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中盤

2回の攻防

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1番、2番を三球三振で討ち取りツーアウト。

打席にはスイッチヒッターの3番ショート武藤。


鬼束がチームを去った後、チームの顔としてニックスを牽引。


今年は337という高打率に加え、23個の盗塁を成功させている。


その武藤に対して初球を投げた。


ズバーン!と勢いよくミットに吸い込まれた。


「ボール」


134kmのストレートだが、キレがあるので速く感じる。


「ほー、よく見たな…さすが3番バッター」


ボール1個分外に外れていた。


二球目、これもストレート。


「さっきと同じコース…」

武藤はフルスイングした。


だが振り遅れて打球はバックネットへ。


「ファール!」


球速は129km、さっきよりも遅いが腕の振りで速く見せる。


「つくづくピッチングは工夫次第だという事を思い知らせるよな~」



この投球術をモノにするまでどのくらいの年月が掛かったのだろうか。


テイクバックを小さく、ボールの握りを見えないようなモーションから三球目を投げた。


またもやストレート、しかも同じコース。


「まただっ」


武藤はバットを合わせるが、やっぱり振り遅れる。


打球は一塁側スタンドに入る。


「ファール!」


今度は138kmのストレート。


(次こそ遅い球だろう)


武藤はヤマを張った。


「フッ…丸分かりだよ、考えが」


今度は早いモーションから四球目を投げた。


ビュッというストレートが伸びて、インコース低めに決まる。

「ストライクアウト!」



「しまった…」


全球ストレートで見逃しの三振。


1回の裏、ニックスは三者三振で攻撃を終了した。





【5番サード毒島 背番号6】

2回の表、スカイウォーカーズの攻撃は毒島から。


リーグトップの23本のホームランを打ち、先日のマシンガンズ戦では武蔵野ボールパークで推定150mの場外ホームランを放った。


その毒島に対し初球は148kmのストレート。


真ん中高めにズバッと決まった。


「ストライク!」


ニックスフィールドの上空は闇に覆われ、雲の隙間から月が顔を覗かせている。



「うーん、可もなく不可もなく…このピッチャーを表現するにはこの言葉が合うんですが、ウチの打線も今の状態は可もなく不可もなくって感じですね」


櫻井が分析する。


いくら結城や鬼束がいても、毎日打線が爆発するとは限らない。


今年のスカイウォーカーズは投打のバランスが良く、優勝候補に挙げる評論家も少なくない。


とは言え、長いシーズンを戦い抜くせいか、不調な時もある。


その不調をどうやって打ち消すか。



「不調な時は何やってもダメっすよ。まぁ、流れに身を任せましょう」


畑中が能天気に言う。


「それはそうなんだけど…それでも、どうやって勝つか…それを考えないと…ね!」


櫻井に秘策はあるのだろうか。


萩原の二球目は外角のボール球になるスライダー。


「ボール」


カウントはワンボール、ワンストライク。


担ぐようにしてバットを持ち、虎視眈々とボールを捕らえる。


三球目は外角低めにストレート。


毒島がバットを出すが、ライト線に切れるファール。


四球目、今度はインコース低目へ。


際どいコースだが、毒島はフルスイング。


「あら…」


「ストライクアウト!」

バットは空を切り、空振りの三振。


得意のフォークボールで先頭バッターを打ち取る。



【6番レフト中山 背番号7】


「どうだった?」


中山が聞く。


「スゲー落ちてきた…あれは打てないかも」

毒島はお手上げ状態だ。


「マジかよ」


中山が打席に入った。


長打ならば毒島の方が上だが、ミート力に関しては中山の方が上だ。


腰を落とし、ややオープンスタンス気味にバットを構える。


その初球は外ギリギリに入るスライダー。


「ストライク」

先ずはワンストライク。


(フォークもだけど、スライダーもかなり良いな)


バットを少し短く持った。


二球目、今度はストレート。

バットを出すが、右に切れる。

「ファール!」


あっという間にツーストライクに追い込んだ。


三球目は外へ。


(フォークか?)


見送った。


「ストライクアウト!」


「クソォ!」


何と中山、見逃しの三球三振。


フォークだと思って見逃したが、萩原は裏をかいてストレートを投げた。


「追い込まれるとフォークだと思って見逃したけど…」


「ハッハッハッハ!仕方ない、相手が一枚上だっただけだ」

すごすごとベンチに引き上げた。


【7番指名打者畑中 背番号2】


「さて…と。行ってくるか」


鼻歌交じりでバットを担ぎ、畑中が打席に向かう。


「しかし、スゲーブーイングだな」


スタンドを見渡し打席に入る。


「ストーンと落ちるフォークか…出来れば投げて欲しくないんだが…そうもいかないだろうなぁ」


その割には陽気な口調だ。


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