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バトル

ケリをつけよう

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「こんな酷い試合は未だかつて無い!」


ファンが暴動を起こし、機動隊まで出動する騒ぎとなった。


原因は何か?

それは先発の予定だった天海がボイコットをしたのが発端だ。


この試合、マーリンズサイドに非があるという事で鈴木監督が責任をとり、休養という形で監督の座を退いた。


残りの試合は、監督代理としてヘッドコーチの山崎が采配を振る。


では、当の天海は何をしていたのか。

先発を告げられ、予定の時刻に球場入りしてブルペンで投球練習を行った。

その後、忽然と姿を消した。

コーチや選手、球団関係者も球場内をくまなく捜したが、天海の姿は無い。


何か事件にでも巻き込まれたのか、と一時は心配したが、それまでの経緯を遡れば、鈴木監督との確執が原因でボイコットしたのではないか、と考えた。


天海は投球練習を終えた後、ユニフォーム姿のまま球場からタクシーを拾い、宿舎に戻り荷物をまとめて帰ってしまった。


あまりの身勝手な行動に、球団は激怒。


罰金を課せられたが、天海はこれを不服としてフロントに直談判した。


そもそも、あんな采配をするのがおかしい。

オレは何も悪くない、悪いのは監督だ。


あんな交代させられて、黙ってるワケにはいかない。
それなら、目には目を歯には歯を!という名目でボイコットしたとの事。




だが、鈴木監督は事実上の辞任という形で責任をとった。

ならば、天海もそれ相応の罰を受けるべきだ、との結論に。


球団が下した処分は【今年の年俸0円、並びに2ヶ月の試合出場停止】となった。


2ヶ月となると、10月の終わりに処分が解ける。

しかし、その時期ペナントレースは既に終了している。

即ち、天海は今シーズンを終了したという事になる。


天海はそんな処分を受け入れるつもりは毛頭ない。


今や日本VS天海という、国民全てを敵に回した様な状態でもある。


傍若無人もここまでくれば、天晴れとなる…ワケでは無い。


マスコミに散々叩かれ、球界からも総スカンを食らい、それでも己の考えを曲げる事無く、実力でのし上がってきた。


だが、それも限界にきていた。


確かに球界を代表するエースとして、数々の栄冠を手に入れた。

しかし、度重なる暴言、失言、挙句にはボイコットとなれば、ファンからは

「またやってんのかよ」


「コイツ、ホントにバカだな」


「もう、球界追放でいいよ」


という具合に、そっぽを向かれる。


それなのに、頑なに自分の考えを曲げようとしない。


評論家は

「もう、メジャーでも何処でも行けばいい。二度と日本には帰ってくるな」

と追放を強く主張する。


孤立した天海は今後どうなるのか。




マーリンズの内部紛争が起こってる最中、首位のスカイウォーカーズは着々と勝利を重ねた。


3位のキングダムに勝ち越し、山口県でレボリューションズにスイープを決め、北陸でレッズ相手に勝ち越し。


その間順位は入れ替わり、2位だったマーリンズが3位に。

3位だったキングダムは2位に浮上した。


キングダムは翔田が抜けた後、ガクッと戦力が落ちたが選手達が危機感を感じ、翔田抜きでも戦えるという意地を見せる。


翔田がいた時よりも、チームは一丸となって勝利を重ねる。

終盤にきて怒涛の追い上げの結果、首位スカイウォーカーズとは僅か1.0ゲーム差。



そのスカイウォーカーズも、ここ最近のキングダムとの相性が良くない。

レッズ戦の後、東京ボールパークでキングダムとの三連戦はまさかの三連敗。

勝利への執念を燃やすキングダムナイン。

これでスカイウォーカーズとの成績は、12勝11敗と僅かだが勝ち越す。


3位マーリンズは主砲の羽田、エースの中澤が何とか意地を見せるが、鈴木監督の辞任、天海の出場停止が響いたのか、勢いは失速した。



鈴木監督と天海。


この二人は現在無職の様な状態だ。


何もすることが無い。

無いワケでは無いが、別に無理してやる事も無い。


要はヒマなのだが、二人とも同じ考えを持っていた。



【アイツとはケリを着ける】


引き寄せられる様に、二人は急接近した。
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