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優勝するためには

マルチヒット

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「おぉ~い、審判!守備交代ね」

結城に代わって畑中がファーストの守備についた。


あれから結城は物凄く落ち込んで、とてもプレイ出来る状態ではなかった。


「ボクはダメだ…あれだけ二度とキレないと誓ったのに…クソっ、まだまだ未熟だっ!」


「結城さん…元はと言えば、オレが悪いんです。ホントに申し訳ありませんでした!」


「キミが悪いんじゃない…悪いのは全てボクなんだ…こんなんじゃ、ファンの前でプレイ出来る資格は無い」


「そんな!…結城さん、自分を責めないでください」


こんなやり取りを見て、櫻井は交代させた方がいいと榊に進言した。





さて、試合は早くも7回の表。

マシンガンズは2番の下平から。


マウンド上は中邑が続投。

初回の1点が悔やまれる。


ここまで球数は97球。


そろそろ100球を越えるが、球の威力は衰えてない。


その初球は内側へ緩いカーブ。

下平はそれを上手くセーフティバントした。

打球は一塁線上に転がっている。

先程代わったファーストの畑中は捕らずに、打球がファールゾーンに転がるのを見ていたが、ライン上に止まりセーフ。


「えーっ、線を越えないのかよっ!」


急造のファーストだけに、打球の判断が上手く出来なかった。

これがもし結城ならば、素早く捕って一塁へ投げていただろう。


ノーアウトからランナーが出塁して、3番の比嘉が打席に。

第一打席はホームラン、第二打席はレフト前ヒットと当たっている。


バットを相手ピッチャーに向けるオリジナルのフォームで、視線は中邑を捕らえて離さない。


保坂がリードに苦心する。

どこを投げても打たれそうな気配すら感じる。



(そうか!ストライクゾーンに投げなきゃいいんだ)

保坂はそう考え、サインを出した。


サインに頷き、初球を投げた。

インサイドやや外れたコースへストレートが。


(ボールだ)

比嘉は見送った。


「ストライク!」


「何っ!」


審判のコールはストライク。だが比嘉は抗議した。


「今のはボールだ!」


「いいや、入ってる!ストライクだ」


保坂は中邑にボール一個分外したコースを要求した。

コントロールの良い中邑はその通りに投げたが、保坂のフレーミングでストライクにした。


(何もバカ正直にストライクゾーンに投げなくても、オレのフレーミングでストライクにすればいいんだ)



釈然としないまま、比嘉は再びバットを構えた。

二球目は外角ややコースに外れたツーシーム。


(これは遠い)


比嘉はこれも見送った。


「ストライク!」


「今のは絶対にボールだろ!」


これも保坂のフレーミングでストライクに変えてしまった。


「あんまりしつこいと退場にするぞ!」


「…クソっ!」


退場になってしまうワケにはいかず、比嘉はグッと堪えてバットを持ち直した。


(よしよし…これで大丈夫だ)


保坂はサインを出した。


中邑が三球目を投げた。


今度はアウトローへ糸を引くようなストレート。


(これもストライクだと言うのか…)

見送ればボールだが、保坂のフレーミングでストライクに変えてしまうので打つしかない。


「クッ…」


辛うじてバットに当ててファール。

(ボール球に手を出してしまえばコッチのもんだ)


四球目のサインを出す。


中邑が101球目を投げた。


インハイへの釣り球。これは大きく外れてボール。


100球を越えたが、中邑のスタミナは十分だ。


五球目を投げた。


今度はアウトローからボールになるフォーク。


(これで打ち取った!)


「ぬぉっ…」


比嘉もしぶとくバットに当てて、打球は一塁側スタンドに飛び込んだ。


(ここは何としてでも抑えないと)


サインが決まり、六球目を投げた。


「…っ!」


縦に大きく割れるカーブが真ん中から外ギリギリに。


「ぬぅ~…」

懸命にバットを止めたがハーフスイングだ。


「塁審!」


一塁塁審を指した。


「セーフ」


「えっ、ウソだろ!」


今度は保坂が塁審に抗議。


しかし判定は覆らず。


(何だよ、ったく…あれで決まったかと思ったのに)


次が七球目。比嘉に対してかなりの球数を投げている。


サインが出た。

中邑は頷いて投げた。


ツーシームがインコース低目へ。


「哈っ!」

気合いもろとも、バットを一閃。


快音を響かせ、打球はセンターへ。


唐澤がバックするが、球はグーンと伸びた。


フェンスギリギリまで下がるが、打球はその上を通過した。


「打たれた…」


比嘉の本日2本目のホームランで更に2点追加。



「あぁ~、また打たれちまったか!」


恐るべし、マシンガンズ。
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