40 / 125
何がなんでも優勝
お喋りキャッチャー
しおりを挟む
【2番センター唐澤 背番号1】
ネクストバッターズサークルで屈伸をしてからバッターボックスに向かう。
白地にピンストライプのユニフォーム、膝までソックスを上げたオールドスタイルが良く似合う。
「おぉ、出たなスラッガー!お手柔らかに頼むで」
「…相変わらずよく喋りますね」
冷ややかな視線を送った。
「いや~、かなわんなぁ!カンニンしてや!何せ、話好きやさかい、どうしても喋ってしまうねん」
(なるべく無視しよう)
打席で集中力を高める。
「さて、天才バッターにはどんな球を投げたらいいのやら」
サインを出す。
安川が初球を投げた。
インコースやや低目にツーシームが。
「ボール」
これは僅かに外れた。
「ほぅ、よう見たな。さすが天才バッターや」
(うるさいな、ったく)
悪気が無いだけに、余計タチが悪い。
「そやけど、こんなバッター相手に何を投げればいいのか、ホンマに困ってしまうわ」
「…」
相手にしないつもりでいるが、気が散る。
「これやったら打たれるかなぁ」
そう言いつつ、サインを出す。
安川が二球目を投げた。
アウトコース低目のシュート。
「ボール!」
これでツーボール。
「いや、かなわんなぁ!あれを見送られては、もう投げる球がないがな!」
(ウゼェ!)
段々とイライラしてくる。
「さてと…これならどうかな」
サインに頷き、三球目を投げた。
またもやアウトコースへ今度はストレート。
(打ってもファールになる)
唐澤はバットを出さない。
「ストライク!」
「アレを打たないとはさすがやな~」
(何とかならないのか、ホントに)
どう対処するのか。
「何や、オレばっか喋ってるやん!」
(アンタとお喋りするつもりは無いんだよ!)
徐々に表情が険しくなる。
「ほな、行くで」
四球目を投げた。
インコースに食い込むスライダー。
唐澤はバットを合わせた。
ガシッと音がして、三塁側に切れた。
「ファール!」
(キレが良いな)
スライダーに合わせたが、思いのほかキレが良い分打球がファールゾーンへ飛んだ。
「…参ったなぁ、どこ投げればええねん」
(無視だ、無視!)
ダンマリを決め込んだ。
カウントはツーナッシング、五球目を投げた。
(インハイへ直球)
唐澤は見送った。
「ボール!」
「余裕のある見送り方やな。さぁ、どないしようか」
フルカウントからの六球目。
(フォークだ!しかもアウトローへ)
自然に流れるようなスイングでボールを捕らえた。
(クソっ、打ち損じた!)
打球はセンターへ。
しかし定位置でキャッチ。
「アウト!」
フォークの曲がりっぱなを叩いたが、打球は伸びずセンターフライに倒れた。
(…気が散ったせいか、芯で捕える事が出来なかった)
苛立ちを悟られないように、淡々とした表情でベンチに戻った。
「矢幡くんのペースに引き込まれてるな」
バットを両手で持ち、左右に上体を捻った。
【3番ファースト結城 背番号23】
威風堂々と打席に向かう。
「久しぶりだね、矢幡くん」
「ご無沙汰してます。お元気ですか?」
「うん…キミも元気そうだね」
「ええ、元気だけが取り柄ですねん」
「フフフ、相変わらずだね」
余裕の表情で答える。
(うゎ~っ…こりゃまた難儀な相手やな)
矢幡は結城を苦手にしている。
ドジャースとの対戦では、ここぞという場面で結城に打たれているケースが多かった。
(さて、どうするか)
矢幡は過去の対戦データを思い出す。
(よし、先ずはこれでいこう)
サインを出した。
安川が初球を投げた。
フワッとしたスローカーブがインローに。
結城は打つ気配が無い。
「ストライク!」
初球は見送った。
「結城はん、さすがでんなぁ!あの際どいコースを見送るとは」
「フッ…キミも際どいコースへ要求するなんて、さすがだね」
どうやら結城のペースに引き込まれそうな雰囲気だ。
「…参ったな」
いくら何でも、初回でしかもツーアウトという場面で歩かすワケにはいかない。
(これが終盤でランナーがいたら、迷わず歩かせてるわい)
かなり警戒している。
矢幡がサインを出す。
しかし、今度は安川が首を振った。
もう一度サインを出した。
これも首を振る。
(何や、一体)
再度サインを出す。
しかし首を振る。
(何しとんのじゃ、ボケ!ええから、サイン通りに投げんかい!)
またもや首を振る。
(ドアホ!何してんねん、早よ投げんかい!)
これもダメ。
すると今度は安川がサインを出した。
(はぁ?何や、それ!)
サインが決まったらしい。
二球目を投げた。
インサイドに鋭く曲がるスライダー。
やや振り遅れたせいか、打球はフラフラと三塁側ファールゾーンへ。
サードの陣内が懸命に追う。
フェンスギリギリでキャッチした。
「アウト!」
「はぁ、助かったゎ…」
安川が出したサインは矢幡が一番最初に出したサインだった。
「このアホ!何度も首を振るな!」
ベンチに戻る際、安川を叱責した。
「何言うてますねん。アレで相手が迷ったんでっせ」
「今はそれで打ち取ったかもしれへんが、次の打席は通用せんで!」
「その時はまた考えればええやないですか」
飄々とした表情でベンチに座る。
「フフ…やるな、あのピッチャー」
笑みを浮かべ、ファーストミットを手に守備についた。
1回の表、スカイウォーカーズは三者凡退で終了した。
ネクストバッターズサークルで屈伸をしてからバッターボックスに向かう。
白地にピンストライプのユニフォーム、膝までソックスを上げたオールドスタイルが良く似合う。
「おぉ、出たなスラッガー!お手柔らかに頼むで」
「…相変わらずよく喋りますね」
冷ややかな視線を送った。
「いや~、かなわんなぁ!カンニンしてや!何せ、話好きやさかい、どうしても喋ってしまうねん」
(なるべく無視しよう)
打席で集中力を高める。
「さて、天才バッターにはどんな球を投げたらいいのやら」
サインを出す。
安川が初球を投げた。
インコースやや低目にツーシームが。
「ボール」
これは僅かに外れた。
「ほぅ、よう見たな。さすが天才バッターや」
(うるさいな、ったく)
悪気が無いだけに、余計タチが悪い。
「そやけど、こんなバッター相手に何を投げればいいのか、ホンマに困ってしまうわ」
「…」
相手にしないつもりでいるが、気が散る。
「これやったら打たれるかなぁ」
そう言いつつ、サインを出す。
安川が二球目を投げた。
アウトコース低目のシュート。
「ボール!」
これでツーボール。
「いや、かなわんなぁ!あれを見送られては、もう投げる球がないがな!」
(ウゼェ!)
段々とイライラしてくる。
「さてと…これならどうかな」
サインに頷き、三球目を投げた。
またもやアウトコースへ今度はストレート。
(打ってもファールになる)
唐澤はバットを出さない。
「ストライク!」
「アレを打たないとはさすがやな~」
(何とかならないのか、ホントに)
どう対処するのか。
「何や、オレばっか喋ってるやん!」
(アンタとお喋りするつもりは無いんだよ!)
徐々に表情が険しくなる。
「ほな、行くで」
四球目を投げた。
インコースに食い込むスライダー。
唐澤はバットを合わせた。
ガシッと音がして、三塁側に切れた。
「ファール!」
(キレが良いな)
スライダーに合わせたが、思いのほかキレが良い分打球がファールゾーンへ飛んだ。
「…参ったなぁ、どこ投げればええねん」
(無視だ、無視!)
ダンマリを決め込んだ。
カウントはツーナッシング、五球目を投げた。
(インハイへ直球)
唐澤は見送った。
「ボール!」
「余裕のある見送り方やな。さぁ、どないしようか」
フルカウントからの六球目。
(フォークだ!しかもアウトローへ)
自然に流れるようなスイングでボールを捕らえた。
(クソっ、打ち損じた!)
打球はセンターへ。
しかし定位置でキャッチ。
「アウト!」
フォークの曲がりっぱなを叩いたが、打球は伸びずセンターフライに倒れた。
(…気が散ったせいか、芯で捕える事が出来なかった)
苛立ちを悟られないように、淡々とした表情でベンチに戻った。
「矢幡くんのペースに引き込まれてるな」
バットを両手で持ち、左右に上体を捻った。
【3番ファースト結城 背番号23】
威風堂々と打席に向かう。
「久しぶりだね、矢幡くん」
「ご無沙汰してます。お元気ですか?」
「うん…キミも元気そうだね」
「ええ、元気だけが取り柄ですねん」
「フフフ、相変わらずだね」
余裕の表情で答える。
(うゎ~っ…こりゃまた難儀な相手やな)
矢幡は結城を苦手にしている。
ドジャースとの対戦では、ここぞという場面で結城に打たれているケースが多かった。
(さて、どうするか)
矢幡は過去の対戦データを思い出す。
(よし、先ずはこれでいこう)
サインを出した。
安川が初球を投げた。
フワッとしたスローカーブがインローに。
結城は打つ気配が無い。
「ストライク!」
初球は見送った。
「結城はん、さすがでんなぁ!あの際どいコースを見送るとは」
「フッ…キミも際どいコースへ要求するなんて、さすがだね」
どうやら結城のペースに引き込まれそうな雰囲気だ。
「…参ったな」
いくら何でも、初回でしかもツーアウトという場面で歩かすワケにはいかない。
(これが終盤でランナーがいたら、迷わず歩かせてるわい)
かなり警戒している。
矢幡がサインを出す。
しかし、今度は安川が首を振った。
もう一度サインを出した。
これも首を振る。
(何や、一体)
再度サインを出す。
しかし首を振る。
(何しとんのじゃ、ボケ!ええから、サイン通りに投げんかい!)
またもや首を振る。
(ドアホ!何してんねん、早よ投げんかい!)
これもダメ。
すると今度は安川がサインを出した。
(はぁ?何や、それ!)
サインが決まったらしい。
二球目を投げた。
インサイドに鋭く曲がるスライダー。
やや振り遅れたせいか、打球はフラフラと三塁側ファールゾーンへ。
サードの陣内が懸命に追う。
フェンスギリギリでキャッチした。
「アウト!」
「はぁ、助かったゎ…」
安川が出したサインは矢幡が一番最初に出したサインだった。
「このアホ!何度も首を振るな!」
ベンチに戻る際、安川を叱責した。
「何言うてますねん。アレで相手が迷ったんでっせ」
「今はそれで打ち取ったかもしれへんが、次の打席は通用せんで!」
「その時はまた考えればええやないですか」
飄々とした表情でベンチに座る。
「フフ…やるな、あのピッチャー」
笑みを浮かべ、ファーストミットを手に守備についた。
1回の表、スカイウォーカーズは三者凡退で終了した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる