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スカイウォーカーズの逆襲
皆まとめて一軍だ!
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東雲がマウンドに上がり投球練習をする。
「さぁ、今日はどんなピッチングをするのやら」
「この試合でカンペキに抑えたら一軍に上げよう」
先頭打者が打席に入る。
初球やや外に外れるストレート、だがそれを保坂が上手くフレーミング。
「ストライク!」
すると、バッターが入ってないとアピールするが審判の判定は覆らない。
「上手いよな、ヤッパリ」
榊は唸っている。
「東雲みたいにコントロールに不安のあるピッチャーにしてみたら、有り難い存在ですね」
二球目のシンカーに手を出しショートゴロでワンナウト。
次のバッターはフルカウントから高目のストレートに思わず手が出て三振。
最後のバッターはワンボール、ツーストライクからこれも高目の速球に手を出しセンターフライでゲームセット。
「あのストレートは威力あるな」
「球威に押されてましたね」
「よし、あの二人休み明けから一軍に上げよう」
かくして、保坂と東雲は一軍に昇格となった。
保坂は支配下登録をして、背番号が124から66に変わった。
翌日は畑中の計らいで都内の焼肉店に選手達が集まり、翌日から再開するペナントレースに備え英気を養う為に食事会を開いた。
保坂と東雲の他にトレードで入団した鬼束と結城の歓迎会を兼ねたもので、和気あいあいとした雰囲気だった。
店内は肉の焼けたいい匂いが充満して、店員が運んでくる肉を次から次へと胃袋へ入っていく。
「畑中さんどうぞ」
結城がビールをお酌する。
「お、ありがとありがと!明日からペナントレース再開だけど、頑張ってくれよな」
「ハイ、こちらこそヨロシクお願いします」
すると、鬼束も畑中の隣へ来て焼いた肉を皿に乗せて渡す。
「畑中さん、どうぞ」
「おぉー、悪いね!鬼束も明日から頼むよ」
「ハイ、こちらこそお願いします」
保坂と東雲は初の一軍という事で緊張のあまり、食が進まない。
「おい、どうした?あんまり食ってないけど、もう腹一杯か?」
畑中が二人に声を掛けた。
「あ…いや、明日から一軍で試合だと思うと中々喉を通らなくて」
「なんだなんだ、そんな事じゃペナントレースは勝ち抜けないぞ!今は余計な事考えないで食え!」
「はぁ…」
「色々とプレッシャーはあるだろうが、失敗を恐れずに伸び伸びとプレーするんだ、分かったな?」
「はい…」
「は、はい」
二人は終始恐縮していた。
若手は新加入の鬼束や結城の周りに座り、プレイヤーとしての心構え等を熱心に聞いていた。
頃合いを見計らって、畑中は毒島の隣に座りサードのコンバートについて話をした。
「愉、監督から聞いたと思うがコンバートやってみないか?」
毒島は不安な表情を浮かべた。
「オレ、サードなんて出来るのかな…」
「大丈夫だ!お前なら出来るって!」
「でも、少年野球の頃からサードってやった事無いし、守備で足引っ張るんじゃないかって…」
毒島の肩をバン、と叩いた。
「お前はキャッチャー以外のポジションでもやっていける!もっと自信をもて!」
「はぁ…」
「やる前からミスしたらどうしようとか、不安な気持ちになるのは分かるが、ミスの一つや二つぐらいどうって事ない、気にするな!」
しきりに毒島を励ましていた。
サードをやるのは構わないが、守った事の無いポジションでこの先やっていけるのだろうかと不安になっている。
「お前が仮にエラーしても、皆は何も言わないし、オレが言わせない。そんな余計な事を気にして消極的なプレーをするより、失敗しても積極的にプレーすればいいんだ」
「そ、そうですよね。畑中さんありがとうございます」
「おぅ、何かあればオレに言ってくれ。出来る限りの事はフォローするからな!」
「はい、分かりました!」
とにかくやってみなければ分からない。
少し前向きになった。
選手達は腹一杯食べて飲んでお開きとなった。
その帰り、結城は唐澤を連れて球場へ向かった。
「これから練習ですか?」
「いや、実は見て欲しいものがあるんだよ」
そう言うと、結城は室内練習場へ連れて行った。
シーンと静まり返った球場内に打球音が響く。
「誰か練習やってるみたいですね」
「中へ入って見てみるといいよ」
結城は練習場の扉を開けた。
「あれは…?」
唐澤が見たのは、マシーンでボールを一心不乱に打ち返す後ろ姿。
「誰がやってると思う?」
唐澤は首を傾げた。
一体誰なんだろ…こんな夜中に。
「もう少し近づいて見たら分かるんじゃないのかな」
恐る恐るホームの付近まで近づいた。
「えっ!…」
思わず声を上げた。
そのには額から汗をながしながら正面からくる球を弾き返している畑中だった。
「ボクが言ってた通りでょ?あの人は影で凄まじい練習をこなしているんだよ」
「…」
唐澤は無言で様子を見ていた。
「唐澤クン。畑中さん程の実力者が練習もしないでホームランなんて打てないよ。畑中さんは試合が終わった後に必ずここへ来てバットを振っているんだ」
「…影であんな、努力してるとは」
「これで分かったかな?畑中さんは試合が終わると練習する事を心掛けている」
「知らなかった…てっきり毎晩飲み歩いていたのかと思っていた…」
「はっはっは、そんなばかな」
