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天海の逆襲

確実なバッティング

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丸太ん棒の様な太い腕に分厚い胸板。


180cmと決して高くは無いが、ビルドアップされた肉体を誇る比嘉が、ブンブンと豪快な素振りをして打席に入る。


バットの先端をピッチャーに向ける独特の構えで迎え撃つ。


前回の対戦では2本ホームランを打たれている中邑は警戒する。


(この構えでよく打てるよな、ホントに)


毒島がマスク越しから変則フォームを観察する。

打席の後ろでベース寄りに立つ。

(インコースを攻めてみるか)


毒島はサインを出した。


(いや、そこは危険だ)


中邑は首を振る。


(ダメか…ならばここはどうだ)

別のサインを出した。


中邑は頷き、初球を投げた。


アウトコース低目へズバっとストレートが決まる。


「ストライク!」


159kmのストレートに場内はどよめく。


(先ずはワンストライク…と)

次はどう攻めるか。


サインを出す。


頷きノーワインドアップから二球目を投げた。


外角に逃げる高速スライダー。


比嘉は見送った。


「ボール!」


(選球眼も良いな)


リードに苦労する。


(よし、インコースに投げてみよう)


毒島はインコースを要求した。


中邑が三球目を投げた。


インコースへツーシームが。


比嘉は鋭いスイングでボールを捕らえる。


「ゲッ…」

火の出るようなライナーがサード線へ。


来栖が横っ飛びでグラブを出すが、打球は速くレフト線ギリギリに落ちた。


「フェア!」


比嘉は一塁を蹴って二塁へ。


レフトの中山がボールを捕って二塁へ。


セカンド鬼束が捕ってタッチする。


「セーフ!」

僅かに比嘉の足が早かった。


「何だ、あの速いスイングは」


【ライトニング・クイック・バット】と呼ばれ、打球速度は球界でもトップクラスだ。


「あの構えから速いスイングをするんだから、スゲーよな」


「インコースをものともしないで、振り抜くんだから大したものですよ」

比嘉に死角は無いのか。



ツーアウトからランナーが出塁した。


【4番 指名打者ボーン 背番号49】


巨漢のボーンがノッシノッシと打席に向かう。


見かけに似合わず、パワー一辺倒ではなく柔軟なバッティングで広角に打ち分ける。


「初回からピンチですね」


「とは言え、いきなり敬遠とはいかないだろ」


榊の言う通りだ。


「中邑、まだ初回だからここは勝負だ」


「ええ、そのつもりです」


エースが初回で敬遠なんて有り得ない。



左打席に入り、2mの巨体が更に大きく見える。


「さてさて…どう攻めるか」


毒島はボーンの立ち位置を観察した。


比嘉と同じく打席の後ろでベースからやや離れて立っている。


(このリーチだと外も届くよな)


比嘉と違い、クセの無いシンプルなフォームはどのコースでも打たれる様な雰囲気を醸し出している。


(よし、これで様子を見よう)


毒島のサインに頷き、セットポジションの体勢に入る。

サードランナー比嘉のリードはそれ程大きくない。


中邑が初球を投げた。


低目へストレートが決まる。


「ストライク!」


初球は見送った。


(次はこれでどうだ)


毒島のサインに頷く。


セットポジションの体勢から素早く三塁へ牽制。


「セーフ!」

ボークになりかねない様な動作だが、ギリギリセーフだ。


再びセットポジションの体勢から二球目を投げた。


インコースへ食い込むスライダー。

ボーンは途中でスイングを止めた。


「球審!」


毒島が三塁球審を指す。


「セーフ」


スイングはしてないみたいだ。


(これに手を出さないのか…となると、ここはどうだ)


サインを出す。

中邑が頷き三球目を投げた。


今度はアウトコースへツーシーム。


ボーンは滑らかなスイングでボールを逆らわずに捕らえた。


ガツっという音と共に、球足の速い打球はあっという間に三遊間を抜けてレフトへ。


比嘉が悠々とベースを踏んでマシンガンズが1点を先制。


「この3、4番コンビは派手さは無いけど地味に恐いよな」


「こういうのが一番効くんですよね」


他のクリーンナップと違い、長打というよりは確実なバッティングでランナーを返す。


これがマシンガンズ躍進のカギでもある。



1点を失ったが、続く5番オニールをライトフライで打ち取り1回の裏は終了した。
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