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シーズン終盤

獲得に乗り出す

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「でもさぁ、コイツが日本の球団からオファーがきても、来る可能性は低いんじゃないのか?」


「そう思ったんですが、ビーンズとは今年で契約が切れるみたいなんですよ。
しかも、首脳陣はマクダウェルの年齢やランナーの件について評価はイマイチらしいです」


「33才だろ?まだまだ第一線で活躍出来るじゃん!
肩は消耗品って言うぐらいなんだし、少ない球数で抑えるんだから、40過ぎても現役を続けられるぜ」


「そうなんですが…問題は他のメジャー球団とのマネーゲームになったら、勝てる見込みは無いですよ」


「コイツの年俸はどのくらいなんだ?」


「今年の年俸は、847万ドル…日本円に換算すると、およそ9億円ですね」


9億円…日本で最高年俸は結城の8億円。

その結城よりも1億円を上回る。



「9億かよ…向こうは代理人ってのがいるからな…本人はその額で良くても、代理人がYESと言わない限り、年俸は吊り上げる作戦に出るだろうな」


「厄介な存在ですね…」


アメリカではメジャーリーグに限らず、アメフトやバスケ、アイスホッケーと言ったメジャースポーツの選手には代理人が必ず付いている。


契約を合意するには、まず代理人を納得させるだけの条件が必要不可欠だ。


「面倒臭ぇな、諦めようか…」


「勝てる材料が無いですしね」


「それに、どっちがいい?なんて聞けば、選ぶのはメジャーだしな。本人は日本に行きたいなんて思わないだろ」


「それがですね…」


高梨は調書に目を通す。


「どうやら、以前は財前とチームメイトだったせいか、日本の良さを教えられて1度は行ってみたいという事らしいんです」


「財前と同じチームだったのか!それなら、財前と一緒に交渉したらOKしてくれるんじゃないのか?」


「何言ってるんですか、優勝争いしてる最中に財前を渡米させるんですか?
それに、シーズン中現役選手が交渉の席に着くなんて、前代未聞ですよ」


相変わらずムチャクチャな事を思いつく。


「んじゃ、どうするよ?コッチは財前という交渉材料があるのにそれを使わないなんて、勿体ないだろ」


「来季の事よりも、今年の優勝争いの方が大事でしょう!」


「だって、他にアイデアが思い浮かばないんだもん!」


「子供みたいな事言わないでください!」


「何とかしてマクダウェルを獲得したいじゃん?そんな良いピッチャーがウチに入ったら、勝ち星はかなり稼げるだろ?」


「そうですけど…それには先ず、高額な年俸を払えるかどうかですよ。それが出来なきゃ、日本に来るなんて到底無理じゃないですか」


1番のネックは年俸だろう。


金満球団のキングダムでさえ、9億という年俸を用意するのは難しいだろう。


「じゃあこうしよう…今年ダメだったヤツは即刻クビにして、浮いた金をコイツの年俸に回そうぜ」


「そう簡単にクビを切るワケにはいきませんよ!」


「何でだよ、活躍してない選手を切るのは別におかしくないだろ?」

「今年悪かったからって、有無を言わさず切ったら世間から反感を買いますよ!
今年たまたま良くなかっただけで、来年は活躍するかもしれないじゃないですか」


もし、そんな事をしたら大バッシングを浴びるだろう。


「こうなったら、あのバカに9億用意しろって言うしかないだろ」


あのバカとは、オーナーの事だ。


「榊さん、オーナーだからってそう簡単に金額を用意するなんて出来ませんよ…それにオーナーの一存だけで決定する話では無いんですよ」


「じゃあ、何のためにオーナーはいるんだよ?」


「何のためって…それは筆頭株主という立場であるから」



「それじゃオレの言ってる事間違ってないじゃん!」


「間違ってはいないですが、決めるには何人もの球団関係者の賛同を得ないと獲得出来ませんよ」


この男に説明してもムダだろうと思い、高梨は説明するのを止めた。


「とにかく、9億以上の年俸なんて他の球団でも用意出来ませんよ。
仕方ないけど、獲得は断念しましょう」


「年俸5億ぐらいだったらどうする?」


「そんな額で日本に来るワケ無いでしょう!」


「ヨシ、ならば今からアメリカに渡ってマクダウェルを説得しよう、それならいいだろ?」


「これから渡米って…」


「采配なんざ、ヒロトと中ちゃんにまかせればいいんだよ」


「またそんな事言う…」


何でも簡単に物事を簡単に考えてしまう。


「榊さん…今回は諦めましょう…」


このまま諦めてしまうのか。


    
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