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交流戦
キライなタイプ
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スカイウォーカーズに新たな火種が勃発した。
唐澤と畑中。
タイプは違えど、共に天才と呼ばれるプレイヤー。
畑中は相手にしてないが、唐澤は畑中を心底嫌っている。
このままでよいのだろうか?
試合は唐澤のツーランホームランで先制すると、三回には再び唐澤が今度はライトスタンドに飛び込む、二打席連続の10号ソロホームランで追加点を上げる。
前の打席でホームランを打った時以上に険しい顔でベースを回った。
どんな打球ならば、満足がいくのだろうか。
天才の考えてる事は全く解らない。
そしてベンチでは選手やコーチが出迎え、グータッチを交わした。
「スゲーな、二打席連続じゃないか!」
「ナイスバッティング!」
「やったぜ!」
選手達が祝福する。
畑中も皆と一緒に出迎えたが、唐澤は無視を決め込む。
「あららららら、何か嫌われちゃったなオレ…」
(こんな見た目も中身もチャラいヤツに、出迎えてもらいたくない!)
ベンチの隅に腰を下ろし、戦況を見つめる。
「よぉ、唐澤と畑中」
榊が2人を呼んだ。
「…はい」
「なんスか?」
「ちょっと、こっち来てくれ」
そう言うと、2人をベンチ奥の通路に連れて行った。
「唐澤、何でそんなに畑中を嫌うんだ?」
「…」
唐澤は無言だ。
「畑中。唐澤に随分と嫌われてるみたいだけど、お前何かしたのか?」
「何もしてないっすよ!」
「そうか…じゃ、何でお前らはそんなに仲悪いんだ?」
「えっ!仲悪いの?いや~、オレはコイツと仲良くしたいんだけどなぁ」
「オレは絶対にイヤです」
唐澤はガンコだ。
例え相手が先輩だろうが監督だろうが、イヤなものはイヤ!
あくまでも己を貫き通す。
だが、そこまで自己主張をしなければ、プロとしてやっていけないとも言える。
「まぁいいじゃないすか。コイツがオレの事を嫌ってるなら、それでも構わないですし。多分オレとはウマが合わないんでしょう」
畑中は気にもとめない様子だ。
「んー、そうか。まぁ、それでいいなら別に何も言わんけど、くれぐれもケンカだけはするなよ」
「…」
「へいへい、わかりやしたぁ!」
能天気な畑中とは対称的に、敵意剥き出しの唐澤。
この2人が和解する事があるのだろうか。
「よし、じゃあ2人とも戻れ!」
2人はベンチへ戻った。
榊はふと、現役時代を思い出した。
榊も静岡ピストルズにFAへ入団した当初、同じく入団間もない助っ人のウェイン・トーマスJr.とソリが合わず、しょっちゅうケンカをしていた。
見かねたナダウ・ヤマオカ監督が試合前の練習を中断させ、グランドでタイマンするよう命令。
タイマンはトーマスJr.が辛うじて勝ったが、その後2人はいがみ合う事は無かった。
あの時はああやって決着をつけたが、今回はどうしようか。
チームがまとまらないと、勝利から遠ざかってしまう。
榊は通路の脇でタバコを吹かしながら解決策を考えた。
ベンチに戻ると、スカイウォーカーズのチャンスは続いていた。
ワンナウトから4番毒島が右中間を真っ二つに割るスリーベースヒットを放ち、5番の吉岡はフォアボール。
続くバッターは6番畑中。
「なーんか、ヤル気無くすよな~」
ボヤきながら打席に入り、バットを持ったまま構えず。
「アイツ二打席連続ホームラン打ったしなぁ。じゃ、オレもホームラン打つか」
「何っ!」
また予告ホームランか。
しかし初球を強振して、ボテボテのピッチャーゴロであえなくゲッツー。
「アチャーっ、やっちまった!」
悪びれずベンチに戻る畑中に唐澤が掴みかかった。
こりゃ、試合どころじゃない雰囲気だ…
唐澤と畑中。
タイプは違えど、共に天才と呼ばれるプレイヤー。
畑中は相手にしてないが、唐澤は畑中を心底嫌っている。
このままでよいのだろうか?
試合は唐澤のツーランホームランで先制すると、三回には再び唐澤が今度はライトスタンドに飛び込む、二打席連続の10号ソロホームランで追加点を上げる。
前の打席でホームランを打った時以上に険しい顔でベースを回った。
どんな打球ならば、満足がいくのだろうか。
天才の考えてる事は全く解らない。
そしてベンチでは選手やコーチが出迎え、グータッチを交わした。
「スゲーな、二打席連続じゃないか!」
「ナイスバッティング!」
「やったぜ!」
選手達が祝福する。
畑中も皆と一緒に出迎えたが、唐澤は無視を決め込む。
「あららららら、何か嫌われちゃったなオレ…」
(こんな見た目も中身もチャラいヤツに、出迎えてもらいたくない!)
ベンチの隅に腰を下ろし、戦況を見つめる。
「よぉ、唐澤と畑中」
榊が2人を呼んだ。
「…はい」
「なんスか?」
「ちょっと、こっち来てくれ」
そう言うと、2人をベンチ奥の通路に連れて行った。
「唐澤、何でそんなに畑中を嫌うんだ?」
「…」
唐澤は無言だ。
「畑中。唐澤に随分と嫌われてるみたいだけど、お前何かしたのか?」
「何もしてないっすよ!」
「そうか…じゃ、何でお前らはそんなに仲悪いんだ?」
「えっ!仲悪いの?いや~、オレはコイツと仲良くしたいんだけどなぁ」
「オレは絶対にイヤです」
唐澤はガンコだ。
例え相手が先輩だろうが監督だろうが、イヤなものはイヤ!
あくまでも己を貫き通す。
だが、そこまで自己主張をしなければ、プロとしてやっていけないとも言える。
「まぁいいじゃないすか。コイツがオレの事を嫌ってるなら、それでも構わないですし。多分オレとはウマが合わないんでしょう」
畑中は気にもとめない様子だ。
「んー、そうか。まぁ、それでいいなら別に何も言わんけど、くれぐれもケンカだけはするなよ」
「…」
「へいへい、わかりやしたぁ!」
能天気な畑中とは対称的に、敵意剥き出しの唐澤。
この2人が和解する事があるのだろうか。
「よし、じゃあ2人とも戻れ!」
2人はベンチへ戻った。
榊はふと、現役時代を思い出した。
榊も静岡ピストルズにFAへ入団した当初、同じく入団間もない助っ人のウェイン・トーマスJr.とソリが合わず、しょっちゅうケンカをしていた。
見かねたナダウ・ヤマオカ監督が試合前の練習を中断させ、グランドでタイマンするよう命令。
タイマンはトーマスJr.が辛うじて勝ったが、その後2人はいがみ合う事は無かった。
あの時はああやって決着をつけたが、今回はどうしようか。
チームがまとまらないと、勝利から遠ざかってしまう。
榊は通路の脇でタバコを吹かしながら解決策を考えた。
ベンチに戻ると、スカイウォーカーズのチャンスは続いていた。
ワンナウトから4番毒島が右中間を真っ二つに割るスリーベースヒットを放ち、5番の吉岡はフォアボール。
続くバッターは6番畑中。
「なーんか、ヤル気無くすよな~」
ボヤきながら打席に入り、バットを持ったまま構えず。
「アイツ二打席連続ホームラン打ったしなぁ。じゃ、オレもホームラン打つか」
「何っ!」
また予告ホームランか。
しかし初球を強振して、ボテボテのピッチャーゴロであえなくゲッツー。
「アチャーっ、やっちまった!」
悪びれずベンチに戻る畑中に唐澤が掴みかかった。
こりゃ、試合どころじゃない雰囲気だ…
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