上 下
93 / 125
優勝争い

因縁の対決

しおりを挟む
スカイウォーカーズのスタメンは

1ライトラファエル
2センター唐澤
3ファースト結城
4セカンド鬼束
5サード毒島
6レフト中山
7キャッチャー保坂
8ピッチャー片山
9ショート筧


マーリンズのスタメンは

1セカンド藤原
2ショート佐竹
3ライト村上
4サード羽田
5ファーストサンダース
6センター木村
7レフト張
8キャッチャー川上
9ピッチャー天海


約4万人という大観衆の中、試合はスタートした。


【1番ライトラファエル 背番号9】


先頭打者のラファエルがゆっくりと歩を進め、左打席に入った。


バットをトップの位置で少し寝かせて構える。


「プレイボール!」


マウンド上で天海が立ちはだかる。


ノーワインドアップから、ムダの無い流れるモーションで第一球を投げた。

グォーン!という、目にも止まらぬ速さでボールは一直線にキャッチャー川上の構えたミットに吸い込まれる。


「ストライク!」


バックスクリーンの電光掲示板には、157kmと表示。



「Fast... There's no one who throws such a fast ball even in the major.(速い…メジャーでもこんなに速い球を投げるヤツはそうそういない)」


以前よりも、キレの増したバレット。


二軍生活で走りまくって鍛えた下半身のお陰で、ホップする様なストレートを体得した。


天海は真剣な表情でサインを見る。


頷き、二球目を投げた。


投げた瞬間、あっという間にボールはミットへ。


「ストライクツー!」


速すぎて球筋が見えない。


スピードガンは先程と同じ157km。


ツーストライクと追い込まれた。

「be blind to the ball's orbit(球筋が見えない)」


ラファエルはバットをやや短く持った。


ゆったりとしたモーションから、三球目を投げた。


(来たっ)

ラファエルは鋭いスイングでコンタクトをとるが、ボールは既にミットの中だ。


「ストライクアウト!」


最後に投じたバレットは、159kmをマーク。


ラファエル三球三振で早くもアウト一つ。


【2番ライト唐澤 背番号1】


ネクストバッターズサークルでバレットを食い入る様に見ていた唐澤が打席に向かう。


(以前より速くなった気がする)


左打席で自然体のまま、トップの位置でバットを構える。


(初球は何だ…ストレートか?)

唐澤は球種を読んでいる。


天海が初球を投げた。

ブワッ!と迫り来るバレットがあっという間にミットへ。


「ストライク!」


「速い…」


158kmを計測。

天才と呼ばれる唐澤さえも、バレットの軌道は見えない。


「痛てぇ…」

ボールを受ける川上がミットを外し、左手をブラブラさせている。


分厚いキャッチャーミットをしても、天海の球を捕るのはキツい。


いつもならば、何かと憎まれ口を叩く天海だが、この日は様子が違う。


真剣な表情は変わらない。


サインに頷き、二球目を投げた。

(速っ…)


目で追う事も出来ず、一直線にミットへ。


パーン!と捕球音が響く。


「ストライクツー!」


160kmと表示されると、【ウォー!】という歓声が上がった。


(速すぎて見えない…)


未だかつて無い状況で唐澤は戸惑う。


過去に、こんな速い球を投げるピッチャーはいなかった。

翔田のストレートでさえ、160kmを越えていたが、決して見えないワケじゃない。


それなのに…


天海のバレットは軌道が見えない。

目で球筋を捕え、バットを振る。


この動作をするには、バレットにタイミングが合わないのでは…


(見えないストレートなんて有り得ない!この打席は捨てて、ボールを見る事にしよう)


唐澤はこの打席を諦めた。

先ずは球筋をよく見る事。

この作業をしようと。


サインが決まり、三球目を投げた。


「あ…」

唐澤はウラをかかれた。


天海が投げたのはスライダー。

呆気にとられ、唐澤はバットが出ず。


「ストライクアウト!」


ド真ん中に143kmのスライダーが決まった。

見逃しの三振で早くもツーアウト。


「かなり速い球という事か」

唐澤の打席を見て、これは一筋縄ではいかないと思った。


【3番ファースト結城 背番号23】


もう一人の天才、結城が打席に向かう。


天海は真剣な表情から、憎悪に満ちた激しい形相に変わった。


「出てきたぜ、オレの獲物が」


不敵な笑みを浮かべる。


「打席に立つと、どのくらい速く感じるのだろうか」


結城はポーカーフェイスでバットを構える。


「本来ならば、コイツをこの打席で潰したいところなんやが…まぁええ、お楽しみは後でとっておこうかい」


ノーワインドアップから初球を投げた。


(速い…)


ズバーン!と勢いよくミットに入った。


「ストライク!」


またもや160kmをマーク。


(この速さ…これは厄介だな)


結城でさえも、バレットの軌道が見えない。


「フフっ、ムリムリ…オレの球を打てるヤツなんか、日本はおろかメジャーでもおらんのや」


大胆不敵に二球目を投げた。


ゴォォォ!と唸りを上げ、肉眼で捕える事さえも出来ず、ミットの音が響く。


「ストライクツー!」


天海はラファエルの打席からド真ん中しか投げてない。


打てるもんなら、打ってみろ。そう言わんばかりに敢えてド真ん中に放る。


結城も天海のバレットを捕える事が出来ないのか。


「次で三振や」


強靭な下半身で指先に力が集まる。

リリースの瞬間、一気に力を放つ。


投げたと同時にボールは既にミットの中へ。

「ストライクアウト!」


「これは…今までの天海くんが投げるストレートよりも更に速い」


結城も三球三振に倒れ、スリーアウトチェンジ。


「勝てるのか…あの球を打てるのか」


頭の中でどうすればバレットを打てるのかイメージしたが、攻略法が無い。


ベンチに戻り、ファーストミットを取ると一塁に向かった。


1回の表、スカイウォーカーズは三者三球三振で終了した。

しおりを挟む

処理中です...