UWP(Under World Prowrestling)

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神宮寺はまるで二人が来るのを分かっていたかのように、上半身裸で待ち構えていた。


「よぉ、来ると思ってたぜ」


「こんにちは、神宮寺さん。
実は、今道クンに必殺技のアドバイスを送ってくれないでしょうか?」


「あ、あの…オレ、これといった必殺技も無いし…あったらいいなぁと思いまして」


今道は頭を下げた。



「バカヤロー!必殺技なんてのは、テメーで考えて編み出すもんだ!
プロレスってのは、技に制限が無いんだ。
自由な発想で誰もが思いつかないような技をやればいいんだ」


そうは言っても、何から手を付ければいいのやら。


「自由な発想と言われても…そもそも、オレはプロレス技なんて殆ど知らないし」


「知らなきゃ編み出す事は出来ねえのか?そんな事はないだろう。
自分の能力に見合った技を考えりゃいいだけだ、なぁ」


「自分の能力に見合った技…ですか?」


神宮寺の言葉は抽象的だ。



「まぁいい…こんなとこで話すより、リングでスパーをすれば何か分かるだろう。
ボーズ、さっさと支度しろ!」


神宮寺はリングに上がった。


「は、はぁ…」


こうなったら、何を言ってもムダだ。


今道も上半身裸になってリングに上がった。





神宮寺とのスパーは一時間程続いた。


互いにバックの取り合い、関節の取り合いを永遠に続け、どちらも一本も取られず終了した。



「どうだ、ボーズ!スパーをしてりゃ何か浮かんでくるだろう?」


神宮寺の上半身は滝のように汗が流れている。


「どうって…関節の取り合いだけだし、これといったものは…」


今道には今一つピンと来ない。



「ボーズ。オマエ、スープレックスは得意な方か?」


「スープレックスって、投げ技ですか?」


今道の相手を引き込む力と柔軟な身体と瞬発力。


それらを生かしたスープレックスで相手をノックアウトする。


「オレも現役時代はスープレックスを得意としてた。
パワーだけじゃ相手を倒す事は出来ない。
タイミングと瞬発力、何よりキレイに反る柔軟性が必要になる。

ボーズ、オメーはその能力が備わってる。
どんな形でもいい、スープレックスをマスターしろ」


「えぇ~っと…スープレックスが今のスパーとどんな関係があるんですか?」


「スパーをやるのに、理由なんて無ぇ!
ただ、スパーをやりたくなったからやっただけだ!」


単にヒマなだけだった。



「何すか、それ…」


神宮寺の思いつきには振り回されるばかりだ。



その後、神宮寺がスープレックスのポイントを伝授した。



今道はダミー人形を使って、何度もスープレックスの練習を行う。


投げるタイミング、角度、速さを徹底的に教わり、コツを掴んだ。




「神宮寺さん、ありがとうございます。
このアドバイスはきっと次の試合に生かされるでしょう」


東郷は深々と頭を下げた。


「東郷さん、アンタが頭を下げてどうする。
オレはアンタの頼みだから引き受けたんだぜ」


「恐れ入ります」


この二人、ホントに闘ったのだろうか。


今道はそんな事を考えていた。



「今道クン、あなたからも礼を言いなさい」


東郷に促され、頭を下げた。



「あ、ありがとうございます。次の試合までにスープレックスをマスターしますので」


「ほぉ…じゃあ、次の試合、オメーが考案したスープレックスでノックアウトしたら、褒美をくれてやろう」


褒美とは、デビュー戦で貰ったボーナスだ。



「マ、マジっすか?オレ、絶対にスープレックスマスターしますんで、ボーナス期待してます!」


急に目の色が変わった。



「ガッハハハハハハハ!文字通り、現金なヤツだな!
だが、それがいい!
オレもオメーのスープレックスが見たいからな」


「あざっす!」


何となくだが、スープレックスの全容がボンヤリと浮かんできたような気がした。

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