今年で35才を迎えるベテランは普段の時とはうって変わり、真剣な表情でひたすらバットを振っていた。
「さぁ、今日はどんなピッチングをするのやら」
「この試合でカンペキに抑えたら一軍に上げよう」
先頭打者が打席に入る。
初球やや外に外れるストレート、だがそれを保坂が上手くフレーミング。
「ストライク!」
すると、バッターが入ってないとアピールするが審判の判定は覆らない。
「上手いよな、ヤッパリ」
榊は唸っている。
「東雲みたいにコントロールに不安のあるピッチャーにしてみたら、有り難い存在ですね」
二球目のシンカーに手を出しショートゴロでワンナウト。
次のバッターはフルカウントから高目のストレートに思わず手が出て三振。
最後のバッターはワンボール、ツーストライクからこれも高目の速球に手を出しセンターフライでゲームセット。
「あのストレートは威力あるな」
「球威に押されてましたね」
「よし、あの二人休み明けから一軍に上げよう」
かくして、保坂と東雲は一軍に昇格となった。
保坂は支配下登録をして、背番号が124から66に変わった。
翌日は畑中の計らいで都内の焼肉店に選手達が集まり、翌日から再開するペナントレースに備え英気を養う為に食事会を開いた。
保坂と東雲の他にトレードで入団した鬼束と結城の歓迎会を兼ねたもので、和気あいあいとした雰囲気だった。
店内は肉の焼けたいい匂いが充満して、店員が運んでくる肉を次から次へと胃袋へ入っていく。
「畑中さんどうぞ」
結城がビールをお酌する。
「お、ありがとありがと!明日からペナントレース再開だけど、頑張ってくれよな」
「ハイ、こちらこそヨロシクお願いします」
すると、鬼束も畑中の隣へ来て焼いた肉を皿に乗せて渡す。
「畑中さん、どうぞ」
「おぉー、悪いね!鬼束も明日から頼むよ」
「ハイ、こちらこそお願いします」
保坂と東雲は初の一軍という事で緊張のあまり、食が進まない。
「おい、どうした?あんまり食ってないけど、もう腹一杯か?」
畑中が二人に声を掛けた。
「あ…いや、明日から一軍で試合だと思うと中々喉を通らなくて」
「なんだなんだ、そんな事じゃペナントレースは勝ち抜けないぞ!今は余計な事考えないで食え!」
「はぁ…」
「色々とプレッシャーはあるだろうが、失敗を恐れずに伸び伸びとプレーするんだ、分かったな?」
「はい…」
「は、はい」
二人は終始恐縮していた。
若手は新加入の鬼束や結城の周りに座り、プレイヤーとしての心構え等を熱心に聞いていた。
頃合いを見計らって、畑中は毒島の隣に座りサードのコンバートについて話をした。
「愉、監督から聞いたと思うがコンバートやってみないか?」
毒島は不安な表情を浮かべた。
「オレ、サードなんて出来るのかな…」
「大丈夫だ!お前なら出来るって!」
「でも、少年野球の頃からサードってやった事無いし、守備で足引っ張るんじゃないかって…」
毒島の肩をバン、と叩いた。
「お前はキャッチャー以外のポジションでもやっていける!もっと自信をもて!」
「はぁ…」
「やる前からミスしたらどうしようとか、不安な気持ちになるのは分かるが、ミスの一つや二つぐらいどうって事ない、気にするな!」
しきりに毒島を励ましていた。
サードをやるのは構わないが、守った事の無いポジションでこの先やっていけるのだろうかと不安になっている。
「お前が仮にエラーしても、皆は何も言わないし、オレが言わせない。そんな余計な事を気にして消極的なプレーをするより、失敗しても積極的にプレーすればいいんだ」
「そ、そうですよね。畑中さんありがとうございます」
「おぅ、何かあればオレに言ってくれ。出来る限りの事はフォローするからな!」
「はい、分かりました!」
とにかくやってみなければ分からない。
少し前向きになった。
選手達は腹一杯食べて飲んでお開きとなった。
その帰り、結城は唐澤を連れて球場へ向かった。
「これから練習ですか?」
「いや、実は見て欲しいものがあるんだよ」
そう言うと、結城は室内練習場へ連れて行った。
シーンと静まり返った球場内に打球音が響く。
「誰か練習やってるみたいですね」
「中へ入って見てみるといいよ」
結城は練習場の扉を開けた。
「あれは…?」
唐澤が見たのは、マシーンでボールを一心不乱に打ち返す後ろ姿。
「誰がやってると思う?」
唐澤は首を傾げた。
一体誰なんだろ…こんな夜中に。
「もう少し近づいて見たら分かるんじゃないのかな」
恐る恐るホームの付近まで近づいた。
「えっ!…」
思わず声を上げた。
そのには額から汗をながしながら正面からくる球を弾き返している畑中だった。
「ボクが言ってた通りでょ?あの人は影で凄まじい練習をこなしているんだよ」
「…」
唐澤は無言で様子を見ていた。
「唐澤クン。畑中さん程の実力者が練習もしないでホームランなんて打てないよ。畑中さんは試合が終わった後に必ずここへ来てバットを振っているんだ」
「…影であんな、努力してるとは」
「これで分かったかな?畑中さんは試合が終わると練習する事を心掛けている」
「知らなかった…てっきり毎晩飲み歩いていたのかと思っていた…」
「はっはっは、そんなばかな」
今年で35才を迎えるベテランは普段の時とはうって変わり、真剣な表情でひたすらバットを振っていた。
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