13 / 125
優勝への道のり
3種類のスライダー
しおりを挟む
マウンド上には新外国人ドウェイン・ルーガーが仁王立ちしている。
197cm、97kgという堂々たる体格。広い肩幅に分厚い胸板。比嘉もかなりビルドアップしているが、ルーガーの方が体格が大きい分、パワフルに感じる。
右腕にはタトゥーが施されている。
その右腕から放つスライダーの切れ味は鋭い。
トップバッターの筧が打席に入る。
「プレイ!」
膝を高々と胸まで上げるモーションで第一球を投げた。
ゴォォと唸りを上げてきそうなストレートが高目に。
ズバーン!と大きい音をたててミットに入った。
「ボール」
少し高かったせいか、判定はボール。
スコアボードには154kmと表示された。
「こりゃスゲー球投げるなぁ、あの外人!」
「速い事は速いんですが、速さよりも球質が重そうですね」
マウンドでせっかちそうな仕草をして二球目を投げた。
今度は緩い変化球。
これも外れてボール。
「あんまり良くないな、コントロールは」
「制球力というより、力で押すタイプなんでしょうね」
三球目は先程より少し速い変化球がインコースへ。
「ストライク!」
カウントはツーボール、ワンストライク。
ルーガーはマウンド上で忙しなく動いている。
「何だ、随分とせっかちだな」
「あれで気持ちを整えてるかもしれませんよ」
そうなのか。
四球目はアウトコースへツーシームが。
筧は振りにいった。
ガシッとバットの先端に当たり、打球は左に切れた。
「ファール!」
「痛ってぇ!」
筧は手をブラブラさせた。
今のファールで手に響いたのだろう。
五球目を投げた。
今度は速い変化球。
しかもインコースへ。
「…っ!」
「ストライクアウト!」
筧がタイミング良くバットを合わせたが、ボールはグン、と鋭く曲がった。
ルーガー得意のスライダーで三振。
「その前の変化球もスライダーなのでは」
「あの緩いカーブみたいな球もか?」
「ええ、軌道はほぼ同じですし速いか遅いかの違いだけで」
櫻井の言うようにスライダーにアクセントを付けているのだろうか。
そして2番唐澤がバッターボックスに入った。
(スライダーが物凄く曲がった…よっぽどスライダーに自信をもってるんだろうな)
ならば、それを打つのみ!とバットを構えた。
ルーガーの初球は真ん中低目の変化球。
唐澤はバットを出すが、ボールは鋭く落ちた。
「ストライク!」
「何だ、今のは」
「縦のスライダーでしょう」
ルーガーはスライダーのバリエーションが豊富みたいだ。
相変わらずマウンド上では忙しなく動いている。
二球目を投げた。
ツーシームがアウトコースへ。
これは平然と見送る。
「ボール!」
キャッチャーに早くよこせ、とジェスチャーしている。
「何つー、せっかちなヤツだ」
「そんなに早く投げたいんですかね」
あまりにもせっかち過ぎて、傍から見たら動きがコミカルで面白い。
膝を高々を上げ、三球目を投げた。
速い球だ。
唐澤はバットを出そうとしたが途中で止めた。
「ボール!」
真ん中やや高目からインコース低目へ鋭く曲がった。
「あれもスライダーか?」
「そうでしょうね。彼は3種類のスライダーを操るみたいですよ」
ルーガーは縦横斜めのスライダーを駆使する。
それに加え、スピードの調整も出来るのでスライダーだけでもかなりの種類になる。
速いスライダー、普通のスライダー、遅いスライダーというように。
「このスライダーを武器にメジャーで二桁勝利を挙げてたワケか」
「手強いですね」
四球目、今度は高目へストレート。
(もらった)
唐澤は鋭くバットを振り抜いた。
(グッ…押されてる…)
スイングが球の威力に押され、レフト方向へフラフラと上がった。
レフト知念が定位置でキャッチ。
これでツーアウト。
「力負けしたね、唐澤くん」
「結城さん…あのピッチャーの球、スゲー重いっすよ」
痺れたのだろうか、手をブラブラしている。
「忠告ありがとう。重い球か…これは強敵だな」
フフっと口元に笑みを浮かべ打席に入った。
昨日は取り乱してしまい、途中交代した結城。
今日は何事もなく無事に試合を終えるのだろうか。
197cm、97kgという堂々たる体格。広い肩幅に分厚い胸板。比嘉もかなりビルドアップしているが、ルーガーの方が体格が大きい分、パワフルに感じる。
右腕にはタトゥーが施されている。
その右腕から放つスライダーの切れ味は鋭い。
トップバッターの筧が打席に入る。
「プレイ!」
膝を高々と胸まで上げるモーションで第一球を投げた。
ゴォォと唸りを上げてきそうなストレートが高目に。
ズバーン!と大きい音をたててミットに入った。
「ボール」
少し高かったせいか、判定はボール。
スコアボードには154kmと表示された。
「こりゃスゲー球投げるなぁ、あの外人!」
「速い事は速いんですが、速さよりも球質が重そうですね」
マウンドでせっかちそうな仕草をして二球目を投げた。
今度は緩い変化球。
これも外れてボール。
「あんまり良くないな、コントロールは」
「制球力というより、力で押すタイプなんでしょうね」
三球目は先程より少し速い変化球がインコースへ。
「ストライク!」
カウントはツーボール、ワンストライク。
ルーガーはマウンド上で忙しなく動いている。
「何だ、随分とせっかちだな」
「あれで気持ちを整えてるかもしれませんよ」
そうなのか。
四球目はアウトコースへツーシームが。
筧は振りにいった。
ガシッとバットの先端に当たり、打球は左に切れた。
「ファール!」
「痛ってぇ!」
筧は手をブラブラさせた。
今のファールで手に響いたのだろう。
五球目を投げた。
今度は速い変化球。
しかもインコースへ。
「…っ!」
「ストライクアウト!」
筧がタイミング良くバットを合わせたが、ボールはグン、と鋭く曲がった。
ルーガー得意のスライダーで三振。
「その前の変化球もスライダーなのでは」
「あの緩いカーブみたいな球もか?」
「ええ、軌道はほぼ同じですし速いか遅いかの違いだけで」
櫻井の言うようにスライダーにアクセントを付けているのだろうか。
そして2番唐澤がバッターボックスに入った。
(スライダーが物凄く曲がった…よっぽどスライダーに自信をもってるんだろうな)
ならば、それを打つのみ!とバットを構えた。
ルーガーの初球は真ん中低目の変化球。
唐澤はバットを出すが、ボールは鋭く落ちた。
「ストライク!」
「何だ、今のは」
「縦のスライダーでしょう」
ルーガーはスライダーのバリエーションが豊富みたいだ。
相変わらずマウンド上では忙しなく動いている。
二球目を投げた。
ツーシームがアウトコースへ。
これは平然と見送る。
「ボール!」
キャッチャーに早くよこせ、とジェスチャーしている。
「何つー、せっかちなヤツだ」
「そんなに早く投げたいんですかね」
あまりにもせっかち過ぎて、傍から見たら動きがコミカルで面白い。
膝を高々を上げ、三球目を投げた。
速い球だ。
唐澤はバットを出そうとしたが途中で止めた。
「ボール!」
真ん中やや高目からインコース低目へ鋭く曲がった。
「あれもスライダーか?」
「そうでしょうね。彼は3種類のスライダーを操るみたいですよ」
ルーガーは縦横斜めのスライダーを駆使する。
それに加え、スピードの調整も出来るのでスライダーだけでもかなりの種類になる。
速いスライダー、普通のスライダー、遅いスライダーというように。
「このスライダーを武器にメジャーで二桁勝利を挙げてたワケか」
「手強いですね」
四球目、今度は高目へストレート。
(もらった)
唐澤は鋭くバットを振り抜いた。
(グッ…押されてる…)
スイングが球の威力に押され、レフト方向へフラフラと上がった。
レフト知念が定位置でキャッチ。
これでツーアウト。
「力負けしたね、唐澤くん」
「結城さん…あのピッチャーの球、スゲー重いっすよ」
痺れたのだろうか、手をブラブラしている。
「忠告ありがとう。重い球か…これは強敵だな」
フフっと口元に笑みを浮かべ打席に入った。
昨日は取り乱してしまい、途中交代した結城。
今日は何事もなく無事に試合を終えるのだろうか。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる