UWP(Under World Prowrestling)

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修行時代

死合

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「試合は半月後、場所は我々が用意する」


刺激を求めた金持ちが用意した場所は、郊外にある広大な空き地にある廃墟と化した病院。


この中で半月後に神宮寺と東郷が試合を行う。



神宮寺はブランクを取り戻すべく、過酷なトレーニングを始めた。


相手は傭兵だ。


勝てる見込みは殆どないに等しい。



それでも神宮寺は闘う。


勝ち負けよりも、強い相手と闘う事に喜びを感じていた。





そして約束の日。




国道から少し逸れた通りに行くと、林に囲まれ鬱蒼とした中を抜けると、広大な空き地が見えてきた。


「こちらです」


迎えに来た運転手が車を停めると、立ち入り禁止の文字が書かれたバリケードを退かす。


車は空き地内に入っていった。



「この廃墟の中でどうやって試合するんだ?まさか、リングがあるんじゃないだろうな?」


「そのまさかです」


運転手は問いに答えた。


「ここなら、不測の事態が起こっても上手く処理出来るというわけか」


不測の事態とは、神宮寺が命を落とす事を指す。


「私には分かり兼ねますが」


運転手はそう答えた。



廃墟の前で車を停めると、運転手は腐食した大きな扉を開けた。


ギギギっ…と軋む音がして、中から眩い光が神宮寺を包む。


「何だ、この照明は!」


廃墟の中は、眩しいほどのスポットライト。


中央にはリングが置かれ、1000人程収容できる客席に囲まれている。



「よく来たな、神宮寺くん」


リング上には数名の富裕層と呼ばれる資産家や起業家が神宮寺を出迎える。



神宮寺は着ていたジャージを脱ぐと、現役時代トレードマークだった、黒のショートタイツにリングシューズ。


入場シーンの如く、エプロンで一旦大きく深呼吸してからリングイン。


「紹介しよう、彼が世界を股に掛ける傭兵、東郷仁だ」


「…何処にいる?」


それらしき人物は見当たらない。


すると、小柄で眼鏡をかけた中年男性が神宮寺を見てお辞儀をした。


「この男が東郷仁?」


信じられない…


どう見ても、傭兵には見えない。


外見はどこにでも居る中年のサラリーマンと見間違える程だ。


七三頭で気の弱そうな顔立ち。


身体付きは貧弱そのものだ。


「初めまして、東郷仁です。今日はよろしくお願いします」


ジャージ姿の東郷は右手を差し出す。


しかし、神宮寺は握手に応じない。


「何の冗談だ、これは!」


神宮寺が声を荒らげる。


バカにするのも大概にしろ、と言わんばかりに。


「冗談では無い、彼が最前線を潜り抜けてきた東郷仁だ」


「どう見ても、ひ弱な中年サラリーマンじゃないか!」


怒るのも無理は無い。


「神宮寺くん、君は外見だけで人を判断するのか?」


資産家が呆れた顔をする。


「この男が傭兵だ?ふざけるのもいい加減にしろ!」


バカバカしい、そう思いリングを降りようとした。



「神宮寺くん、リングを降りたらスポンサーの話は無かった事にしてもらうよ」


「…っ!」


金持ちの道楽に付き合わされるのか…神宮寺は深いため息をついた。



「では、これより神宮寺直人対東郷仁の試合を行う!ルールは凶器攻撃、金的、噛みつき以外は何でもOK!
決着は、ギブアップまたはKOのみ!」


肝心のレフェリーが居ない。


「レフェリーの代わりに、我々が立会い人として試合を見届けよう」


そう言うと、資産家達はリングを降り、最前列の客席に座った。


186cm 103kgの神宮寺に対し、165cm 58kgの東郷。


体格差は歴然。


誰が見ても神宮寺が圧倒的有利だ。


東郷が眼鏡を外した。


「…っ、」


一瞬、背筋が凍った。


(何だ、あの目は)


只者では無い、全てを見透かしたかのような眼差し。


(これは…ホンモノかもしれない)


神宮寺がファイティングポーズをとった。


そして試合が始まった。
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