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大詰め

口論

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財前貴博 31才。

カリフォルニア・ロケッツ所属の外野手 ポジションはセンター。


右投げ両打ち 背番号10

マイナーを経て、24才でインターナショナルリーグ ジャクソン・ブルースでメジャーデビューを果たす。


翌年、若手選手数名とのトレードでカリフォルニア・ロケッツに移籍。


走攻守三拍子揃った万能選手で、5ツールプレイヤーと称される。


ロケッツでは3番を打つ。


メジャー1年目から3割 20本 100打点 30盗塁をクリア。

15本の三塁打はリーグトップ。


オールスター出場、シルバースラッガー賞ならびにゴールドグラブ賞を獲得。


3年目には打率336 ホームラン27 打点103 盗塁37をマーク。

三塁打18、出塁率437、221安打はリーグトップ。


一昨年は打率347 ホームラン31 打点116 盗塁32の成績で首位打者、トリプルスリーを達成。


今シーズンは打率トップの338 ホームラン28 打点106 盗塁26 

安打数198と三塁打17は両リーグ通じてトップ。


打率も然ることながら、毎年20本近い三塁打を放ち、【ミスタートリプル】の異名を持つ。


サムライショットと呼ばれるライナー性の当たりから、俊足を飛ばして一気に三塁まで駆け上がる姿は疾風の如く。


今年は地区優勝の立役者として、MVP候補に挙げられる。


日本球界と決別したはずだが、契約が切れる今年でロケッツを離れ、日本に復帰するつもりらしい。


その為にはディビジョンシリーズを勝ち抜き、ワールドシリーズに進出して世界一になる事…


もし財前が日本球界に復帰するとなれば、他球団との争奪戦になるのは必至だ。



このコメントを受けてGMの高梨は財前獲得に乗り出し、調査を始めた。



しかし、財前という選手は大変気難しい性格で知られる。

ましてや、自分を無下に扱ったスカイウォーカーズに良い印象は無いはず。


スカイウォーカーズの外野手はレフトに中山、センターは唐澤、ライトはラファエルと鉄壁の布陣を誇る。


だがラファエルは今年限りの契約で、来年はメジャーに復帰する。


現在、左足首骨折で戦列を離れている梁屋が来シーズン復帰する予定だが、不安が残る。


ペナントレースという長丁場を戦い抜くには、全試合フル出場出来る外野手がもう一人必要になってくる。


そうなると、今がピークで脂がのってる財前が相応しいと高梨は判断した。





翌日、高梨は財前獲得の旨を榊に伝えた。



「財前を獲るって…確かにウチにいたらしいけど、そこまでして獲得するような逸材なのか?
オレとしては、ワタルをライトに使った方がいいと思うんだけどなぁ」


榊は財前獲得に乗り気ではない。


財前を獲れば、梁屋のポジションは無くなったも同然。


年齢も梁屋の方が若いし、将来性もある。

来年32才になる財前を無理してまで獲得する意味があるのか?と。


「榊さんの仰る事は分かります。ですが、梁屋のケガが治ったとしても、果たして今まで通りに動けるのか?
私が懸念してるのはその部分なんです」


仮に骨折箇所が治っても、140試合フルに出場出来るかどうか。


「だからさぁ、そこは来栖とのツープラトンで起用したらいいじゃん」


「そうしたいのは山々ですが、来栖は内野も守れるしユーティリティープレイヤーとして、ベンチに置きたい存在でもあるんです」



「アイツはスーパーサブとして重宝するけど、アイツ以外のヤツをユーティリティープレイヤーとして使えばいいだけの話だろ?」


「では、誰が出来ると言うのですか?」


毅然とした口調で問いかけた。


「誰って…そりゃ、誰が相応しいのか今は分からないけど、試しに色んなヤツを使ってみて、その中で相応しいヤツを決めればいいだけの事じゃん」


高梨は話にならない…と首を振った。


「そんな曖昧な決め方で来栖の代わりが務まるとお思いですか?
いいですか、来栖はここぞという時に使う秘密兵器みたいな存在です。
他の選手が彼みたいに、上手くこなせると思いますか?ムリでしょう」


「そんなもん、やってみなきゃ分からないだろうが!」


「はぁ~…榊さん、ペナントを勝ち抜く為にはあらゆる事を想定しておかなきゃならないんです。
今いる控えの選手で補えるとでも言うのですか?」


段々とヒートアップしてきた…


「じゃあ何か?他の連中は役に立たないとでも言うのかっ!」


「そうは言ってません!ただ、適材適所でどの選手が適してるかを考えたら、彼らはそこに適して無いという事です!」

お互いに譲らない口論は、気がつくと3時間を経過した…
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