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クライマックス

調子は決して悪くない

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【2番ショート佐竹 背番号4】

2番打者の佐竹が右打席に入る。


典型的な2番バッターで、送りバントやエンドラン、右打ちでランナーを進塁させる小技を得意とする。


今シーズンは未だホームラン0だが、打率274、出塁率は362と優秀だ。


中邑が気を取り直し、セットポジションの体勢に入る。


一塁ランナー高野は大きくリードをとる。


振り向きざま、素早く牽制。


「セーフ!」


高野は頭から滑り込む。


(あぁ…この人が塁に出ると面倒臭い)


高野には全くと言っていいほど、相性が悪い。


(ランナーは気にするな、バッターに集中しろ!)


マスクをかぶる保坂は落ち着け!とジェスチャーする。


(先ずはアウトを取る事だ)


サインを出す。


中邑が頷き、クイックモーションから初球を投げた。


グーン、と大きく曲がるスライダーが外角いっぱいに決まる。


「ストライク!」


一塁ランナーの高野は走る様子は無い。


(初回から送るなんて事は無いだろ。ここは変化球主体のピッチングで攻めよう)


保坂が配球を組み立てる。


セットポジションから二球目を投げた。


真ん中やや高目のボールだ。


(よし、もらった!)


佐竹は短く持ったバットを合わせた。


「…っ!」


しかし、ボールはバットの下を通過。


「ストライクツー!」


中邑得意のフォークで早くもツーストライク。



(さて、次はどうするか…)


マスク越しから佐竹の構えを観察する。


(よし、これだ)


保坂のサインに頷き、中邑が三球目を投げた。


インコース低目ギリギリのボール。


佐竹がスイングするが、ボールは鋭く斜めに落ちた。


「ストライクアウト!」


縦のスライダーで三球三振。


「よしっ!」


保坂がミットをポンと叩いた。




先頭バッターの高野にいきなりヒットを打たれたが、続く佐竹を三球三振に打ち取り中邑の精神状態は落ち着く。


【3番ライト村上 背番号10】


去年の新人王でマーリンズの次世代スラッガー村上が左打席に入る。


5ツールプレイヤーと呼ばれ、打力 長打力 走力 肩力 守備力全てを兼ね備えた万能選手。


今年は打率324 ホームラン22 打点63 盗塁18
出塁率363 長打率594 OPS0.957


二年目のジンクスを吹き飛ばし、攻守にわたりマーリンズの快進撃に貢献する。


180cm89kgとややガッチリした身体付きながら、俊足を生かした広い守備範囲を誇る。


(コイツはいいとして、問題は次のバッターだ)


中邑は村上など眼中にない。

それよりも、次の羽田の方が恐い。


しかも中邑は村上に対して15打数1安打と完全に抑えている。



まるで刀を持って構えるが如く、堂々たる出で立ちで射る様な鋭い眼を中邑に向ける。


(これでどうだ)


保坂のサインに頷き、セットポジションからクイックで初球を投げた。


ホップする様なノビのあるフォーシームが、インコース低目にズバッと決まった。


「ストライク!」


球速は157kmをマーク。




(さすが首位を独走するチームのエースだ…だが、次は変化球でくるハズ。そこを狙う)


高野は次の投球で走るつもりだ。


セットポジションから一塁へ牽制する。


「セーフ!」


さ程リードをとってないので、悠々間に合う。


もう一度牽制をする。


「セーフ!」


やはりランナーが気になるのか。


クイックモーションから二球目を投げた。


同時に高野がスタートを切った。


高野の読み通り、スライダーがインコースへ食い込む。


村上は空振りでアシストをする。


「ストライク!」


瞬時に保坂が素早いスローイングで二塁へ。


矢のような送球だが、高野は上手くかいくぐってベースをタッチ。


「セーフ」

ショート石川のタッチが一瞬遅れた。


高野の今シーズン22個目の盗塁成功でランナー二塁となった。


「クソっ、走られたか!」


保坂が思わず口にする程、今の送球はカンペキだった。


しかし、カウントは早くもツーストライク。


佐竹の時と同じ三球勝負するか、それとも一球外すか。


(いくら打たれてないとは言え、三球勝負は危険だ)


保坂は高目の釣り球を要求した。


上体を屈めサインを覗き込む。


力強く頷いて三球目を投げた。


インハイへ唸りを上げた速球が迫り来る。


村上はスイングの動作に入ったが、素早くバットを止めた。


「塁審!」


保坂は三塁塁審を指した。


「セーフ!」


スイングはしてないとの判定。


(マジか…てっきりスイングしたと思ったんだが)



これでワンボール、ツーストライク。


(次で決めろ)


サインに頷き、セットポジションの体勢から先程よりも速いモーションで投げた。


「うゎっ…」


フワッとしたスローカーブが大きく弧を描いてミットへ。


村上はタイミングを取れず、バットが出なかった。


「ストライクアウト!」



「あぁ、クソっ!」

村上は天を仰いで悔しがる。


これでツーアウト。


【4番サード羽田 背番号3】


ガックリと項垂れる村上とは正反対に、自信に満ち溢れた足取りでバッターボックスへ向かう。


「まだ初回だ!次の打席でリベンジしてやれ!」


「ハ、ハイ!」


すれ違いざま村上に檄を飛ばす。


ツーアウトランナー二塁の場面で日本球界が誇る右の大砲羽田が、ゆっくりと右打席に入った。











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