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中盤

流浪の生活

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翌日、天海は再びニックスフィールドに現れた。


天海の席の周りには沢山の記者が集まる。


「天海選手、この球場に来たという事はニックスと何か関係があるんですか?」


「もしかして、次の球団はニックスですか?」


「今は何をしているのですか?」


矢継ぎ早に質問が飛ぶ。


天海は目深にベースボールキャップを被り、腕を組んでグランドを眺めていた。


「天海さん、どの球団が希望ですか?」



天海が口を開いた。


「何やねん、さっきからギャーギャーうるさい。オレはもう、野球選手じゃあらへん。どこのチームに復帰とか、そんなん言うてる場合ちゃう。

ただ今日は試合を観に来ただけや」


静かな口調で答えた。


「では、今現在は何をしているのですか?」


「何もしてへん。見ての通りや。ロクに仕事も就かんと、こうやってブラブラしてるだけや」


「でも、天海さんはホントはもう一度野球をやりたいのではないですか?」


「野球か…やりたくないと言えばウソになるかもしれないけど、今は何も考えたくないんや。
そやから、ここでの取材は勘弁してくれや」


「では最後に、天海さんがもし復帰するならどのチームが希望ですか?」


天海は無言でグランドを指さした。


「それは、武蔵野スカイウォーカーズという事でしょうか?」


「まぁ…もし戻れるなら、ああいうチームがいいかなぁと思ってるだけや…
ほな、これで終わりにするで。
オレはこれから試合を観戦するんや。
分かったら、はよ戻れ」


記者達を追い払った。



いつもの様なビックマウスを連発することなく、淡々とコメントを出していた。


怖いもの知らずでどんな相手でも向かっていく強気な性格だったが、今は少し痩せて青白い顔をしていた。



そんな天海がスカイウォーカーズのチームを口にした。




今日はニックスとの二戦目で、スカイウォーカーズの先発は左のデニス・サンピエール。

対するニックスはこちらも左のシャムロック。


どちらも外国人で共に150km後半の球速で三振を獲るスタイルだ。



スカイウォーカーズ、ニックス両チームにスタメンの変更は無く、昨日と同じオーダーで挑む。


空が徐々に薄暗くなった午後6時、主審の手が上がってプレイボール。


トップバッターの筧が右打席に。


シャムロックの足が上がって第一球を投げた。


ゴオオォ、という唸りが聞こえてきそうな速い球がズドーン!とミットに。


「ストライク!」


のっけから155kmをマーク。


スタンドが湧き上がる。


観客のほとんどがニックスファンだ。


テンポ良く二球目を投げた。


得意のスラーブ。しかしこれは僅かに外れてボール。


三球目は外に157kmのストレート。


「ストライク!」

これがコーナーギリギリに決まりツーストライクと追い込んだ。


高々と足を上げ、四球目を投げた。


真ん中やや低目からスっと沈むチェンジアップ。

これを筧が振り抜き、サード強襲の内野安打。


早くも塁に出た。


2番の唐澤が登場する。


不動の構えでシャムロックを鋭い視線で捕らえる。


そのシャムロックの初球はストレート。


グイーン、と一直線に伸びてインコースギリギリに決まった。


「ストライク!」


筧はリードを大きくとる。


すかさず一塁へ牽制。


「セーフ」


シャムロック、ランナーが気になるのか執拗に牽制を繰り返す。


これだけ牽制球を投げられると筧は盗塁する気にならない。



やや間があって二球目を投げた。


外角に流れる138kmのスラーブ。


「ボール」


唐澤はよく見た。


選球眼は一級品だ。


するとまた、シャムロックが一塁に牽制を投げる。


二度、三度と繰り返した後、三球目を投げた。


今度は鋭く変化するスライダー。


これは唐澤がカットした。

打球は左に切れてファール。


四球目は外角一杯に153kmのストレート。


(これだ)


唐澤は流れる様なフォームから素早いスイングでやや強引に引っ張った。


打球はライトへ。


懸命にバックするが、弾道はグランドを通り越しスタンドイン。

唐澤が連夜の14号ツーランで早くも2点先制。






「フッ…フフフ、絶好調やの~スカイウォーカーズは…まぁ、オレがいずれこのチームをぶっ潰す」


スタンドでは天海がギラギラした目付きで呟いた。


これは何かありそうだ。
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