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タッグマッチ

トレード パート2

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榊は試合そっちのけで高梨と電話で長話をしていた。

采配はヘッドコーチに任せ、ロッカールームでスパスパとタバコを吸いながら充電器を差して。


試合は1番梁屋、2番唐澤コンビが共に猛打賞を記録。

梁屋は4打数3安打1ホーマー 2打点、唐澤はなんと4打数4安打3ホーマー 6打点という大活躍でドジャースを下した。

尚、結城も3打数2安打 2打点とひとり気を吐いたが、11-2という大敗を喫した。


唐澤は攻守に渡りハツラツとしたプレーをして観客を沸かせた。

敗けたが、結城は唐澤のプレーを頼もしそうな表情で見ていた。


まるで世代交代のバトンを渡したかのように。




翌日はドジャース山下、スカイウォーカーズは二軍で調整していたエース降谷の投げ合いで両チーム共に無得点。

前日猛打賞の梁屋は2安打、唐澤は徹底的にマークされ、3四球と歩かされた。

ならばと、七回の表に鬼束が快足を飛ばしてスリーベースヒットを放つが、毒島が敬遠され、6番の吉岡に期待がかかったが、あえなく三振でチャンスをフイにした。

その直後ドジャースは3番結城の11号ソロホームランで均衡を破り、その1点を守り抜いたドジャースが辛勝。

一勝一敗のイーブンに戻した。





その夜、榊は北九州に出向いた高梨と共に小倉の繁華街にある個室居酒屋の一室で、ドジャース監督の小倉とGMの不栗を交え会談を行った。

どうやら和やかに一杯という雰囲気でもなさそうだ。



「久々にこうやってシーメー(飯)でも食おうと誘われて来たのに、にゃんという不穏な話をぶっ込んでくるんだぬ!」

阿佐オーナーの様な口調で捲し立てるのは、ドジャース監督の小倉 慶次(おぐらけいじ)


かつては静岡ピストルズのエースとして君臨し、榊や高梨とはチームメイトだった。

しかし当時のヘッドコーチ兼投手コーチだった佐久間義一の意向によりエースを剥奪され、北九州ドジャースの中継ぎエースだった希崎舞とのトレードでドジャースへ。

以降はドジャースのローテーションの一角として活躍。

現役時代は140kmのストレートとスローカーブ、フォークのみで奪三振を獲るピッチングでノーヒットノーランを達成。


見た目の薄い頭髪と先代オーナーの口調を模倣しているせいか、チームメイトからいじられキャラとして有名。

何故か勝っても敗けても皆から罵声を浴びるという、不穏な選手だった。


「おいおい、ヅラ(現役時代オヅラというニックネーム)!元チームメイトのよしみでこうやって頼んでいるのに、つれない事言うなよ」


「オヅラ、オレからも頼むよ」


「にゃにを言うか、コッチは主砲を出すんだぬ!どう見たってこのトレードはコッチが不利じゃないかぬ!」


またもやトレードを画策しているらしい。


「だから、コッチはエースに主砲を出すって言ってんだろ!」


「にゃにがエースと主砲だぬ!エースったって、ただエースナンバー付けてるピッチャーと、今年たまたまホームラン多く打ってるバッターのどこが主砲だぬ!」


「コノヤロー、コッチがおとなしく頼んでいるのに、また現役の時みたいにイジめるぞ、コラァ!」


「榊さん、落ち着いてください!でも、どうだろうかオヅラ。この話決して悪い話ではないと思うんだが」


テーブルには海の幸が所狭しと置かれているが誰も箸をつけてない。


榊はビールをグイッと飲み、タバコに火をつけた。

狭い個室に紫煙がユラユラと漂う。


「ちょ、榊さん吸いすぎじゃないですか?さっきからひっきりなしにタバコ吸ってますよ」


「あぁ、しょうがねえだろ!何せコイツがトレード話OKしてくんないから、イライラしてタバコでも吸わないとやってらんないっての!」


「にゃんと、あちきのせいだと言うのかぬ!」


「あたりめーだろ!テメーがこの話を飲んでくれりゃ、コッチだってイライラしねえっつーの!」


「ふざけんじゃないぬ!ドジャースは結城を出すのに、スカイウォーカーズは降谷と吉岡じゃ釣り合いがとれないんだぬ!」


やっぱり結城を獲るつもりだ。


高梨は結城獲得の為にトレード要員を誰にするか色々と調べた。

結果、エースの降谷とサードを守る吉岡がトレード要員として浮上した。


エースの降谷は先日まで二軍落ちしていたが、セイバーメトリクスに基づいて分析すると、QS(クオリティスタート)やWHIP(投球回あたり与四球・被安打数合計)は決して悪くない。

サードの吉岡も打率は274だが、ホームランはリーグトップの23本。

出塁率は359でOPSに至っては0.903と優秀だ。

守備範囲も広く年齢も25才と若い。


「とは言え、いくらなんでも結城はさすがに出せないぬーーーん!」


こりゃ、平行線を辿るだろうぬ…
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