78 / 134
球界の盟主
球界をダメにする老害
しおりを挟む
この男はコミッショナーさえ、意のままに動かしてしまう。
ただのオーナーだと思っていると、大変な目にあう。
「そう言えば、キミは確か日系人だったな。国籍は米国だったっけ?」
穴堀はヤマオカも、日本の球界から追い出すつもりなのか…
「…」
ヤマオカは何も言わず、穴堀の顔を見た。
(ったく、醜いツラだ。欲の皮で覆われた薄汚ぇ顔してる)
ヤマオカはこの男がいる限り、日本の球界がダメになってしまうとさえ思っている。
結局この男にとって球団とは、宣伝媒体の一つに過ぎないのだ。
都合のいいように周りを動かし、常にイニシアティブを握らないと済まないタイプだ。
何故、今さら2リーグ制にする必要があるのだろうか。
何故、メジャーと真の世界一を争う意味がないのか。
挙げ句には、球界から外国人選手を追い出すと、どこまで自分勝手な事をすれば気が済むのだろうか。
以前はFA宣言したある選手を獲得出来ず、メジャーリーグに挑戦した際
「たかが1選手のクセに、ウチの誘いを断るとは身の程知らずめ」と暴言を吐き、バッシングを浴びた事もある。
選手は皆、キングダムに来たがっている。
ウチこそが1番強く、1番人気のある球団だと言ってはばからない。
確かに球界の盟主として、キングダムは君臨している。
有能な選手を高額な年棒で引き抜く事は、日常茶飯事だ。
だが、少しでも成績が悪くなると容赦なく放出する。
監督や球団関係者までもが彼の操り人形だ。
「私が米国籍だと、近いうちに日本の球界から追い出されてしまうわけですか?」
穴堀に問う。
「何を言うかね。キミはいなくなる必要はないじゃないか。日本の野球で育ち、日本の球団でも監督をしていたじゃないか、渡米するまでは」
(…っ!気づいていたのか…)
「何故、日本の球界を捨ててメジャーのヘッドコーチになったのかね、宇棚君」
やっぱり穴堀は気づいていた。
ナダウ・ヤマオカの正体は宇棚 珍太朗だという事を。
「何故、査問委員会の時に私の正体を暴かなかったのですか?」
「正体を暴く事なんか、いつでも出来る」
「私を泳がすつもりだったのですか?」
「人聞きの悪い事を言うんじゃないよ。私は優秀な監督は、日本の球界に無くてはならない人物だと思っているからね」
(まぁ、よく考えたらオレの正体なんて、そのうちバレるだろうと思ってたからな)
ヤマオカはいずれ、正体を暴かれるだろうとは思っていた。
仮に正体を暴かれても、否定するつもりはなかった。
そう言いながら、息子の元春に暴かれた時はパスポートを偽造してまで否定していたクセに…
「ヤマオカ君、いや、宇棚君。このトレードはもう成立したんだ。覆す事は出来ないんだよ」
(随分勝手な都合だな、このクソジジイが。まぁ仕方ない)
「わかりました。トレードの話、お引き受けします」
ヤマオカはどうせ反対しても、強引にトレードを行うに違いないと思った。
「ですが、穴堀オーナー。一つだけ条件を出してよろしいでしょうか?」
「条件とは何かね?」
ヤマオカを見据えて言った。
「浅野君ともう1人、ファームにいる若手を入れてもらえないでしょうか?野手か投手かは、明日にでも返答致します」
ヤマオカは浅野プラス若手選手とのトレードに持ち込むらしい。
「ファームの選手?こりゃ、何を言い出すかと思いきや、下の選手が欲しいのか?それなら、1人と言わず何人でも連れて行くがいい、ハッハッハッハッハ!」
ファームにいる選手は、無能な役立たずだと思っているらしい。
キングダムのファームの中には才能があっても、FA等で補強してくる選手のせいで、二軍に甘んじている選手が数多くいる。
せっかくの才能を活かせないで、野球人生を終える選手も少なくない。
ヤマオカはキングダムのファームには、磨けば光るダイヤの原石がいると見ている。
「じゃあ、トレード成立ですね。今から必要な選手をピックアップしたいので、私はこの辺で失礼致します。今日はお誘い頂き、誠にありがとうございました」
深々と頭を下げ、ヤマオカは料亭を出た。
(あいつらがいなくなるのはかなり痛いな…)
ヤマオカはトレードする三人に、どう切り出して話をすればよいか考えていた。
