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クライマックス

二者連続ホームラン

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中邑はエースの貫禄が出てきたのか、4番浅倉をフォークで三振。

5番ウォーリーを156kmのツーシームで見逃し三振。


6番林をこの日最速の159kmのフォーシームで空振り三振。


クリーンナップを連続三振で退けた。


2回の裏、スカイウォーカーズの攻撃は4番毒島。


今日は鬼束に代わって4番を務める。

現在31本のホームランはリーグトップ。


一時期スランプに陥ってたが、どうやら長いトンネルを抜けたようだ。


バットを垂直に構え、大きめのスタンスで泰然自若に迎え撃つ。


マウンド上の吉村は投げにくそうな様子だ。


サインが決まり、ノーワインドアップから速い腕の振りで初球を投げた。


インコース低目へ対角線にストレートが唸りを上げる。


(フッ…)


毒島はこれを待ってたとばかりに左足を開き、正面を向いた状態で豪快に振り抜く!


グシャっ、とボールがひしゃげ、左中間に弾き返した。


センター浅倉、レフトウォーリーが打球を追う。


しかし、打球は弧を描いて遥か頭上を越す。


その勢いで最深部のスタンドに入った。


ワァーっと歓声が上がった。


今シーズン第32号のソロホームランが飛び出した。


毒島は拳を高々と上げベースを回る。


パワーヒッターらしく、滞空時間の長い放物線を描いた美しい打球だ。


背筋力240キロという、桁外れのパワーを持つ毒島は真のホームランアーティストと称される。


毒島は今ホームイン。


スカイウォーカーズが1点を先制。



ベンチ前で榊が出迎える。


「おぉーし、よくやった!」


「アザーっす!」


ハイタッチを交わす。


「ナイスバッティング!」


「さすが4番!」


「この勢いでホームラン王獲れよ!」


「Great! It's a good home run.(素晴らしいホームランだ!)」


横一列に並び、次々にハイタッチを交わす。


「よし、このまま畳掛けよう!」


「後に続け!」


ベンチが活気づいた。


【5番レフト中山 背番号7】



「よし、オレも一発狙ってみようかな」


ネクストバッターズサークルから勢いよく立ち上がる。


「Hey、Kazuto!」


トーマスが呼び止める。


「え、何だろ?」


ベンチ前まで戻る。


「Go for a fastball and swing as fast as you can!(ストレートが来たら、思いっきりぶっ叩け!)」


GO!と背中を叩いて送り出した。

「うしっ、打ってやる!」


トーマスの言葉で身体中にパワーが漲るのを感じる。


やる気満々で打席に入り、バットを担ぐ様に構える。



マウンド上の吉村に気落ちした様子は無い。


(今のは出会い頭みたいなもんだ。この先抑えれば問題無い…)


林は中山の打席を見てサインを出した。


(ベース寄りに立っている…アウトコース狙いか…いや、あれはブラフでインコース狙いだろう)


立ち位置で配球を組み立てた。


サインに頷き、初球を投げた。


外へ沈むシンカー、しかし中山は見送る。


「ボール!」


これはよく見た。


(これは振らないか…初球から決め球のシンカーを投げるという事は、次に投げるのは直球だと思ってるだろう)


その裏をかいてやろう、とサインを出す。


頷いて二球目を投げた。


初球と同じコースへシンカーが。


ピクリとも動かず、悠然と見送る。


「ボール!」


(読んでたのか…いや、ただ手が出なかっただけかもしれない。次はこの球にしよう)


吉村がサインを覗き込んで頷く。


ノーワインドアップから速い腕の振りで、指先に全神経を集中させる。


放たれたボールは内側に食い込むように迫り来る。


(来たっ、…)


左足を上げ、タイミング良く踏み込む。同時に腕から腰、下半身と力を伝達する。


インパクトの瞬間、鋭い回転で振り抜く。


打球はレフトへ高々と上がった。


「入れっ!」


中山は全速力で一塁を蹴った。


レフトウォーリーがフェンス手前まで下がる。

だが打球はスタンド中段へと突き刺さる。


「おぉーっし!二者連続だ!」


先程よりも更に大きな歓声が上り、さすがの吉村もマウンドでガックリと項垂れる。

中山の第12号ソロホームランで1点追加。


「よし、カンペキなスイングだった」


自画自賛のバッティングで、興奮冷めやらぬままホームイン。


これで2対0。


尚も攻撃は続く。



その一方で、マーリンズ先発天海はレボリューションズ打線を未だ無安打に抑え、5回の裏で3対0とマーリンズがリードしている。








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