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ストーブリーグ
新ストッパー
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櫻井は考えた。
ジェイクのピッチングではスカイウォーカーズが優勝するのは難しいだろうと。
では誰を新ストッパーに任命するのか。
そしてジェイクはどういう起用法が適してるのか。
櫻井の出した答えは、新ストッパーに相応しい人物は降谷だと。
降谷は今年シーズン途中でドジャースからトレードで入団した。
かつてはスカイウォーカーズのエースとして活躍していたのだが、安打製造機と呼ばれる結城を獲得する為にサードを守っていた吉岡を入れた2対1のトレードで放出した。
降谷はスカイウォーカーズに復帰して、8勝3敗 防御率は2.43と非常に良い成績を残した。
降谷は150km/hを超えるストレートと、スライダー、カットボール、フォークを投げる。
特に縦のスライダーはバッターの手元で大きく変化するので、打席に立つと視界から消える程の落差。
それだけではなく、ピッチングの間を上手く使ってタイミングを外す。
マウンド度胸もあって、抑えには向いている。
櫻井は降谷のピッチングこそが抑えに適してると読んで、彼を新ストッパーとして起用するつもりだ。
ではジェイクはどうなるのか。
(ジェイクは…やっぱり中継ぎだろうな…ジェイクに盾の変化球があればいいんだが、どうしたものか)
せめてもう一種類の変化球があれば…
「ジェイクと直で話してみるか…」
オフシーズンだが、ジェイクは帰国せずにお気に入りのアイドルグループのライブを観に行くか、部屋でDVDもしくはゲーム三昧の日々を送っている。
日本のアイドルやアニメが大好きで、部屋にはこれでもかとばかりの量で溢れかえっている。
翌日櫻井はジェイクの住むマンションを訪れた。
「悪いね、休日なのにお邪魔して」
「大丈夫です!あ、何飲みますか?」
「あ、いいよいいよ、そんなに気を使わなくて」
ジェイクはキッチンでコーヒーを沸かしていた。
櫻井は部屋を見渡した。
アニメやアイドルのグッズだらけで、とても野球選手とは思えない部屋だ。
「どうぞ、飲んでください」
ジェイクはコーヒーを出した。
「あ、ありがとう…いただきます」
「ところで、今日は何の用ですか?」
櫻井はブラックコーヒーを一口飲む。
カップをテーブルに置いて、一呼吸入れてから話した。
「ジェイク…実は来年からセットアッパーをやってもらいたんだ」
「セットアッパー…セットアップマンの事ですか?」
セットアッパーとは和製英語で、メジャーではセットアップマンと呼ぶ。
「うん…キミも薄々気づいてるとは思うんだが、シーズン終盤で打ち込まれる場面が多かったのは分かってるよね?」
「エッ、あぁ…確かに打たれるケースはありましたけど」
「ジェイク、キミの球種はフォーシームとツーシームの2つだけど、もう1つ新しい球種を増やしてみたらどうだろうか?」
「ボクはクローザー失格という事ですか?」
「…厳しい言い方をするけど、今のままではキミは相手チームに狙い打ちされて抑える事は出来ない」
「そうですか」
てっきり落ち込むと思いきや、なる程という表情をしている。
「160を超える球を今以上に生かすには、もう1つ変化球を覚えた方がいいと思うんだ」
「変化球…例えばどんな球ですか?」
「う~ん、出来れば縦の変化球がいいんだが、スプリットとかチェンジアップはどうだろう?」
「スプリット、チェンジアップ…ん~、確かに縦の変化球があればいいとは思ってましたけど」
一応ジェイクも考えていたらしい。
「今まで変化球を投げた事はないの?」
「No、カーブやスライダー、カットボールを投げた事はあります。でも、中々曲がらないんです。
ボク、変化球は向いてないのかもしれません」
困ったなぁと櫻井は腕を組む。
「でも3Aにいた頃、コーチにこのチェンジアップを覚えろって言われた事あります」
ジェイクは傍にあったボールを取ると握り方を見せた。
「エッ、こんな握り方で変化するの?」
「ボクも何度かトライしたんですが、上手く変化出来ないし、速い球があるから必要無いって覚えるの止めたんです」
ジェイクの握り方は、ボールを鷲掴みにし、人差し指と小指を立てる。
影絵のキツネのポーズの様な握り方だ。
「これ…ホントに変化するの?」
「ハイ。コーチが言うには、空気抵抗でボールがどっちに曲がるかは分からないけど、マスターすれば打たれる事は無いだろうと言ってました」
空気抵抗でボールの変化が違う。
ナックルの様な変化なのだろうか。
にわかに信じ難い話だが、マイナーリーグのコーチがウソを言うはずもない。
「ジェイク…これを投げた時、少しは変化したんだよね?」
「Yes…少しだけど、右に曲がったり左に曲がったりしました。
ただ、狙った所に投げるのは難しいです」
これじゃナックルと一緒だ。
もしかしたら、オフシーズンの期間でこの球をマスターしたら…
「ジェイク、もう一度チャレンジしてみないか?」
「この球をですか?」
「キミの160km/hのストレートと、この変化球があれば今より打たれる事は無い!」
「分かりました。ボク、この球にもう一度チャレンジします」
メジャーリーガーともなると、プライドが高く扱いが難しいと言われるが、ジェイクは素直に櫻井のアドバイスを聞いた。
「そうだ、ジェイク!もし、キミがこの球をマスターしたら、この娘達のライブのチケットをプレゼントしよう」
櫻井は画面を指した。
お気に入りのアイドルグループが元気よく歌ってホントにこんなもんでヤル気を出すんだ…それにしても、純粋というかなんと言うか…)
ジェイクのモチベーションは上がった。
ジェイクが新球をマスターするまでの期間、スカイウォーカーズのクローザーは降谷に任せようと決めた。
ジェイクのピッチングではスカイウォーカーズが優勝するのは難しいだろうと。
では誰を新ストッパーに任命するのか。
そしてジェイクはどういう起用法が適してるのか。
櫻井の出した答えは、新ストッパーに相応しい人物は降谷だと。
降谷は今年シーズン途中でドジャースからトレードで入団した。
かつてはスカイウォーカーズのエースとして活躍していたのだが、安打製造機と呼ばれる結城を獲得する為にサードを守っていた吉岡を入れた2対1のトレードで放出した。
降谷はスカイウォーカーズに復帰して、8勝3敗 防御率は2.43と非常に良い成績を残した。
降谷は150km/hを超えるストレートと、スライダー、カットボール、フォークを投げる。
特に縦のスライダーはバッターの手元で大きく変化するので、打席に立つと視界から消える程の落差。
それだけではなく、ピッチングの間を上手く使ってタイミングを外す。
マウンド度胸もあって、抑えには向いている。
櫻井は降谷のピッチングこそが抑えに適してると読んで、彼を新ストッパーとして起用するつもりだ。
ではジェイクはどうなるのか。
(ジェイクは…やっぱり中継ぎだろうな…ジェイクに盾の変化球があればいいんだが、どうしたものか)
せめてもう一種類の変化球があれば…
「ジェイクと直で話してみるか…」
オフシーズンだが、ジェイクは帰国せずにお気に入りのアイドルグループのライブを観に行くか、部屋でDVDもしくはゲーム三昧の日々を送っている。
日本のアイドルやアニメが大好きで、部屋にはこれでもかとばかりの量で溢れかえっている。
翌日櫻井はジェイクの住むマンションを訪れた。
「悪いね、休日なのにお邪魔して」
「大丈夫です!あ、何飲みますか?」
「あ、いいよいいよ、そんなに気を使わなくて」
ジェイクはキッチンでコーヒーを沸かしていた。
櫻井は部屋を見渡した。
アニメやアイドルのグッズだらけで、とても野球選手とは思えない部屋だ。
「どうぞ、飲んでください」
ジェイクはコーヒーを出した。
「あ、ありがとう…いただきます」
「ところで、今日は何の用ですか?」
櫻井はブラックコーヒーを一口飲む。
カップをテーブルに置いて、一呼吸入れてから話した。
「ジェイク…実は来年からセットアッパーをやってもらいたんだ」
「セットアッパー…セットアップマンの事ですか?」
セットアッパーとは和製英語で、メジャーではセットアップマンと呼ぶ。
「うん…キミも薄々気づいてるとは思うんだが、シーズン終盤で打ち込まれる場面が多かったのは分かってるよね?」
「エッ、あぁ…確かに打たれるケースはありましたけど」
「ジェイク、キミの球種はフォーシームとツーシームの2つだけど、もう1つ新しい球種を増やしてみたらどうだろうか?」
「ボクはクローザー失格という事ですか?」
「…厳しい言い方をするけど、今のままではキミは相手チームに狙い打ちされて抑える事は出来ない」
「そうですか」
てっきり落ち込むと思いきや、なる程という表情をしている。
「160を超える球を今以上に生かすには、もう1つ変化球を覚えた方がいいと思うんだ」
「変化球…例えばどんな球ですか?」
「う~ん、出来れば縦の変化球がいいんだが、スプリットとかチェンジアップはどうだろう?」
「スプリット、チェンジアップ…ん~、確かに縦の変化球があればいいとは思ってましたけど」
一応ジェイクも考えていたらしい。
「今まで変化球を投げた事はないの?」
「No、カーブやスライダー、カットボールを投げた事はあります。でも、中々曲がらないんです。
ボク、変化球は向いてないのかもしれません」
困ったなぁと櫻井は腕を組む。
「でも3Aにいた頃、コーチにこのチェンジアップを覚えろって言われた事あります」
ジェイクは傍にあったボールを取ると握り方を見せた。
「エッ、こんな握り方で変化するの?」
「ボクも何度かトライしたんですが、上手く変化出来ないし、速い球があるから必要無いって覚えるの止めたんです」
ジェイクの握り方は、ボールを鷲掴みにし、人差し指と小指を立てる。
影絵のキツネのポーズの様な握り方だ。
「これ…ホントに変化するの?」
「ハイ。コーチが言うには、空気抵抗でボールがどっちに曲がるかは分からないけど、マスターすれば打たれる事は無いだろうと言ってました」
空気抵抗でボールの変化が違う。
ナックルの様な変化なのだろうか。
にわかに信じ難い話だが、マイナーリーグのコーチがウソを言うはずもない。
「ジェイク…これを投げた時、少しは変化したんだよね?」
「Yes…少しだけど、右に曲がったり左に曲がったりしました。
ただ、狙った所に投げるのは難しいです」
これじゃナックルと一緒だ。
もしかしたら、オフシーズンの期間でこの球をマスターしたら…
「ジェイク、もう一度チャレンジしてみないか?」
「この球をですか?」
「キミの160km/hのストレートと、この変化球があれば今より打たれる事は無い!」
「分かりました。ボク、この球にもう一度チャレンジします」
メジャーリーガーともなると、プライドが高く扱いが難しいと言われるが、ジェイクは素直に櫻井のアドバイスを聞いた。
「そうだ、ジェイク!もし、キミがこの球をマスターしたら、この娘達のライブのチケットをプレゼントしよう」
櫻井は画面を指した。
お気に入りのアイドルグループが元気よく歌ってホントにこんなもんでヤル気を出すんだ…それにしても、純粋というかなんと言うか…)
ジェイクのモチベーションは上がった。
ジェイクが新球をマスターするまでの期間、スカイウォーカーズのクローザーは降谷に任せようと決めた。
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