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新戦力

オープナー2

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オープナーとは、本来リリーフ起用される投手が先発登板し、1,2回の短いイニングを投げたのち本来の先発投手をロングリリーフとして継投する起用法、及びこの際先発したリリーフ投手を指す。


「ほぇ~、そんな事やってんのかメジャーは」


櫻井から説明を受け、榊は驚いた様な声を上げる。


「何でこういうスタイルをとるのか。
それは、速球を投げることのできるリリーフ投手が、初回に当たる上位打順の強力な打者と対戦できる事だからです」


上位打線を抑えれば、次の投手は打力の落ちる下位打線から始めることができる。

また、打者は対戦を重ねるごとに球に慣れてくるので、本来の先発投手と上位打線の対戦を減らすことで被打率を低く抑える可能性が高まる。

「先発専門の投手にとって最も不得意であるのが立ち上がりなんです」


「確かに自分のその日の状態を探りながら投げるしな。
だから、先発投手の失点率が高いのは立ち上がりというのは納得出来るわ」


現役時代先発で投げていた榊もその事には同意する。


昨シーズンはネプチューンリーグ(520得点、531失点)、アポロリーグ(481得点、470失点)ともにイニング別では、2番目に大きく差をつけて1回が最多だった。


「早い話が、元々7回を担当する救援投手が、1回と交換すると考えれば、理論上はオープナーは機能するワケです」

初回と7回を変えるだけで、防御率は著しく下がっていく。

とは言え、あくまでも机上の空論だが、メジャーではルイビル・クラウンがオープナーの先駆けで、オープナーの採用後に平均防御率が減少し、防御率3.50はリーグ2位の数値であった。


勿論デメリットもある。

榊が言ったように、オープナーを使っていくとしても、評価する基準がなければ投手の酷使が進んでいき、選手生命を縮める可能性も高い。


その点を危惧した榊は高梨に査定の見直しをするよう要請した。


オープナーは今後日本でも採用される可能性が高いが、リリーフ陣のケアも同時に必要とされるだろう。


「やってみる価値はあると思うが、もしそれを採用するとなると、誰をオープナーにした方がいいと思う?」

問題はスカイウォーカーズにオープナーを任せる投手を誰にするか。


「パワーピッチャーの方がオープナーに向いてると思うんですけど、ウチだとアクーニャが適任じゃないでしょうか」


櫻井はアクーニャをオープナーに推す。


アクーニャか…左だし、160km/h近い球を投げるし…でも、アイツは変化球投げられないじゃん」


「変化球と言っても、スライダーやスプリットの様な球は投げられないけど、160近い速球と140前半のカットボールがあるじゃないですか」


アクーニャは開幕してから3試合に登板し、3イニングを投げて0勝0敗3ホールドで自責点は0


まだ始まったばかりなのでこの成績は参考にならないが、右バッターのインコースを突くクチージョと呼ばれる高速カットボールの被打率は、オープン戦を通じて0.179と圧倒的な数字を誇る。


それだけではなく、翔田との対戦成績は3打数ノーヒット、2三振と抑えている。


「…アイツは翔田キラーとして終盤に投げてくれるのが理想なんだけどなぁ」


「それなら、キングダム戦の時はリリーフに専念して、他のチームと対戦した時はオープナーにすればいいのでは?」


「初回を投げたり、終盤を投げたり、そんなに投げたら肩が壊れるんじゃないか?」


「オープナーと言っても、毎試合投げるワケじゃないんですよ?
あくまでも、ローテーションの谷間に投げるだけで、週に一度あるか無いかくらいですし」


櫻井としては、ローテーションの四番手までは固定して、五番手をオープナーで固めようという考えだ。


「ウーン…とにかく試しに一度やってみるか」


「明日からマーリンズとの三連戦がスタートしますし、ローテーション的に三戦目で投げる事になります。
そこで試してみましょう」



明日から本拠地武蔵野ボールパークで東北マーリンズとの連戦がスタートする。



マーリンズは99ersに3タテを食らって絶不調だが、この三連戦のどこかでエース天海をぶつけてくるだろう。


今後の事も考え、オープナーで結果を残せるかどうか。




そして、開幕からトップをひた走る99ersは、明日から本拠地名古屋99ドームで北陸レッズとの三連戦がスタート。

だが、この日99ersはナダウ・ヤマオカ監督が渡米の為、チームを離脱すると発表。

当分の間、矢澤ヘッドコーチが代行として采配を振る事となった。


シーズン中、しかも始まったばかりで監督がチームを離れるのは異例だ。

しかも息子でGMのひろしも同行するという事で、様々な憶測が飛び交う。


ヤマオカがシーズン中に離脱するのはこれが2回目。


静岡ピストルズの監督時代にも一度チームを離れた事がある。

その辺の詳細は【Baseball Love 主砲の一振】に記載してあるので割愛する。


今回ヤマオカが渡米する理由は、キングダムを去って現在3Aでコーチを務める吉川獲得の為だった。


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