49 / 72
キャンプイン
2月1日
しおりを挟む
年が明け、選手達は自主トレを行う。
ある者は国内で、またある者は海外で身体を仕上げる。
2月、スカイウォーカーズは毎年行っている沖縄県糸満市で、約1ヶ月間の春季キャンプをスタートさせる。
キャンプインとあって、この日は報道陣の数が多い。
今年からメジャーリーグ、ボストン・ビーンズでプレーした左腕のクレイグ・マクダウェルが来日。
初日からキャンプに参加した。
背番号はメジャーの時と同じ31。
180cm86kgとメジャーではやや小柄な選手だが、大物助っ人という雰囲気を身に纏っている。
そして、昨年三冠王に輝きMVPを受賞した財前はシルバーアッシュの髪から一転、ド派手なブルーに染めてグラウンドに現れた。
「ざ、財前選手…去年はシルバーアッシュで今年はブルーですか?」
「ん?あぁ、これね…今年はシルバーからブルーにイメチェンだぜ!
どう、似合ってる?」
「は、はぁ…」
返答に困る質問だ。
「Hey, Takahiro!(ヘイ、タカヒロ)」
マクダウェルはスロー調整を許されており、黙々とストレッチを入念に行い、その後はキャッチボールで肩慣らしを始めた。
「Hey, Craig!Long time no see!(よぉ、クレイグ!久しぶりだな!)」
久々の対面とあって、2人はハグをした。
「I never expected you to play in Japan.(まさかお前が日本でプレーするとは思わなかったよ)」
「I didn't know you would go back to Japan to play.(オレだって、お前が日本に帰ってプレーしてるなんて思わなかったよ)」
マクダウェルに専属の通訳は付いてない。
代わりに財前がマクダウェルのフォローをするというのが入団の条件だった。
「If there is anything you don't understand, please ask me anything.(分からない事があったら、何でも聞いてくれ)」
「Thank you. I'm reassured.(ありがとう、心強いよ)」
早速、2人はキャッチボールを始めた。
新戦力はマクダウェルだけではない。
ドラフト1位の冴島、2位の滝沢も一軍キャンプでスタートする。
今年2年目となる森高は、大和内野守備走塁コーチのノックを受けて、初日から泥まみれになる。
今年からセカンドへコンバートとあって、開幕に標準を合わせている。
その森高と入れ替わりに外野を守る事になった鬼束は、外野手用のグラブを手にこちらも余念が無い。
プルペンでは、去年ケガで不本意な成績に終わった片山がキャッチャーを座らせてキレのあるボールを投げる。
今年からコーチを兼任する真咲はブルペンでその様子を見守る。
「う~ん、今年はどういうローテーションを組めばいいのか」
櫻井は起用法に悩む。
現段階でローテーションに入るのは、中邑 東山 桐生の3人。
去年最多勝の真咲はコーチ兼任もあって、今年ローテーション入りさせるのは酷だ。
ケガから復活した片山 ルーキー冴島 助っ人のマクダウェルといった左の3人がローテーション入りしてくれれば助かるのだが、計算通りにはいかない。
中継ぎでは、左のアクーニャ ロングリリーフも可能な梁屋。
右ではサイドスローの東雲 速球派の流川。
左のワンポイントとして、左のアンダースロー寶井も順調な仕上がりだ。
そして抑えは今年からジェイクに代わり、降谷が新守護神となる。
そのジェイクだが、今年は二軍のキャンプからスタートした。
櫻井に命じられた新球マスターに取り掛かっている。
野手の方では、主力選手が自主トレで各自順調な仕上がりを見せ、フリーバッティングで快音を響かせる。
ローテーションと同様、打順も去年より大幅に変更する予定だ。
1ライト 唐澤
2ショート 石川
3ファースト 結城
4セカンド 森高
5レフト 鬼束
6サード 毒島
7キャッチャー 保坂(七海)
8指名打者 ジョーンズ
9センター 財前
櫻井の考案したオーダーは、榊の時より攻撃的なオーダーで、今年から指名打者制が採用されるとあって、どの打順からでも点が取れる打線に作り上げるつもりだ。
注目する点は3つ。
去年までショートのレギュラーだった筧に代わり、石川を抜擢するつもりだ。
175cmと小柄で小技を持ち味とする筧とは対照的に、187cmと長身に加え、強肩強打の石川。
その石川と二遊間を守るのが、186cmの森高。
日本の野球では、小兵ですばしっこい二遊間というイメージだったが、櫻井は大型二遊間で売り出すつもりだ。
その森高は4番を担う。
結城や鬼束といったスラッガーを前後に置いて、若き4番が持ち前の長打力を発揮出来るかどうかがカギを握る。
下位打線では、8番指名打者のジョーンズと9番財前のコンビ。
本名アルバート・ウィリー・ジョーンズ。
右投左打の外野手で、現在25才。
外野手として登録されているが、あまりの拙守に二軍の試合でも守備についてない。
193cmという長身で黒人特有の身体能力の高さを生かした俊足とパワーが持ち味。
荒削りで三振は多いが、それを補う程の長打力を兼ね備えている。
そして9番は去年三冠王の財前。
三冠王が9番に座るのは前代未聞だが、櫻井は第2のクリーンナップとして8番9番の打順こそがスカイウォーカーズ打線の軸だと考えた。
相手チームには驚異的な打順でもあるが、懸念もある。
ジョーンズの未知数と、3番以外では全く打てない財前が機能するか。
「これに懸けるしかない…最悪今年ダメでも、来年には何とかなるかも…」
総合的に見ても、スカイウォーカーズは前途多難だ。
ある者は国内で、またある者は海外で身体を仕上げる。
2月、スカイウォーカーズは毎年行っている沖縄県糸満市で、約1ヶ月間の春季キャンプをスタートさせる。
キャンプインとあって、この日は報道陣の数が多い。
今年からメジャーリーグ、ボストン・ビーンズでプレーした左腕のクレイグ・マクダウェルが来日。
初日からキャンプに参加した。
背番号はメジャーの時と同じ31。
180cm86kgとメジャーではやや小柄な選手だが、大物助っ人という雰囲気を身に纏っている。
そして、昨年三冠王に輝きMVPを受賞した財前はシルバーアッシュの髪から一転、ド派手なブルーに染めてグラウンドに現れた。
「ざ、財前選手…去年はシルバーアッシュで今年はブルーですか?」
「ん?あぁ、これね…今年はシルバーからブルーにイメチェンだぜ!
どう、似合ってる?」
「は、はぁ…」
返答に困る質問だ。
「Hey, Takahiro!(ヘイ、タカヒロ)」
マクダウェルはスロー調整を許されており、黙々とストレッチを入念に行い、その後はキャッチボールで肩慣らしを始めた。
「Hey, Craig!Long time no see!(よぉ、クレイグ!久しぶりだな!)」
久々の対面とあって、2人はハグをした。
「I never expected you to play in Japan.(まさかお前が日本でプレーするとは思わなかったよ)」
「I didn't know you would go back to Japan to play.(オレだって、お前が日本に帰ってプレーしてるなんて思わなかったよ)」
マクダウェルに専属の通訳は付いてない。
代わりに財前がマクダウェルのフォローをするというのが入団の条件だった。
「If there is anything you don't understand, please ask me anything.(分からない事があったら、何でも聞いてくれ)」
「Thank you. I'm reassured.(ありがとう、心強いよ)」
早速、2人はキャッチボールを始めた。
新戦力はマクダウェルだけではない。
ドラフト1位の冴島、2位の滝沢も一軍キャンプでスタートする。
今年2年目となる森高は、大和内野守備走塁コーチのノックを受けて、初日から泥まみれになる。
今年からセカンドへコンバートとあって、開幕に標準を合わせている。
その森高と入れ替わりに外野を守る事になった鬼束は、外野手用のグラブを手にこちらも余念が無い。
プルペンでは、去年ケガで不本意な成績に終わった片山がキャッチャーを座らせてキレのあるボールを投げる。
今年からコーチを兼任する真咲はブルペンでその様子を見守る。
「う~ん、今年はどういうローテーションを組めばいいのか」
櫻井は起用法に悩む。
現段階でローテーションに入るのは、中邑 東山 桐生の3人。
去年最多勝の真咲はコーチ兼任もあって、今年ローテーション入りさせるのは酷だ。
ケガから復活した片山 ルーキー冴島 助っ人のマクダウェルといった左の3人がローテーション入りしてくれれば助かるのだが、計算通りにはいかない。
中継ぎでは、左のアクーニャ ロングリリーフも可能な梁屋。
右ではサイドスローの東雲 速球派の流川。
左のワンポイントとして、左のアンダースロー寶井も順調な仕上がりだ。
そして抑えは今年からジェイクに代わり、降谷が新守護神となる。
そのジェイクだが、今年は二軍のキャンプからスタートした。
櫻井に命じられた新球マスターに取り掛かっている。
野手の方では、主力選手が自主トレで各自順調な仕上がりを見せ、フリーバッティングで快音を響かせる。
ローテーションと同様、打順も去年より大幅に変更する予定だ。
1ライト 唐澤
2ショート 石川
3ファースト 結城
4セカンド 森高
5レフト 鬼束
6サード 毒島
7キャッチャー 保坂(七海)
8指名打者 ジョーンズ
9センター 財前
櫻井の考案したオーダーは、榊の時より攻撃的なオーダーで、今年から指名打者制が採用されるとあって、どの打順からでも点が取れる打線に作り上げるつもりだ。
注目する点は3つ。
去年までショートのレギュラーだった筧に代わり、石川を抜擢するつもりだ。
175cmと小柄で小技を持ち味とする筧とは対照的に、187cmと長身に加え、強肩強打の石川。
その石川と二遊間を守るのが、186cmの森高。
日本の野球では、小兵ですばしっこい二遊間というイメージだったが、櫻井は大型二遊間で売り出すつもりだ。
その森高は4番を担う。
結城や鬼束といったスラッガーを前後に置いて、若き4番が持ち前の長打力を発揮出来るかどうかがカギを握る。
下位打線では、8番指名打者のジョーンズと9番財前のコンビ。
本名アルバート・ウィリー・ジョーンズ。
右投左打の外野手で、現在25才。
外野手として登録されているが、あまりの拙守に二軍の試合でも守備についてない。
193cmという長身で黒人特有の身体能力の高さを生かした俊足とパワーが持ち味。
荒削りで三振は多いが、それを補う程の長打力を兼ね備えている。
そして9番は去年三冠王の財前。
三冠王が9番に座るのは前代未聞だが、櫻井は第2のクリーンナップとして8番9番の打順こそがスカイウォーカーズ打線の軸だと考えた。
相手チームには驚異的な打順でもあるが、懸念もある。
ジョーンズの未知数と、3番以外では全く打てない財前が機能するか。
「これに懸けるしかない…最悪今年ダメでも、来年には何とかなるかも…」
総合的に見ても、スカイウォーカーズは前途多難だ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる