2 / 48
UWPとは
プロローグ
しおりを挟む
ここは都心から離れた国道沿いからやや外れた場所にある病院の廃墟。
如何にも幽霊が出そうな雰囲気だ。
鬱蒼とした林に囲まれ、広大な空き地の中央に病院の残骸とも言える建物がポツンと鎮座している。
立ち入り禁止と書かれている柵に囲まれ、上部には有刺鉄線が巻かれており、中に入るのは難しい。
心霊スポットとしては最適な場所だが、人通りの少ないせいで、誰も近寄る事は無い。
廃墟の中は改装されていて、真ん中にリングが置かれており、その四方を囲むように、2階席まで椅子が用意されている。
しかも、普通のパイプ椅子ではなく、宮殿で使用されたかのような、ラグジュアリーでアンティーク感溢れる椅子が約1000席用意されている。
この廃墟の中では毎月一日になると、
プロレスが開催されるという。
しかし、プロレスはプロレスでも、表舞台のプロレス団体ではなく、アンダーグラウンドで行われる非公式のプロレスだからだ。
地下格闘技ならば、マンガや小説等である設定だが、プロレスが何故こんな場所で?と不思議に思うのは無理もない。
それは、高級感溢れる椅子に座る観客が各国の富裕層の集まりで、厳選な審査の結果、抽選で選ばれた者が観戦出来る。
一生かかっても使い切れないカネとヒマを持て余した金持ちが刺激を求め、賭けの対象として試合を観戦するという、贅沢極まりない催しだ。
では、普通のプロレスと何処が違うのか。
1つ 全ての試合に賭けが行われている。
表舞台のプロレスで賭けを行えば、違法賭博でお縄に掛けられてしまう。
しかし、非合法の地下プロレスでは賭けが横行しており、富裕層は何の遠慮も無しに金を賭けては野次を飛ばしている。
2つ プロレスには付きものの取り決めが存在しない。
プロレスとは本来、勝敗が決まっており、大まかな事はレスラー同士に任せて、マッチメイクをする者が勝敗を決めるのが通常だ。
しかし、この地下プロレスには取り決めが一切無い。
厳密に言えば、通常のプロレススタイルも行われるのだが、些か勝手が違う。
それは、シュートとワークが混在してどのような結果になるのかレスラー達も判らない。
例えばA対Bの試合では、開始10分以内にAがBをシュートで倒せばAの勝利だが、それを越えると自動的にBが開始20分程で勝つという、難解な筋書きが用意されている。
レスラー達は取り決めを必ず守らなければならない。
もし、それを破った場合、そのレスラーは闇に葬られてしまうという。
そしてメインイベントは必ずチャンピオンが防衛戦を行い、試合は全てシュートで行うという決まりがある。
試合に勝てば、決して表舞台のプロレスでは手に入らない程の金額が舞い込み、巨万の富を得る。
更に希望とあれば、好きな女を何人も抱けるというから、全てが手に入ると言っても過言では無い。
敗者には一銭も入らず、再び0からのスタートとなる。
正にオール・オア・ナッシングの世界だ。
地下プロレスの名称は、Under World Prowrestling(アンダーワールドプロレスリング)通称UWPと呼ばれている。
主催者は、かつてWWA(ワールドプロレスリングアソシエーション)という団体に所属していた元プロレスラーの神宮寺 直人(じんぐうじなおと)。
彼は昨今のサーカスを模倣したようなアクロバティックな技ばかりが横行するプロレスに失望し、理想のプロレスを掲げ、たどり着いたのがUWPという地下プロレスだった。
今大会も大盛り上がりを見せ、これからメインイベントを迎える。
UWPのチャンピオンである、今道 陽斗(いまみちはると)の防衛戦の相手は、フリーの立場から参戦し、現在破竹の5連勝でランキング1位に君臨する、阪田 光輝(さかたこうき)。
パワーファイターでありながら、シュートにも強く、打撃と投げ技には要注意なレスラーだ。
先に青コーナーから阪田が入場する。
イカつい顔立ちに胸には龍のタトゥーが大きく施されている。
両拳にはバンテージが巻かれ、黒のショートタイツに二ーパット、素足というコスチュームでシャドーを繰り返している。
そして赤コーナーから、チャンピオン今道が登場。
「おい、チャンピオン!今日も勝てよ!」
「私はキミに10億を賭けているんだ!負けたら承知しないぞ!」
「チャンピオン!今日も楽しませてくれよな!」
富裕層からは絶大な声援を受ける。
195cm 117kg
首周りや肩幅、胸板は如何にもレスラーという規格外な大きさでありながら、胴回りは引き締まって逆三角形な体格。
黒髪のマッシュルームカットが似合う中性的な顔立ちは27歳にしてはやや童顔にも見える。
阪田と同じく黒のショートタイツとリングシューズという、昭和のプロレスラーを彷彿とするシンプルなコスチュームに加え、肩には幾つものダイヤをあしらったチャンピオンベルトを携えてリングイン。
場内は熱気に包まれた。
如何にも幽霊が出そうな雰囲気だ。
鬱蒼とした林に囲まれ、広大な空き地の中央に病院の残骸とも言える建物がポツンと鎮座している。
立ち入り禁止と書かれている柵に囲まれ、上部には有刺鉄線が巻かれており、中に入るのは難しい。
心霊スポットとしては最適な場所だが、人通りの少ないせいで、誰も近寄る事は無い。
廃墟の中は改装されていて、真ん中にリングが置かれており、その四方を囲むように、2階席まで椅子が用意されている。
しかも、普通のパイプ椅子ではなく、宮殿で使用されたかのような、ラグジュアリーでアンティーク感溢れる椅子が約1000席用意されている。
この廃墟の中では毎月一日になると、
プロレスが開催されるという。
しかし、プロレスはプロレスでも、表舞台のプロレス団体ではなく、アンダーグラウンドで行われる非公式のプロレスだからだ。
地下格闘技ならば、マンガや小説等である設定だが、プロレスが何故こんな場所で?と不思議に思うのは無理もない。
それは、高級感溢れる椅子に座る観客が各国の富裕層の集まりで、厳選な審査の結果、抽選で選ばれた者が観戦出来る。
一生かかっても使い切れないカネとヒマを持て余した金持ちが刺激を求め、賭けの対象として試合を観戦するという、贅沢極まりない催しだ。
では、普通のプロレスと何処が違うのか。
1つ 全ての試合に賭けが行われている。
表舞台のプロレスで賭けを行えば、違法賭博でお縄に掛けられてしまう。
しかし、非合法の地下プロレスでは賭けが横行しており、富裕層は何の遠慮も無しに金を賭けては野次を飛ばしている。
2つ プロレスには付きものの取り決めが存在しない。
プロレスとは本来、勝敗が決まっており、大まかな事はレスラー同士に任せて、マッチメイクをする者が勝敗を決めるのが通常だ。
しかし、この地下プロレスには取り決めが一切無い。
厳密に言えば、通常のプロレススタイルも行われるのだが、些か勝手が違う。
それは、シュートとワークが混在してどのような結果になるのかレスラー達も判らない。
例えばA対Bの試合では、開始10分以内にAがBをシュートで倒せばAの勝利だが、それを越えると自動的にBが開始20分程で勝つという、難解な筋書きが用意されている。
レスラー達は取り決めを必ず守らなければならない。
もし、それを破った場合、そのレスラーは闇に葬られてしまうという。
そしてメインイベントは必ずチャンピオンが防衛戦を行い、試合は全てシュートで行うという決まりがある。
試合に勝てば、決して表舞台のプロレスでは手に入らない程の金額が舞い込み、巨万の富を得る。
更に希望とあれば、好きな女を何人も抱けるというから、全てが手に入ると言っても過言では無い。
敗者には一銭も入らず、再び0からのスタートとなる。
正にオール・オア・ナッシングの世界だ。
地下プロレスの名称は、Under World Prowrestling(アンダーワールドプロレスリング)通称UWPと呼ばれている。
主催者は、かつてWWA(ワールドプロレスリングアソシエーション)という団体に所属していた元プロレスラーの神宮寺 直人(じんぐうじなおと)。
彼は昨今のサーカスを模倣したようなアクロバティックな技ばかりが横行するプロレスに失望し、理想のプロレスを掲げ、たどり着いたのがUWPという地下プロレスだった。
