The Baseball 主砲の一振り 続編1

ペナントレース

曲がった事が大嫌いな選手

宇田川紫苑。24才、背番号39

社会人野球の名門、帝都電気からドラフト4位でスカイウォーカーズに入団。


左腕から繰り出す148km／hのストレートとスライダー、シンカー、スプリットを武器に三振を獲る。


特筆すべきは、球をリリースしてからできるだけ長い距離、つまりどれだけホームベースの手前まで、どの球種も同じ軌道で投げられ、相手打者に球種を見極められずにバットを振らせることができる。

宇田川はこの【ピッチトンネル】と呼ばれるポイントで、ストレートと変化球の誤差が僅か6％と非常に優秀。


そんな能力を持つ投手が一度も一軍のマウンドに立ってないのは、曲がった事が大嫌いな性格故に、チームメイトや首脳陣との衝突も多い。


自分が正しいと思った事は主張し、相手が誰であろうと構わず非難する。

その性格が災いして、投手として一級品でありながら、未だ一軍登録されない。


榊は宇田川をどう起用するのか。


レッズとの三戦目は昨日に引き続きデーゲームで、午後2時に試合開始となった。


スカイウォーカーズの先発は開幕戦勝利を挙げた真咲。


レッズは投手最年長の41才、中野。


この日は初回からスカイウォーカーズ打線がエンジン全開。


トップの結城がフォアボールで出塁すると、2番筧は中野の甘く入ったツーシームを捕え、センターバックスクリーンへ第一号の先制ツーラン。

3番財前がライト前へ運ぶと、4番鬼束の打席で二塁へ盗塁。


鬼束はフォアボールで、ランナー一塁、二塁という場面で昨年本塁打王を輝いた毒島が、レフトスタンドへ第一号スリーランを放ち、一挙5点を叩き出す。


中野は一個もアウトをとれずに降板。


二番手は左の中尾がマウンドに上がる。


スカイウォーカーズは4回にも、財前のスリーベースヒットで二塁ランナー結城がホームを踏んで6点目。


更に6回には、唐澤の一号ソロで7点目を挙げる。


レッズは8回に浅倉のソロホームランで1点を返すが、1対7で完敗。

真咲は完投で2勝目をマーク。


スカイウォーカーズは2勝1敗とレッズに勝ち越し、再び本拠地の武蔵野ボールパークに戻って、昨年3位の東京キングダムと三連戦を行う。


開幕して6試合が経過して、全勝はナダウ・ヤマオカ率いる名古屋99ersがトップをひた走る。

99ersは、キングダムとの開幕三連戦をスイープすると、昨年2位のマーリンズと東北で三連戦をスタートさせた。


ここでも99ersは圧倒的な強さを見せつけ、3対5 1対6 0対4とマーリンズに三連勝。

開幕から六連勝と、99ersはスタートダッシュに成功した。



その99ersを追うスカイウォーカーズ、今夜の先発は一軍初登録の宇田川。


キングダムは開幕投手のアンダースロー井上。


試合前のミーティングで、榊は作戦を立てた。


「今日からキングダムとの三連戦がスタートするんだが…要注意なのは、翔田は勿論なんだが、その前を打つロドリゲス！
コイツが一番の要注意だ。
ロドリゲスは今、絶好調で手が付けられない状態だ。
そこでだ…今日はロドリゲスとの勝負はムリせず、代わりに次の翔田を徹底的に封じるんだ。
保坂、今日は宇田川が初登板だから、リードの方頼んだぞ！」


「ハイッ」


キングダムは99ersとの開幕三連戦で三連敗を喫したが、続くレボリューションズとの三連戦を2勝1敗で勝ち越した。


特に翔田の前を打つ3番のロドリゲスは、レボリューションズとの初戦で、4打席連続本塁打と日本タイ記録を打ち立て、手が付けられない状態だ。


ロドリゲスとは対照的に、4番の翔田は開幕三連戦ノーヒットに抑えられ、一昨日の試合でようやく初安打を放ったが、13打数1安打と絶不調。


榊はロドリゲスとの勝負を避け、翔田との勝負をするよう、保坂に命じる。


キングダムのスタメンは

1セカンド 湯原
2キャッチャー 丸藤
3ライト ロドリゲス
4センター  翔田
5サード ウィリアムズ
6ファースト 坂上
7レフト 篠田
8ショート  倉澤
9ピッチャー 井上


去年までレフトを守ってた【打てない走れない守れない】の逆三拍子のスナイダーは解雇され、3Aで3割を打っていたウィリアムズを獲得。

長打こそ少ないが、逆方向へのバッティングを得意とし、三塁の守備を軽快にこなす。


加えて、キャッチャーの丸藤が2番という攻撃型布陣でペナント奪回を目指す。


スカイウォーカーズのスタメンは

1ファースト 結城
2ショート 筧
3センター 財前
4セカンド 鬼束
5サード 毒島
6ライト 唐澤
7レフト 来栖
8ピッチャー 宇田川
9キャッチャー 保坂


スーパールーキー森高をベンチスタートに回し、レフトにはスーパーサブの来栖がスタメンに入った。


今日はナイトゲームで、武蔵野ボールパークには42000人もの大観衆で賑わう。