UWP(Under World Prowrestling)

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修行時代

神宮寺との出会い

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練習に身が入らない。

東郷の指示によって練習を繰り返す毎日。


今道はこの数ヶ月、東郷以外の人と会話をした記憶が無い。


(つまんない…)


徐々にフラストレーションが溜まるようになってきた。


「どうしました、今道クン。連取に身が入らないみたいですが」


「…」


「成程…毎日私と練習するのがイヤになってきた…そうですね?」


図星だった。



「イヤ、その…」


どう答えていいか分からない。


「まぁ、無理もないでしょう。
ここに来てから、私以外の人と触れ合う事も無い。
しかも、この道場から殆ど出ることもない、言わば引きこもりみたいなもんですからね」


「実は…」


東郷には全てお見通しだ。


隠してもしょうがない。


「何だか…最近虚しいなって思うようになって」


素直な気持ちを吐露する。


「今道クン、あなたの気持ちも分かります。しかし、あなたはプロレスラーになる為にこの道場に来たのではないですか?」


「確かにそうですが、このままじゃ、気がおかしくなりそうで」


「メンタル面をもう少し鍛えておくべきでしたね」


メンタルの部分だけはいくら他人がアドバイスしても、本人が現状を打破しない限りは改善しない。


さすがの東郷でもこればっかりはお手上げだ。


「…いいでしょう。今日は練習を取り止めて外出しましょう」


「エッ、外出?」


思いもよらない展開となった。


「えぇ、少しリフレッシュする為に、外の空気を吸うのもいいでしょう」


そう言うと東郷は電話をかけた。


「モシモシ、私です。
お疲れ様です…ちょっと出かけるので、車を出して欲しいのですが…
それじゃ、お願いします」


どうやら車で出かけるつもりだ。


「さぁ、出かけますよ!早く支度しなさい」


「ハ、ハイ」


急いで着替えた。


道場の前で待っていると、黒のワンボックスカーが迎えに来た。


「お疲れ様です。あの場所までお願いします」


「かしこまりました」


運転手は眼鏡をかけた30代ぐらいの男性だ。


一体、スタッフとは何人ぐらいいるのだろうか。


東郷と共に後部座席に乗ると、車は都心方面に向かった。


「コーチ。あの場所とは何処ですか?」


「フフッ、行けばわかりますよ」


何処へ向かおうとしてるのか。



首都高に乗って1時間弱。


高層ビルやタワーマンションが建ち並ぶ都心の一等地で高速を降りた。



「もうすぐで着きますよ」


「…ん、ハイ」


車に揺られて心地よくなったのか、思わず寝てしまった。


大通りから少し外れた通りで車は停まった。


「着きましたよ」


シートベルトを外してドアを開けた。


目の前はビルで、1階はファストフードの店舗だ。


「このビルですか?」


「えぇ、中に入りますよ」


エントランスに入り、エレベーターに乗った。


どうやら、このビルは9階建ての雑居ビルらしい。


各階にはキャバクラやガールズバー、焼肉店や居酒屋等のテナントが入ってるようだ。


最上階のボタンを押し、あっという間に9階へ。


ドアが開くと、コンクリート打ちっぱなしの空間で、どうやら空きテナントになっているみたいだ。


「ここからは階段で行きますよ」


横の非常口用の扉を開け、共用階段を上った。


「屋上に行くんですか?」


「そうです」


屋上に入る扉は施錠がしてある。


東郷はポケットから鍵を取り出し、扉を開けた。


中央にログハウスみたいな建物の周りを、各店舗の室外機やキュービクル式高圧受電設備、梯子を登ると高架水槽が設置してある。



誰か住んでるみたいだ。


東郷が扉をノックする。



ガチャっと扉が開くと、中からイカつい男が顔を出した。


「おっ、東郷さん。珍しいな、こんな所に来るとは」


男は東郷を見ると屈託のない笑顔で出迎えた。


「申し訳ありません、アポも取らずに伺ってしまって」


「いいって、いいって!東郷さんならいつでも歓迎するぜ!」


男が手招きをする。


「では、お邪魔します」


「ん、このボウヤは?」


今道と目が合った。


「ど、どうも」


恐る恐る会釈する。


「例の練習生ですよ」


「おぉ~っ、お前があの練習生か!」


男は満面の笑みを浮かべた。


「とにかく、中に入んな」


「失礼します」


男に促され、中に入った。



建物の中はリビングと洋室、ユニットバスという間取りだ。


男はリビングのソファーに腰掛けた。


「さぁ、突っ立ってないで座れ」


男の来ているTシャツがはち切れんばかりの分厚い胸板に丸太ん棒の様な太い腕。


上半身だけじゃない。


スウェットを履いた下半身はドッシリとしていて、外見からしてタダモノではない人物だ。



「今道クン、この方がUWPの最高責任者でもある、神宮寺直人さんです」


この男が神宮寺…


もの凄いオーラだ。



「は、初めまして…練習生の今道陽斗です」


「ハッハッハ、そんなに緊張すんなよ!オレが神宮寺だ、よろしくな」


握手をしてきた。


「ハ、ハイ。よろしくお願いします」


握手した瞬間、右手に激痛が走った。


「い、痛っ」


「オット、思わず力を入れちまったぜ!大丈夫か?」


「は、はァ、何とか」


見たところ、東郷と同じ50代前半ぐらいだが、圧倒的な存在感を発揮している。


東郷が柔ならば、神宮寺は剛という感じか。



「練習はちゃんとやってんのか、ん?」


そう言うと、神宮寺は今道の身体を触りだした。


「え、えっと…あの」


神宮寺は上半身や大腿部、ふくらはぎを揉みながら触る。


「なかなかの筋肉だな。しかも、柔軟性に溢れている。おまけに背も高い」


「どうですか、彼は?」


東郷が訊ねる。


「申し分ないよ!コイツは掘り出し物だぜ!」


些か興奮気味に捲し立てる。







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