ただのオーナーだと思っていると、大変な目にあう。
「そう言えば、キミは確か日系人だったな。国籍は米国だったっけ?」
穴堀はヤマオカも、日本の球界から追い出すつもりなのか…
「…」
ヤマオカは何も言わず、穴堀の顔を見た。
(ったく、醜いツラだ。欲の皮で覆われた薄汚ぇ顔してる)
ヤマオカはこの男がいる限り、日本の球界がダメになってしまうとさえ思っている。
結局この男にとって球団とは、宣伝媒体の一つに過ぎないのだ。
都合のいいように周りを動かし、常にイニシアティブを握らないと済まないタイプだ。
何故、今さら2リーグ制にする必要があるのだろうか。
何故、メジャーと真の世界一を争う意味がないのか。
挙げ句には、球界から外国人選手を追い出すと、どこまで自分勝手な事をすれば気が済むのだろうか。
以前はFA宣言したある選手を獲得出来ず、メジャーリーグに挑戦した際
「たかが1選手のクセに、ウチの誘いを断るとは身の程知らずめ」と暴言を吐き、バッシングを浴びた事もある。
選手は皆、キングダムに来たがっている。
ウチこそが1番強く、1番人気のある球団だと言ってはばからない。
確かに球界の盟主として、キングダムは君臨している。
有能な選手を高額な年棒で引き抜く事は、日常茶飯事だ。
だが、少しでも成績が悪くなると容赦なく放出する。
監督や球団関係者までもが彼の操り人形だ。
「私が米国籍だと、近いうちに日本の球界から追い出されてしまうわけですか?」
穴堀に問う。
「何を言うかね。キミはいなくなる必要はないじゃないか。日本の野球で育ち、日本の球団でも監督をしていたじゃないか、渡米するまでは」
(…っ!気づいていたのか…)
「何故、日本の球界を捨ててメジャーのヘッドコーチになったのかね、宇棚君」
やっぱり穴堀は気づいていた。
ナダウ・ヤマオカの正体は宇棚 珍太朗だという事を。
「何故、査問委員会の時に私の正体を暴かなかったのですか?」
「正体を暴く事なんか、いつでも出来る」
「私を泳がすつもりだったのですか?」
「人聞きの悪い事を言うんじゃないよ。私は優秀な監督は、日本の球界に無くてはならない人物だと思っているからね」
(まぁ、よく考えたらオレの正体なんて、そのうちバレるだろうと思ってたからな)
ヤマオカはいずれ、正体を暴かれるだろうとは思っていた。
仮に正体を暴かれても、否定するつもりはなかった。
そう言いながら、息子の元春に暴かれた時はパスポートを偽造してまで否定していたクセに…
「ヤマオカ君、いや、宇棚君。このトレードはもう成立したんだ。覆す事は出来ないんだよ」
(随分勝手な都合だな、このクソジジイが。まぁ仕方ない)
「わかりました。トレードの話、お引き受けします」
ヤマオカはどうせ反対しても、強引にトレードを行うに違いないと思った。
「ですが、穴堀オーナー。一つだけ条件を出してよろしいでしょうか?」
「条件とは何かね?」
ヤマオカを見据えて言った。
「浅野君ともう1人、ファームにいる若手を入れてもらえないでしょうか?野手か投手かは、明日にでも返答致します」
ヤマオカは浅野プラス若手選手とのトレードに持ち込むらしい。
「ファームの選手?こりゃ、何を言い出すかと思いきや、下の選手が欲しいのか?それなら、1人と言わず何人でも連れて行くがいい、ハッハッハッハッハ!」
ファームにいる選手は、無能な役立たずだと思っているらしい。
キングダムのファームの中には才能があっても、FA等で補強してくる選手のせいで、二軍に甘んじている選手が数多くいる。
せっかくの才能を活かせないで、野球人生を終える選手も少なくない。
ヤマオカはキングダムのファームには、磨けば光るダイヤの原石がいると見ている。
「じゃあ、トレード成立ですね。今から必要な選手をピックアップしたいので、私はこの辺で失礼致します。今日はお誘い頂き、誠にありがとうございました」
深々と頭を下げ、ヤマオカは料亭を出た。
(あいつらがいなくなるのはかなり痛いな…)
ヤマオカはトレードする三人に、どう切り出して話をすればよいか考えていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる