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ワガママエースの過去
少年時代7
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「おい、コラ天海!何や、これは!」
ロッカールームで先輩野手がスポーツ紙を突きつけた。
「なになに…アイツらのせいで勝ち星が遠のく…はぁ~、こんな事が記事になるんか」
「ホンマにこんな事言うたんか?」
「言うたかなぁ…何せ、言った事いちいち覚えてへんし」
先輩野手は声を荒らげる。
「お前、ルーキーの分際で何エラそうな事言ってんねん!誰のお陰で初勝利になれたと思ってんねん!」
「誰て…そら、オレに決まっとるがな」
「ふざけやがって…新人のクセに口の聞き方も知らないとは、生意気なヤツや!」
口の聞き方も知らない。
今まで何回、いや何千回と耳にした言葉だ。
「グラウンドに立てば、先輩後輩関係あらへん!優劣決めるのはココちゃいまっか」
やんちゃ坊主みたいな顔で右腕を指す。
「ほぉ、そんだけ自信があるなら勝負せい!」
「ええで」
スタジアムで一打席勝負をした。
「ええか、オレが三振したらお前の勝ち!オレがフェアグラウンドに打てばオレの勝ちや!」
「何でもええで…どうせ、オレの球にはカスリもせえへんやろから」
マウンド上で欠伸をする。
「この…ふざけたマネしやがって!」
打席で鼻息荒くバットを構える。
「ホナ、行くで」
初球、胸元を突くストレート。
「オット、外れたか」
「インハイを攻めるとは、いい度胸してんな」
「そら、どうも」
二球目はアウトローにストレート。
バッターは手が出ず。
「これでワンボール、ワンストライや」
「ええから、サッサと投げんかい!」
バッターはカッカしている。
「ほな、三球目っと」
ノーワインドアップからの三球目はフワッとしたスローカーブ。
「ぐっ…」
タイミングを外され、ボールはド真ん中へ。
「これでツーストライクや」
「やかましいっ!まだ勝負はついてへんわ!」
ベテランがルーキーに翻弄されている。
「これで終いや!」
四球目は全力で投げた。
グオォと唸りを上げた速球はインコース低目ギリギリに決まった。
「速っ…」
バットを出すが振り遅れた。
「そやから言うたやん、オレの勝ちやって」
さも当然という表情でマウンドを降りた。
「くっそォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
ベテラン野手はバットを叩きつけると、パキッと折れた。
プロに入っても、少年は高校の時と変わらずエラーをする野手に向かって罵声を浴びせる。
「この、ヘタクソ!何年やっとるんじゃ!」
「アカンアカン!あんなヤツ、サッサと替えてぇな!」
「どこ見て投げてるねん、このドアホ!」
周りは自分よりも年上の選手ばかりだが、遠慮無しに詰る。
「おい、新人!テメー、さっきから何生意気な事言うとんじゃ!」
「新人がどないした!アンタら、その新人の足引っ張るマネしとるやないか!」
「ナメた口叩きやがって!」
「パイセーン、ほんなら勝負しましょか?」
事ある毎に野手と揉め、勝負をして力で黙らせた。
ルーキーながら既に大物の雰囲気を漂わせ、チームでは王様の様に振る舞う。
少年が入団した年の監督は高崎 正志(たかさきしょうじ)という、初老の人物で現役時代の大半はドルフィンズの二軍で過ごした。
選手としての実績は無いが、堅実な采配でリーグ制覇を成し遂げた。
その高崎監督にも平気で毒づく。
「アンタ、現役の時どんだけ結果残したんや?所詮は二軍の落ちこぼれやないか!」
「キサマ、図に乗るのもいい加減にしろよ!」
「ハイハイ、分かった分かった!ええから、早よベンチに戻れや!」
マウンド上で追い返す事もしばしば。
生意気だが、実力はルーキーながらトップクラス。
ルーキーイヤーに13勝6敗、防御率2.53 奪三振は237とトップ。
文句無しにアポロリーグの新人王に輝いた。
二年目は早くも開幕投手を任され、完封勝利を飾る。
この年、ドルフィンズは怒涛の快進撃を見せつけ、二位の千葉ヤンキースに6.5ゲーム差を付けて優勝。
チャンピオンズカップではこちらもスーパールーキー二刀流の翔田率いる東京キングダムと対戦。
4勝2敗で見事日本一に輝いた。
少年は初戦と第六戦に登板、完封勝利を含む2勝を挙げMVPに輝いた。
シーズンでは21勝4敗 防御率1.64 289奪三振に加え、最高勝率、最多完封という偉業を成し遂げグレイテストピッチ賞とMVPを獲得。
シーズンとチャンピオンズカップの同時MVPは史上5人目。
早くも年俸は一億を越えた。
こうなると、誰も彼を止める者はいない。
良い成績を挙げる度に傍若無人に振る舞い、誰の言う事も聞かない。
【監督を監督している】とまで言われるようになった。
こうして、少年は球界を代表するエースと称されるようになった。
暴君として知られるが、家族想いで兄や姉が結婚するまで援助して、今では世帯を持った兄妹の為に豪邸をプレゼントする心優しい一面もある。
