、外から大きく曲がるスライダーを投じた。


この球を待ってたとばかりに、グリップを一旦上げて曲がりっぱなを弾き返した。


打球はライナーで左中間へ飛び、フェンスへダイレクトに当たった。


麻生は俊足を飛ばし、一塁を蹴って二塁へ。


レフトを守る飯伏がボールを捕って二塁へ送球するが、麻生の足が早くセーフ。


ノーアウトランナー二塁となり、先制点のチャンスを迎えた。



「言うだけの事はあるな」


「バッティングセンスはあるみたいだな」


ナイスバッティングだが、皆一様に素直に褒めない。


傍若無人ぶりな態度がアダになったみたいだ。



続く7番の吉岡はシンカーに空振りの三振を喫し、続くバッターは8番南方。



期待のルーキーだが、待望の一発はまだ出ていない。


初ヒットは開幕5試合目にライト前への当たりで記録したが、まだ物足りない。



開幕前はポッチャリとした体型だったが、財前ヘッドコーチから、

「あと10kgは痩せろ!」

との命令により、食べ盛りの18歳ながらも食事制限と体脂肪を燃焼させるトレーニングの結果、94kgあった体重は81kgにまで減った。


身体が引き締まった事によりスイングも速くなり、キレも良くなった。


それまでは大きく構え、パワーに頼りがちなスイングだったが、身体のキレを生かしたスイングに変わり、構えもやや自然体でコンパクトになった。



「私わかります(^^)」


「今度は何だ!」


この言葉を聞くだけでイラつく。


「この打席、南方選手はホームラン打ちますち!」


断言した。


「ホントかよ?」


「んだな(^ ^)」


「お前、出身は四国だろ?何で東北訛りなんだよ?」


「私方言の先生言われます(^_^)」


「分かったから、それ以上喋るな」


相手にした分、疲労度がハンパない。




第1打席はストレートを見逃しの三振に倒れたが、この打席で結果を出したいところ。





林は一度二塁へ牽制球を投げ、セットポジションから初球を投げた。


アウトコースいっぱいのストレートが低めへ。


打っても凡打になるコースだが、南方はこれを読んでたかのように自然に対応した。


「ウソだろっ!」


林が思わず声を上げた。


アウトローギリギリに決まった143km/hのストレートをライトへ引っ張った。


快音と共に打球はグングン伸びる。



「コリャ、行ったろ!」


榊が打球の行方を追う。


ベンチで座っていた選手たちが一斉に立ち上がった。


ホームランバッター特有の美しい放物線を描いた弾道がライトスタンド中段に突き刺さった。


「入った!」


「ホームランだ!」


ベンチは蜂の巣をつついたかの様に大騒ぎだ。


「あのストレートを引っ張ってホームランじゃと?あのガキ、なんちゅう恐ろしいバッティングしよるんじゃ…」


二塁ランナー麻生ですら、南方のバッティングに驚いていた。


南方の初アーチでGlanzが2点先制。



「お前の言う通りになったとはな…
ひょっとして、お前預言者か?」


「私わかります(^^)」


「ホントに分かったのかよ?」


「んだな(^ ^)」


18歳のルーキーが放った一発で林は撃沈。

試合はGlanz打線が爆発し、8-1で勝利。


片山は今季初勝利、クロフォードは第3号、吉岡に第2号ホームランが出た。


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