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後半戦

聴取

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さて、スカイウォーカーズは愛媛ブラックスとの第二戦を間もなく迎える所。


先発はスカイウォーカーズが左のサンピエール、ブラックスはプロ10年目右のサイドスロー上本。


スタメンはスカイウォーカーズが

1ライトラファエル
2センター唐澤
3ファースト結城
4セカンド鬼束
5サード毒島
6レフト中山
7キャッチャー保坂
8ピッチャーサンピエール
9ショート筧


ブラックスのスタメンは

1センター城戸 
2ショート柴崎
3レフト足達
4サード風間
5ファーストウェルズ
6セカンド相川
7キャッチャー谷澤
8ライト高田
9ピッチャー上本

スカイウォーカーズは従来のスタメンに、ブラックスのオーダーに変更は無い。


試合開始早々、スカイウォーカーズ打線は爆発する。


先頭打者のラファエルが上本のストレートをライトスタンドに運ぶ、先制の9号ソロホームラン。

続く唐澤はフォアボールで歩くと、3番結城はセカンドの頭上を越えるヒットで三塁、一塁となり、4番鬼束はレフト線へのツーベースヒットで更に1点追加。


5番毒島はセンターバックスクリーンへリーグトップの31号のスリーランで、上本はアウト一つも取れずノックアウト。

ブラックスは二番手に野村を投入。

野村は後続を抑え1回の表を終了。


対するブラックスは3回の裏、3番足達がサンピエールの甘く入ったスライダーをレフトスタンドへ15号ソロで1点を返す。


5回の裏には、トップの城戸が右中間を破るツーベースヒットで出塁。


2番柴崎、3番足達が凡退しツーアウト。

4番風間はサンピエールの153kmのストレートをセンター前に弾き返し、二塁ランナー城戸が一気にホームイン。


スカイウォーカーズも、7回の表に9番筧がライトスタンドへ第5号のソロで突き放す。


サンピエールは7回を投げ、5安打2失点、8奪三振という内容でマウンドを降りた。

8回は中継ぎの山本が3人で抑え、最終回は抑えのジェイクが締め、2-5で連勝。


第三線は昼から降る雨の為、試合は中止となった。


スカイウォーカーズは本拠地に戻り、北陸レッズとの三連戦を迎える。


一方、翔田という軸を失ったキングダムはマーリンズに3連敗を喫し、とうとう2位から転落してマーリンズと入れ替わった。


「こうなったのも、全部アイツのせいだ!」


浅野監督はまだ怒りが収まらない。


審判団は故意では無いと判断したが、あれは絶対に狙って投げたものだ、と主張している。


ネプチューンリーグの順位は

1スカイウォーカーズ
2マーリンズ1.0差
3キングダム0.5差
4レボリューションズ3.5差
5レッズ1.5差
6ブラックス3.5差


キングダムがこのままズルズルと転落するのか、それとも巻き返しがあるのか。


その渦中の人物でもある天海は、第二戦開始前、鈴木監督に呼ばれ監督室で事情聴取された。


「なんちゅう、人の多さや。そんなに昨日の件が話題になったんか」


まるで他人事の様な言葉だ。


「そりゃそうだろう。何せ、球界の至宝とも言うべき選手があんな速い球当てられたんだ…あれが利き腕だったら、もっと騒ぎになるだろう」


鈴木監督は机の前でスポーツ紙を広げている。


「何が球界の至宝や!あんなん、至宝でも何でもないやろ!ホンマ、腹立つ扱いしやがって、ドアホ!」


ジャージ姿にボサボサの頭でソファーに座り、憮然とした表皮で吐き捨てる。


「お前も飲むか、コーヒー?」


「何や、ここの監督さんはよっぽどコーヒーが好きなんやな。
気ぃ使わんでもええで、オレはカフェインをあまり摂取しないし、コーヒーはオーガニックのヤツしか飲まん」


二軍監督の田中にも同じような事を言われた。


「ほぅ、カフェインは摂らないのか」


「カフェインだけやない、酒もタバコもやらんし、食生活にも気をつけとる。
一年でも長く現役でいたいからな」


天海は健康オタクでもあり、身体に良いとされる物なら何でも取り込む。


「随分とマジメだな」


「そら、そうよ。何せ、プロは身体が資本や。お陰さんで、ケガというケガはした事あらへん」



「で、相手にケガさせるのはどうなんだ?」


本題に移った。


「どうって…あれはアクシデントや!確かにぶつけてやろか、と思う相手は大勢いる!そやけどな、ホンマにぶつけるなんて事出来るか?」


「もう一度聞くが、ワザとでは無いというんだな?」


低い声で確認した。


「何や、アンタも疑ってるのかい?アンタ、ピッチャーやったろ?ピッチャーやったら、あれがワザとかそうじゃないかぐらい分かるやろ!」


天海が声を荒らげる。


「やろうと思えば出来る…か。まぁ、いずれ分かる事だ。
もういいぞ、帰って」


「話しはそれだけか?」


「そうだ」


天海は立ち上がり、監督室を出た。



「シロでもなく、クロでもなく、グレーか」

鈴木監督はそう呟くと、ポケットからタバコを取り出し火をつけた。



天海は駐車場に停めてあった車に乗り込むと、ハンドルを切った。


球場の外にはたくさんの報道陣が詰め掛けている。


天海の車を見ると、一斉に群がりシャッターを焚く。


「眩しいな!目悪くなるやろ、止めぇや!」


窓を開けて大声で叫んだ。


「天海さん、監督と何を話したんですか?」


「天海さん、あれは偶然ですか?」


「天海さん、天海さんは何の処分も無いんですか?」

矢継ぎ早に質問が飛び交う。


「あー、もううるさいなぁ!ええか、オレは当てようと思って投げた事は一度も無い!オレの試合観てみれば分かるけど、デッドボールは他のピッチャーよりも少ないで」


天海は四球を出しても死球は出さない。

万が一、当ててしまい乱闘になった場合を想定して死球だけは出すまいと決めている。

乱闘に巻き込まれ、ケガでもしたらそれこそ選手生命に関わる。

天海は一言だけ言うと、再び車を走らせた。


「ったく…何が翔田や、腹立つ。
でもまぁ、これでキングダムは脱落やな」

フッ、と笑みを浮かべ球場を後にした。



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