(何がなんでも、家族を養わなアカン)
この一念だけで周囲との軋轢を生じながらも、夢を叶えた少年はこの先どんな行動をとるのか。
ロッカールームで先輩野手がスポーツ紙を突きつけた。
「なになに…アイツらのせいで勝ち星が遠のく…はぁ~、こんな事が記事になるんか」
「ホンマにこんな事言うたんか?」
「言うたかなぁ…何せ、言った事いちいち覚えてへんし」
先輩野手は声を荒らげる。
「お前、ルーキーの分際で何エラそうな事言ってんねん!誰のお陰で初勝利になれたと思ってんねん!」
「誰て…そら、オレに決まっとるがな」
「ふざけやがって…新人のクセに口の聞き方も知らないとは、生意気なヤツや!」
口の聞き方も知らない。
今まで何回、いや何千回と耳にした言葉だ。
「グラウンドに立てば、先輩後輩関係あらへん!優劣決めるのはココちゃいまっか」
やんちゃ坊主みたいな顔で右腕を指す。
「ほぉ、そんだけ自信があるなら勝負せい!」
「ええで」
スタジアムで一打席勝負をした。
「ええか、オレが三振したらお前の勝ち!オレがフェアグラウンドに打てばオレの勝ちや!」
「何でもええで…どうせ、オレの球にはカスリもせえへんやろから」
マウンド上で欠伸をする。
「この…ふざけたマネしやがって!」
打席で鼻息荒くバットを構える。
「ホナ、行くで」
初球、胸元を突くストレート。
「オット、外れたか」
「インハイを攻めるとは、いい度胸してんな」
「そら、どうも」
二球目はアウトローにストレート。
バッターは手が出ず。
「これでワンボール、ワンストライや」
「ええから、サッサと投げんかい!」
バッターはカッカしている。
「ほな、三球目っと」
ノーワインドアップからの三球目はフワッとしたスローカーブ。
「ぐっ…」
タイミングを外され、ボールはド真ん中へ。
「これでツーストライクや」
「やかましいっ!まだ勝負はついてへんわ!」
ベテランがルーキーに翻弄されている。
「これで終いや!」
四球目は全力で投げた。
グオォと唸りを上げた速球はインコース低目ギリギリに決まった。
「速っ…」
バットを出すが振り遅れた。
「そやから言うたやん、オレの勝ちやって」
さも当然という表情でマウンドを降りた。
「くっそォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
ベテラン野手はバットを叩きつけると、パキッと折れた。
プロに入っても、少年は高校の時と変わらずエラーをする野手に向かって罵声を浴びせる。
「この、ヘタクソ!何年やっとるんじゃ!」
「アカンアカン!あんなヤツ、サッサと替えてぇな!」
「どこ見て投げてるねん、このドアホ!」
周りは自分よりも年上の選手ばかりだが、遠慮無しに詰る。
「おい、新人!テメー、さっきから何生意気な事言うとんじゃ!」
「新人がどないした!アンタら、その新人の足引っ張るマネしとるやないか!」
「ナメた口叩きやがって!」
「パイセーン、ほんなら勝負しましょか?」
事ある毎に野手と揉め、勝負をして力で黙らせた。
ルーキーながら既に大物の雰囲気を漂わせ、チームでは王様の様に振る舞う。
少年が入団した年の監督は高崎 正志(たかさきしょうじ)という、初老の人物で現役時代の大半はドルフィンズの二軍で過ごした。
選手としての実績は無いが、堅実な采配でリーグ制覇を成し遂げた。
その高崎監督にも平気で毒づく。
「アンタ、現役の時どんだけ結果残したんや?所詮は二軍の落ちこぼれやないか!」
「キサマ、図に乗るのもいい加減にしろよ!」
「ハイハイ、分かった分かった!ええから、早よベンチに戻れや!」
マウンド上で追い返す事もしばしば。
生意気だが、実力はルーキーながらトップクラス。
ルーキーイヤーに13勝6敗、防御率2.53 奪三振は237とトップ。
文句無しにアポロリーグの新人王に輝いた。
二年目は早くも開幕投手を任され、完封勝利を飾る。
この年、ドルフィンズは怒涛の快進撃を見せつけ、二位の千葉ヤンキースに6.5ゲーム差を付けて優勝。
チャンピオンズカップではこちらもスーパールーキー二刀流の翔田率いる東京キングダムと対戦。
4勝2敗で見事日本一に輝いた。
少年は初戦と第六戦に登板、完封勝利を含む2勝を挙げMVPに輝いた。
シーズンでは21勝4敗 防御率1.64 289奪三振に加え、最高勝率、最多完封という偉業を成し遂げグレイテストピッチ賞とMVPを獲得。
シーズンとチャンピオンズカップの同時MVPは史上5人目。
早くも年俸は一億を越えた。
こうなると、誰も彼を止める者はいない。
良い成績を挙げる度に傍若無人に振る舞い、誰の言う事も聞かない。
【監督を監督している】とまで言われるようになった。
こうして、少年は球界を代表するエースと称されるようになった。
暴君として知られるが、家族想いで兄や姉が結婚するまで援助して、今では世帯を持った兄妹の為に豪邸をプレゼントする心優しい一面もある。
(何がなんでも、家族を養わなアカン)
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