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コーチを求めて全国行脚

練習風景

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無事に高知県に着いた。



「高知県かぁ…高知と言えば、あのインチキ野球だな」


「あれはホントに参りました」


かつて高知県には、【土佐モンスターズ】という球団が存在した。


だが、モンスターズはサイン盗みやボールに小細工をして、本拠地モンスタードームで勝利を増やした。


当時、モンスターズの主力選手だった大和は、イカサマ野球をする事を躊躇い、球団を通じて訴えたが聞き入れられず。


結局、ピストルズの監督だったヤマオカに見破られ、見逃す代わりに大和をピストルズによこせ、と言われ金銭トレードでピストルズに入団。


その後はピストルズの主力メンバーとして、優勝に貢献した。




その大和は現役を引退後、地元の高知県で少年野球チームの監督をしているという。


果たして、大和はスカイウォーカーズのコーチを引き受けてくれるのだろうか。



高知県中西部の四万十川に面した長閑な地域で、2人は少年野球チームを探していた。


「これ、結構距離あるよな」

どのくらい歩いたのだろうか。


キャリーバッグをゴロゴロを引きずり、足が棒になる。


「何か、疲れたな…ちょっと休憩しようぜ」


「えっ、また?さっき休憩したばかりじゃないですか」


5分程前に、喫茶店でコーヒーを飲んでいた。


「いいじゃんかよ、どうせすぐに見つかるって」


ホントにワガママな監督だ…


「でも、まだ距離があるんで、もう少し歩きましょう」


スリーピースのスーツを着こなし、高梨は颯爽と歩く。


片や榊はアロハシャツに短パン。手にはキャリーバッグを持ち、足取りが重い。


「おい、高梨。お前、そんな格好でよく暑くないよな?」


この日は4月上旬にしては日差しが強く、かなり気温が上がっている。


うっすらと汗が滲む。


「もう少しで目的地です」


高梨はスマホのマップを頼りに、歩を進める。



「まだかよ!いつになったら着くのやら…」



やがて、前方にグランドがみえた。


「もしかしたら、この野球チームかも」


高梨はグランドで、少年野球チームが練習している様子を見た。

監督らしき人物がノックをしている。


「よし、次はショート!行くぞ!」

掛け声と共に、カキーンという金属音が響く。

「あの監督、中々良いバッティングしてるな」


「そうですね、まるでプロみたいだ」



ノックをしている人物がこちらを振り向いた。


「あっ!大和!」


「え?あ、ホントだ」



ノックをしていたのは大和だ。



「こりゃ、好都合だ!おい、高梨。グランドに行こう」


「あ、はい」


2人はグランドに入った。



大和は2人の存在に気づいてない。



「ほら、そんなへっぴり腰じゃボールは捕れないぞ!」


「ハイっ!」


「よし、もう一丁!」


カキーン!



「そうだ、今の感じ忘れるなよ!」


「ハイっ!」


大和は熱心に指導している。




「大和」

高梨が声を掛けた。



「あっ、高梨さん!どうしてここに?」


大和は驚いている。


「よっ、大和!久しぶりだなぁ、おいっ!」


「えっと…どちら様ですか?」


「オレだよ、オレ!忘れたのか!」


榊はサングラスを取った。


「榊さん?えっ、だって榊さんは監督だったはずじゃ…」


ムリもない。こんな格好じゃ、誰も榊だと気づかない。



「まぁ、色々あって休養中って事だ。それより、時間あるか?」



「えーっと、もうすぐで練習時間が終わりますが」


「じゃあ、オレたちはそれまでここで待ってるから」


「あの、こんな場所まで何をしに来たんですか?」


「まぁ、話は練習が終わってからにしよう」


2人はベンチに座り、練習を眺めた。






(多分引き受けてくれるハズだ…)


高梨はそんな予感がした。
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