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UWPとは
3年間無敗のチャンピオン
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話しを再び戻す。
会場は割れんばかりの歓声に包まれている。
防衛戦は今道が変形のインディアンデスロックで勝ちを収めた。
序盤、挑戦者の阪田はパワー全開のラッシングファイトで今道を追い込む。
剛腕とも言える左右のパンチでコーナーに追い込み、抱えあげて垂直落下の水車落としでダメージを与える。
今道はダメージを最小限に抑えるよう、上手く受け身をとったが、阪田はチャンスとばかりに逆方エビ固めで締め上げる。
ただの逆方エビではない、膝を抱え込むようにし、今道の身体を真っ二つにへし折らんばかりに反り上げる。
通常の試合ではここまで相手の身体を反らせる事は無い。
ギリギリのところで加減してケガをさせないようにするのがプロレスラーとしての技量が試される。
だが、この試合はプロレスの範疇を越えた闘いだ。
取り決めが無い故に、試合結果は誰にも判らない。
(プロレスラーがプロレススタイルで真剣勝負を行う)
それがUWPスタイルなのだ。
今道の身体が極限まで反っている。
これ以上力を加えたら股関節、腰骨、背骨が破壊する。
だが今道はギブアップをしない。
「ギブアップ?」
「ノ、NO!」
阪田はフリーのレスラーで、メジャー からインディの団体まで幅広く参戦している。
試合の殆どがジョバー(負け役)を受け持つが、技の受けっぷりは関係者からの評価が高い。
阪田はジョバー役に関しては、仕事だからと割り切っている。
しかし、本来の阪田はガチの闘いでは無類の強さを発揮する。
試合では危険すぎて出せない技も多く、その恵まれた体格を持て余しているようにも見える。
そんな中、UWPの存在を関係者から聞くことが出来た。
「地下プロレスだと?ホントにそんなモノがあるのか?」
関係者は言う。
「詳しくは知らないが、毎月郊外で地下プロレスが開催されるらしい。
アンタなら、地下プロレスでその力を解放してみたらどうだ?」
地下プロレスの存在はプロレス関係者からなら誰もが知っている。
だが、日本にはメジャー、インディ問わず多数の団体が乱立しているが、レスラー仲間及び、関係者は揃って口を閉ざす。
表舞台では、地下プロレスの話はタブーとされている。
もし、地下プロレスに出場した場合、マット界から永久追放となる。
それはプロレス団体に限らず、総合格闘技や他の格闘技大会にも出場は出来ない。
それを覚悟の上で、阪田はUWPのリングに上がった。
この試合に勝てば、表舞台のリングでは到底手に入れる事が不可能な、巨額のファイトマネーが転がり込む。
阪田は文字通り全てを懸けて闘う。
今道は鍛え上げられた強靭な背筋と腕力でグイッと身体を持ち上げる。
技の掛かりが少し緩んだ。
「クハァ…」
そのまま手押し車の要領でサードロープを掴んだ。
「ブレイクっ!」
レフェリーが割って入った。
「チッ、あと少しだったのに」
阪田は技を解くと、追い討ちをかけるようにストンピングを連打する。
背中を容赦なく踏みつける。
「いい加減ギブアップしろっ!オマエにはもう、勝てる見込みは無い」
試合開始から10分が経過した。
今道は防戦一方だ。
「まだまだ…こっからがオレの反撃だ」
身体を反転させ、足首を取ると寝たままの状態で素早く身体ごと横に捻った。
「ギャァァ…」
グラウンド状態のドラゴンスクリューで阪田の右足首を破壊した。
形勢逆転となった。
「さぁ、立てよチャレンジャー。チャンピオンの攻撃を受けてみろよ」
えげつない攻めを受けた今道だが、何事も無かったかのように立ち上がる。
髪の毛を掴み、阪田を無理矢理立たせる。
左脇の下に頭を入れ、右手でタイツを掴んだ。
「どりゃあぁぁ!」
ブレーンバスターで持ち上げた。
阪田の身体が空中で垂直のまま静止したまま、10秒 20秒と経過する。
場内が騒めく。
「スゲェ…」
「まだ持ち上げるとは」
「もう、30秒が経過するぞ」
しかし、今道はまだ持ち上げたままだ。
阪田は183cm 127kg
今道よりも10kg重い。
その巨体を垂直に上げたまま、30秒が経過した。
「オイオイ…いつまで持ち上げるんだ」
「あれは危険だ」
身体中の血が頭に流れていく。
三半規管がおかしくなっていく。
40秒、50秒…
まだキープしたままだ。
「このまま叩きつけたら死ぬぞ」
「いいぞ、そのままぶっ殺せ!」
「フツーのプロレスじゃないからな、この団体は」
既存のプロレスに飽きたセレブ達が刺激を求めてUWPに集まる。
彼らが望むのは、屈強なレスラーが壊れていく様を楽しむ事。
あまりにも残酷過ぎる。
「どりゃァ」
ここでようやく今道が尻もちを付くような格好で真っ逆さまの阪田をマットに叩きつけた。
ドダーン!という衝撃音が響く。
阪田はピクリとも動かない。
「死んだ?」
「あぁ~あ、これで終わりか」
誰もが阪田が絶命したと思った。
「まだだぜ、チャレンジャー…このくらいの技で倒れてるもらっちゃ困るなぁ」
今道は再度阪田を起こす。
「…」
意識はあるものの、滞空時間の長いブレーンバスターを食らったせいで立つ事が出来ない。
「レフェリー、ダウンだ」
起こすのを止め、カウントを要請した。
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ…」
レフェリーがダウンカウントを数える。
10カウントまでに起きなきゃ今道のKO勝ちとなる。
「ま、負ける訳には…いかねぇ」
気力を振り絞り、ロープを掴みながらも阪田は立ち上がる。
カウント8で立ち上がったが、反撃する余力は残ってない。
「これで終わりだ」
今道は組み付くと、左腕を取りハンマーロックに捕えながら、大外刈りで叩きつけた。
肩が極まった状態でマットに打ちつけられ、衝撃で関節が外れた。
「ぐぁぁぁぁぁ!」
足を取り、インディアンデスロックの体勢に入った。
ドラゴンスクリューで負傷した右足首が再び悲鳴をあげる。
すると今度は阪田の首を抱え、フロントフェイスロックで締め上げる。
インディアンデスロックとフロントフェイスロックの複合技だ。
これでは脱出不可能だ。
危険を察知したレフェリーがゴングを要請。
「またチャンピオンの勝ちか!」
「クソッタレ、3億がパーだ!」
「ワハハハハハ!今日も稼がせてもらったな!」
今道に賭けた観客は喜び、阪田に賭けた観客は肩を落とす。
レフェリーが今道の手を挙げた。
16分27秒、レフェリーストップで今道の勝利。
これで39回の防衛に成功した。
3年前、王座に君臨してから、無敗のまま防衛回数を重ねる。
勝った今道は涼し気な表情でチャンピオンベルトを肩に掛けた。
次のチャレンジャーは誰か。
それはUWPの主催者神宮寺が決める事になっている。
会場は割れんばかりの歓声に包まれている。
防衛戦は今道が変形のインディアンデスロックで勝ちを収めた。
序盤、挑戦者の阪田はパワー全開のラッシングファイトで今道を追い込む。
剛腕とも言える左右のパンチでコーナーに追い込み、抱えあげて垂直落下の水車落としでダメージを与える。
今道はダメージを最小限に抑えるよう、上手く受け身をとったが、阪田はチャンスとばかりに逆方エビ固めで締め上げる。
ただの逆方エビではない、膝を抱え込むようにし、今道の身体を真っ二つにへし折らんばかりに反り上げる。
通常の試合ではここまで相手の身体を反らせる事は無い。
ギリギリのところで加減してケガをさせないようにするのがプロレスラーとしての技量が試される。
だが、この試合はプロレスの範疇を越えた闘いだ。
取り決めが無い故に、試合結果は誰にも判らない。
(プロレスラーがプロレススタイルで真剣勝負を行う)
それがUWPスタイルなのだ。
今道の身体が極限まで反っている。
これ以上力を加えたら股関節、腰骨、背骨が破壊する。
だが今道はギブアップをしない。
「ギブアップ?」
「ノ、NO!」
阪田はフリーのレスラーで、メジャー からインディの団体まで幅広く参戦している。
試合の殆どがジョバー(負け役)を受け持つが、技の受けっぷりは関係者からの評価が高い。
阪田はジョバー役に関しては、仕事だからと割り切っている。
しかし、本来の阪田はガチの闘いでは無類の強さを発揮する。
試合では危険すぎて出せない技も多く、その恵まれた体格を持て余しているようにも見える。
そんな中、UWPの存在を関係者から聞くことが出来た。
「地下プロレスだと?ホントにそんなモノがあるのか?」
関係者は言う。
「詳しくは知らないが、毎月郊外で地下プロレスが開催されるらしい。
アンタなら、地下プロレスでその力を解放してみたらどうだ?」
地下プロレスの存在はプロレス関係者からなら誰もが知っている。
だが、日本にはメジャー、インディ問わず多数の団体が乱立しているが、レスラー仲間及び、関係者は揃って口を閉ざす。
表舞台では、地下プロレスの話はタブーとされている。
もし、地下プロレスに出場した場合、マット界から永久追放となる。
それはプロレス団体に限らず、総合格闘技や他の格闘技大会にも出場は出来ない。
それを覚悟の上で、阪田はUWPのリングに上がった。
この試合に勝てば、表舞台のリングでは到底手に入れる事が不可能な、巨額のファイトマネーが転がり込む。
阪田は文字通り全てを懸けて闘う。
今道は鍛え上げられた強靭な背筋と腕力でグイッと身体を持ち上げる。
技の掛かりが少し緩んだ。
「クハァ…」
そのまま手押し車の要領でサードロープを掴んだ。
「ブレイクっ!」
レフェリーが割って入った。
「チッ、あと少しだったのに」
阪田は技を解くと、追い討ちをかけるようにストンピングを連打する。
背中を容赦なく踏みつける。
「いい加減ギブアップしろっ!オマエにはもう、勝てる見込みは無い」
試合開始から10分が経過した。
今道は防戦一方だ。
「まだまだ…こっからがオレの反撃だ」
身体を反転させ、足首を取ると寝たままの状態で素早く身体ごと横に捻った。
「ギャァァ…」
グラウンド状態のドラゴンスクリューで阪田の右足首を破壊した。
形勢逆転となった。
「さぁ、立てよチャレンジャー。チャンピオンの攻撃を受けてみろよ」
えげつない攻めを受けた今道だが、何事も無かったかのように立ち上がる。
髪の毛を掴み、阪田を無理矢理立たせる。
左脇の下に頭を入れ、右手でタイツを掴んだ。
「どりゃあぁぁ!」
ブレーンバスターで持ち上げた。
阪田の身体が空中で垂直のまま静止したまま、10秒 20秒と経過する。
場内が騒めく。
「スゲェ…」
「まだ持ち上げるとは」
「もう、30秒が経過するぞ」
しかし、今道はまだ持ち上げたままだ。
阪田は183cm 127kg
今道よりも10kg重い。
その巨体を垂直に上げたまま、30秒が経過した。
「オイオイ…いつまで持ち上げるんだ」
「あれは危険だ」
身体中の血が頭に流れていく。
三半規管がおかしくなっていく。
40秒、50秒…
まだキープしたままだ。
「このまま叩きつけたら死ぬぞ」
「いいぞ、そのままぶっ殺せ!」
「フツーのプロレスじゃないからな、この団体は」
既存のプロレスに飽きたセレブ達が刺激を求めてUWPに集まる。
彼らが望むのは、屈強なレスラーが壊れていく様を楽しむ事。
あまりにも残酷過ぎる。
「どりゃァ」
ここでようやく今道が尻もちを付くような格好で真っ逆さまの阪田をマットに叩きつけた。
ドダーン!という衝撃音が響く。
阪田はピクリとも動かない。
「死んだ?」
「あぁ~あ、これで終わりか」
誰もが阪田が絶命したと思った。
「まだだぜ、チャレンジャー…このくらいの技で倒れてるもらっちゃ困るなぁ」
今道は再度阪田を起こす。
「…」
意識はあるものの、滞空時間の長いブレーンバスターを食らったせいで立つ事が出来ない。
「レフェリー、ダウンだ」
起こすのを止め、カウントを要請した。
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ…」
レフェリーがダウンカウントを数える。
10カウントまでに起きなきゃ今道のKO勝ちとなる。
「ま、負ける訳には…いかねぇ」
気力を振り絞り、ロープを掴みながらも阪田は立ち上がる。
カウント8で立ち上がったが、反撃する余力は残ってない。
「これで終わりだ」
今道は組み付くと、左腕を取りハンマーロックに捕えながら、大外刈りで叩きつけた。
肩が極まった状態でマットに打ちつけられ、衝撃で関節が外れた。
「ぐぁぁぁぁぁ!」
足を取り、インディアンデスロックの体勢に入った。
ドラゴンスクリューで負傷した右足首が再び悲鳴をあげる。
すると今度は阪田の首を抱え、フロントフェイスロックで締め上げる。
インディアンデスロックとフロントフェイスロックの複合技だ。
これでは脱出不可能だ。
危険を察知したレフェリーがゴングを要請。
「またチャンピオンの勝ちか!」
「クソッタレ、3億がパーだ!」
「ワハハハハハ!今日も稼がせてもらったな!」
今道に賭けた観客は喜び、阪田に賭けた観客は肩を落とす。
レフェリーが今道の手を挙げた。
16分27秒、レフェリーストップで今道の勝利。
これで39回の防衛に成功した。
3年前、王座に君臨してから、無敗のまま防衛回数を重ねる。
勝った今道は涼し気な表情でチャンピオンベルトを肩に掛けた。
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