UWP(Under World Prowrestling)

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ランクイン

東郷の素性

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試合で得たファイトマネーは全て家族に充てた。

その甲斐あって、父親の借金は無事完済。

母親は昼夜仕事をする必要も無くなり、弟や妹の学費の心配も解消した。



住んでいたアパートは狭く、築年数もかなり経過していたので、広々としたマンションに引越し、不自由の無い生活を送るようになった。



当面の生活には困らないが、もっともっと楽な生活をさせる為にはこれからも勝ち続けなければならない。


次の目標は、都心の一等地に豪邸をプレゼントする事。


今道の支えは家族だ。


その為なら、どんな闘いでも受けて立つ。


家族の笑顔が一番の喜びと言っても過言では無い。





次回からランキング戦となる。


ランキング戦に勝つと、ファイトマネーは更に跳ね上がり、一千万単位の金額が支給される。


UWPの観客は全て大富豪で、賭ける金額も桁が違う。


ちなみに、デビュー三戦目までの選手に賭ける金額は最低ラインで100万。


ランキング選手は300万、チャンピオンに賭ける金額は1000万が最低ラインとなっている。


オッズによってファイトマネーの額が変動するが、チャンピオンになれば少なくとも一億は確実に貰える。



夢のようなファイトマネーだが、負ければ一円も貰えないのがUWPだ。


チャンピオンでさえも、負けたらファイトマネーはゼロで、再度一からのスタートとなる。


UWPは負け数が二回を越えると自動的に除外される仕組みになっている。


だからこそ、選手たちは血眼になって闘い、勝利を掴む。


今道も例外では無い。



二度も負ければ、神宮寺及び東郷から戦力外を通告され、UWPから追い出される。


地下プロレスの世界は弱肉強食だ。


その為、勝者は莫大なファイトマネーを手にし、敗者は消え去る。


オール・オア・ナッシングの精神だ。





「今道クン、次の試合からランキング戦になります。
チャンピオンに挑戦するには、ランキング上位になるのが条件です。
来月あなたが闘う相手はランキング10位の藤原 航大(ふじわらこうだい)選手です」


「藤原って選手は、プロレスラーなんですか?」


自分と家族の事以外には興味を示さない。



「UWP所属選手がランキングの選手を知らないとは…」


東郷は頭を抱える。



「いやぁ~、あんまり他人に興味が無いもんで」


「少しは興味を持ちなさい!次に闘う選手ですよ!」


一日のうち、必ず一度は説教をする場面がある。


無頓着過ぎるというか、天然なのか。


一言で言えば、今道には緊張感がまるで無い。


「ランキングの選手と言ったって…要は勝たなきゃならないわけでしょ?」


「勿論です」


「じゃあ、相手が誰であろうと、勝つ為に練習するしかないでしょ」


「…この大らかさは、大物の証なのか、それとも…まぁ、いいでしょ。
その通りです。
相手が誰であろうが、とにかく勝つのみ。
勝たなきゃ、ファイトマネーは手に入りませんからね」



今道の次の目標は、都心の一等地に豪邸を建て、家族にプレゼントする事だ。


「…そうだ。オレにはやらなきゃならない事があるんすよ。
勝ちまくって、いっぱい金を稼いで、家族に家を建ててやるのが夢なんすよ」


家族のことになると、一転して笑顔で饒舌になる。


「家族を思いやる気持ちは大切なのは分かります。
ただ…あなたが都内に豪邸を建てたからと言って、それをお母様や弟さん、妹さんが果たして喜ぶのでしょうか?」



「どういう事です?」


今道としては、良かれと思ってやっているが、家族は本心でそれを喜んでいるのか。


「まぁ、あなたのモチベーションは家族だという事は分かりました。
その為にも、負ける訳にはいかないのです」


「分かってます…ところで、コーチには家族はいないのですか?」


東郷は独身だ。


「私は傭兵だった男ですよ。
家族なんて、いるわけないでしょう」


東郷の素性は不明だ。


以前、神宮寺に東郷の素顔を尋ねた事があったが、神宮寺は


「オレもあの人の事はよく知らない」

と言うだけで、詳しい事は分からないらしい。



本当の名前、本当の年齢、出身地や経歴等、一切が不明である。


「私の事はいいでしょう。それよりも、今は目の前の相手に勝つだけです」


そう言われると、益々知りたくなった。
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