今大会も大盛り上がりを見せ、これからメインイベントを迎える。
UWPのチャンピオンである、今道 陽斗(いまみちはると)の防衛戦の相手は、フリーの立場から参戦し、現在破竹の5連勝でランキング1位に君臨する、阪田 光輝(さかたこうき)。
パワーファイターでありながら、シュートにも強く、打撃と投げ技には要注意なレスラーだ。
先に青コーナーから阪田が入場する。
イカつい顔立ちに胸には龍のタトゥーが大きく施されている。
両拳にはバンテージが巻かれ、黒のショートタイツに二ーパット、素足というコスチュームでシャドーを繰り返している。
そして赤コーナーから、チャンピオン今道が登場。
「おい、チャンピオン!今日も勝てよ!」
「私はキミに10億を賭けているんだ!負けたら承知しないぞ!」
「チャンピオン!今日も楽しませてくれよな!」
富裕層からは絶大な声援を受ける。
195cm 117kg
首周りや肩幅、胸板は如何にもレスラーという規格外な大きさでありながら、胴回りは引き締まって逆三角形な体格。
黒髪のマッシュルームカットが似合う中性的な顔立ちは27歳にしてはやや童顔にも見える。
阪田と同じく黒のショートタイツとリングシューズという、昭和のプロレスラーを彷彿とするシンプルなコスチュームに加え、肩には幾つものダイヤをあしらったチャンピオンベルトを携えてリングイン。
場内は熱気に包まれた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どーでもいいからさっさと勘当して
水
恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。
妹に婚約者?あたしの婚約者だった人?
姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。
うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。
※ザマアに期待しないでください
お兄様、奥様を裏切ったツケを私に押し付けましたね。只で済むとお思いかしら?
百谷シカ
恋愛
フロリアン伯爵、つまり私の兄が赤ん坊を押し付けてきたのよ。
恋人がいたんですって。その恋人、亡くなったんですって。
で、孤児にできないけど妻が恐いから、私の私生児って事にしろですって。
「は?」
「既にバーヴァ伯爵にはお前が妊娠したと告げ、賠償金を払った」
「はっ?」
「お前の婚約は破棄されたし、お前が母親になればすべて丸く収まるんだ」
「はあっ!?」
年の離れた兄には、私より1才下の妻リヴィエラがいるの。
親の決めた結婚を受け入れてオジサンに嫁いだ、真面目なイイコなのよ。
「お兄様? 私の未来を潰した上で、共犯になれって仰るの?」
「違う。私の妹のお前にフロリアン伯爵家を守れと命じている」
なんのメリットもないご命令だけど、そこで泣いてる赤ん坊を放っておけないじゃない。
「心配する必要はない。乳母のスージーだ」
「よろしくお願い致します、ソニア様」
ピンと来たわ。
この女が兄の浮気相手、赤ん坊の生みの親だって。
舐めた事してくれちゃって……小娘だろうと、女は怒ると恐いのよ?
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
四季
恋愛
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。
どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。
夫が大人しめの男爵令嬢と不倫していました
hana
恋愛
「ノア。お前とは離婚させてもらう」
パーティー会場で叫んだ夫アレンに、私は冷徹に言葉を返す。
「それはこちらのセリフです。あなたを只今から断罪致します」
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる