UWP(Under World Prowrestling)

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UWPとは

プロローグ

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ここは都心から離れた国道沿いからやや外れた場所にある病院の廃墟。

如何にも幽霊が出そうな雰囲気だ。

鬱蒼とした林に囲まれ、広大な空き地の中央に病院の残骸とも言える建物がポツンと鎮座している。

立ち入り禁止と書かれている柵に囲まれ、上部には有刺鉄線が巻かれており、中に入るのは難しい。


心霊スポットとしては最適な場所だが、人通りの少ないせいで、誰も近寄る事は無い。


廃墟の中は改装されていて、真ん中にリングが置かれており、その四方を囲むように、2階席まで椅子が用意されている。


しかも、普通のパイプ椅子ではなく、宮殿で使用されたかのような、ラグジュアリーでアンティーク感溢れる椅子が約1000席用意されている。


この廃墟の中では毎月一日になると、
プロレスが開催されるという。

しかし、プロレスはプロレスでも、表舞台のプロレス団体ではなく、アンダーグラウンドで行われる非公式のプロレスだからだ。



地下格闘技ならば、マンガや小説等である設定だが、プロレスが何故こんな場所で?と不思議に思うのは無理もない。


それは、高級感溢れる椅子に座る観客が各国の富裕層の集まりで、厳選な審査の結果、抽選で選ばれた者が観戦出来る。


一生かかっても使い切れないカネとヒマを持て余した金持ちが刺激を求め、賭けの対象として試合を観戦するという、贅沢極まりない催しだ。



では、普通のプロレスと何処が違うのか。


1つ 全ての試合に賭けが行われている。

表舞台のプロレスで賭けを行えば、違法賭博でお縄に掛けられてしまう。


しかし、非合法の地下プロレスでは賭けが横行しており、富裕層は何の遠慮も無しに金を賭けては野次を飛ばしている。


2つ プロレスには付きものの取り決めが存在しない。

プロレスとは本来、勝敗が決まっており、大まかな事はレスラー同士に任せて、マッチメイクをする者が勝敗を決めるのが通常だ。


しかし、この地下プロレスには取り決めが一切無い。


厳密に言えば、通常のプロレススタイルも行われるのだが、些か勝手が違う。


それは、シュートとワークが混在してどのような結果になるのかレスラー達も判らない。


例えばA対Bの試合では、開始10分以内にAがBをシュートで倒せばAの勝利だが、それを越えると自動的にBが開始20分程で勝つという、難解な筋書きが用意されている。


レスラー達は取り決めを必ず守らなければならない。


もし、それを破った場合、そのレスラーは闇に葬られてしまうという。


そしてメインイベントは必ずチャンピオンが防衛戦を行い、試合は全てシュートで行うという決まりがある。


試合に勝てば、決して表舞台のプロレスでは手に入らない程の金額が舞い込み、巨万の富を得る。


更に希望とあれば、好きな女を何人も抱けるというから、全てが手に入ると言っても過言では無い。



敗者には一銭も入らず、再び0からのスタートとなる。


正にオール・オア・ナッシングの世界だ。



地下プロレスの名称は、Under World Prowrestling(アンダーワールドプロレスリング)通称UWPと呼ばれている。


主催者は、かつてWWA(ワールドプロレスリングアソシエーション)という団体に所属していた元プロレスラーの神宮寺 直人(じんぐうじなおと)。


彼は昨今のサーカスを模倣したようなアクロバティックな技ばかりが横行するプロレスに失望し、理想のプロレスを掲げ、たどり着いたのがUWPという地下プロレスだった。




今大会も大盛り上がりを見せ、これからメインイベントを迎える。


UWPのチャンピオンである、今道 陽斗(いまみちはると)の防衛戦の相手は、フリーの立場から参戦し、現在破竹の5連勝でランキング1位に君臨する、阪田 光輝(さかたこうき)。


パワーファイターでありながら、シュートにも強く、打撃と投げ技には要注意なレスラーだ。


先に青コーナーから阪田が入場する。


イカつい顔立ちに胸には龍のタトゥーが大きく施されている。


両拳にはバンテージが巻かれ、黒のショートタイツに二ーパット、素足というコスチュームでシャドーを繰り返している。


そして赤コーナーから、チャンピオン今道が登場。


「おい、チャンピオン!今日も勝てよ!」


「私はキミに10億を賭けているんだ!負けたら承知しないぞ!」


「チャンピオン!今日も楽しませてくれよな!」


富裕層からは絶大な声援を受ける。


195cm 117kg


首周りや肩幅、胸板は如何にもレスラーという規格外な大きさでありながら、胴回りは引き締まって逆三角形な体格。


黒髪のマッシュルームカットが似合う中性的な顔立ちは27歳にしてはやや童顔にも見える。


阪田と同じく黒のショートタイツとリングシューズという、昭和のプロレスラーを彷彿とするシンプルなコスチュームに加え、肩には幾つものダイヤをあしらったチャンピオンベルトを携えてリングイン。



場内は熱気に包まれた。
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