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オールスターゲーム

兄弟対決2

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真咲は結城弟を苦手にしている。

過去の対戦成績は35打数19安打うち、ホームランが2本。

5割以上の打率でカモにされている。


「でもまぁ、長打は無いだろうからな」

ノーワインドアップからテイクバックの小さいモーションで第一球を投げた。

回転の良い134kmのストレートがインコース低めへ。


すると、結城弟は左足を上げタイミングを合わせバットを振り抜いた。


カァーン!という音が響く。


青空に白球が舞い上がり左中間へ伸びる。

結城弟は脚力を生かし一塁を蹴った。



レフト中山、センター唐澤が懸命に追うが、打球は美しい放物線を描いてスタンドに向かっている。

唐澤がフェンスギリギリでジャンプした。

だが、打球は僅か数cm上を行きスタンド最前列に入った。


「おい、マジかよ…」


「アハッ…入った」

第4号のソロホームランは何とプレイボールホームラン。



「アチャー、もう1点かよ!」


「長打は無いと油断したんでしょうかね」


櫻井の読み通り、真咲は打たれても単打、長打は無いだろうという、不用意な一球だった。



(ツカサ、いきなりホームランとは…それにしても、真咲さんは初球から失投なんて)


結城兄がマウンドに駆け寄る。


「真咲さん、打たれてしまったものは仕方ない…ですが、今のは失投です!気を引き締めて下さい」


「失投なもんかよ!お前の弟はコースを読んでいたんだよ。あれは完全に弟の勝ちだ」


真咲に打たれたショックは無い。

むしろ、サバサバしている。


「とにかく、油断は禁物です。この後抑えましょう」


「おぅ、しっかり守ってくれよ!」


ポーンとグラブでタッチすると守備についた。



「さて、完封は無くなったから完投目指すか」


左腕をグルグルと回した。


【2番レフト清水 背番号0】

2番バッターの清水が右打席に入った。


(いきなりホームラン打たれたから動揺してるだろう。ここは一気に攻めよう)


グリップを上にして肩口でバットを構える。


「こっから先は飛ばすぜ」


鋭い目付きで不敵に笑う。


その清水への初球はアウトコース低めギリギリに決まる125kmのストレート。


「ストライク!」


先程より10km近く遅いストレートだが、決して棒球ではない。


テンポ良く二球目を投げた。


今度は更に遅い91kmのスローカーブ。


清水はバットが出ない。


「ストライクツー!」


「クソ、ちっとも動揺してねぇ!」


むしろ動揺してるのは清水の方だ。


「これで三振獲るぜ」


ムチのしなる左腕から三球目を投げた。


速いストレートがインコース低めへ。


清水は全く手が出ない。


「ストライクアウト!」


142kmのクロスファイヤーボールで一度もバットを振らずに三球三振。


「あ~、やられた…」

清水は天を仰いで悔しがる。


「先ずはアウト一つ」


一塁側に目をやると、結城兄はこちらを見て頷いた。



【3番サード佐藤 背番号8】


レボリューションズ右の主砲、佐藤がブンブンと豪快な素振りを数回して右打席に入る。


長打力は高いが早打ちのせいか、選球眼も良くなく三振も多い。

今年はホームラン21本を打っているが、打率は246出塁率は306とかなり低い。


「こういうタイプの方が扱いやすい」


大きく構えて威圧感を出そうとしているが、真咲には通用しない。


佐藤への初球は116kmの縦に割れるカーブ。


思い切って初球からフルスイングしたが、全く当たらず。

「ストライク!」


しかも、勢い余ってしりもちをついた。


「あ~、ったくタイミングが合わねぇ!」


打席で感情を露にする。


「あれじゃ打てないだろ」


榊がベンチの中で腕組みをしている。


「カッカしたら真咲くんの思うツボですよ」


「だよな、ヒロト。アイツを打つなら、冷静にならないと」


真咲はマウンドで長い腕をブラブラとさせている。


サインに頷き、二球目を投げた。


今度は真ん中低めのコース。

佐藤は初球と同じフルスイング。

しかし、ボールはベース手前でストーンと落ちた。


「ストライクツー!」


落差の大きなフォークで早くもツーストライクと追い込んだ。


フフフ、とマウンド上で笑みを浮かべる。

今度は真咲がサインを出し、三球目を投げた。


一転して速球がインローへ。

裏をかかれた佐藤はバットが出ず。

143kmのストレートがズバン!とミットを響かせた。


「ストライクアウト!」


これで二者連続三球三振。

あっという間にツーアウトを取った。


真咲は続く4番のロドリゲスを初球、二球目と遅いストレートでカウントを稼ぎ、四球目のスローカーブでセカンドゴロに仕留めた。


1回の表、レボリューションズは結城弟のプレイボールホームランで1点先制した。




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