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第十一話

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異議を唱えた若そうな青年が立ち上がって叫んだ。
「私は大内輝弘、大内家の分家で大友氏のところに身を寄せているものである。
大内家の本家とはあまり交流が無い。
もともと特大三島神社の宮司を通じて、私はそこの巫女である鶴と婚約をしていたはず。
大内の本家の船が鶴の横に居る市川の船と漁場の権利を争って海で小競り合いをしていた時に、
私の婚約者である鶴は、二人の船の中を割って駆け付けた。
そこで巫女の力で何やら祈祷をすると、海も空もまるで赤龍が海からでて大暴れをしたかのように急に荒れて、大内本家の船も沈没しそうになり逃げ帰ったと聞く。
特大三島神社の宮司は大内本家に気遣い、私と鶴の婚約を破棄使用したが私は認めていない。
私は鶴と婚約していたはず。婚約破棄ではなく婚約継続だ。
もし赤龍の三種の神器を私が先に手に入れたなら、私と結婚するのだ。」

占い師の諏訪が立ち上がって経好を見ると叫んだ。
「赤龍の証を持った女は、赤龍の三種神器の宝を先に集めた者が結婚するのが習わし。
これを破ると海は大荒れこの世の終わりがやってくる。
まさにこの若者が話したことは正しい。」

経好の父が更に大きな声で叫んだ。
「何故宿敵の大内の若者がここにいる。」
好青年に見える若者が返した。
「先ほど言ったはず。鶴を探して特大三島神社に行ったら、宮司から婚約破棄を宣言した巫女は、市川の息子が連れ帰ったと聞いたからここに来たまで。
命に代えても鶴が大事。」

鶴姫は、命に代えても鶴という言葉に思わず一瞬キュンとした。
しかし、この若い男は好青年に見えるが、令和では若い女を連れていたにも関わらず私をホテルに誘い込もうとした口にうまい取引先の男と似ていると思い出した。
やっぱり経好様と結婚したい。
それより若い男の横の異議ありといった女はどうなの。

異議ありと言った女が続けて叫んだ。
「私は、経好様の父上の友人の紹介で、経好様と婚約直前まで行って、そこの占い師が変なことを言って私の婚約を台無しにしたのよ。赤龍の証が無いとか訳の分からないことを言って。」
諏訪が返した。
「市川家の繁栄のためには市川家の赤龍の三つのお宝を捧げることが必要。
お前はもう資格が無い。
去れ。」
「私の愛しい経好様が、そんな若くも無い女と結婚するなんて許せないわ。
私の方がお肌もみずみずしいし、胸だって大きいし、あんな貧乳で年取った女のどこがいいのよ。
経好様と結婚するのにお宝が必要なら、私こそ経好様と結婚できるわ。」

占い師の諏訪が返した。
「大内様はともかく、この女は何の資格も無い、赤龍の証も持っていない。
さっさと外に連れ出すがよい。お宝を持っているなら話は別だが。
持っていれば確かに殿と結婚できるがどうなのだ。
それにどうやってここに入った?」
経好の家来たちが、若い女を外に連れ出そうとした。
若い女は広間から連れ出される前に金切り声を上げた。
「丁度、特大三島神社にお参りしていたら、そこの大内様と宮司の話を聞いたのよ。
だから大内様の後を付けたらここに来たのよ。
離せ、離せよ。
経好様、愛している。そんな年のいった貧乳女より、若い私を選んでよ。
それに、赤龍のお宝なら、ほらこれを。」
若い女は胸元から何かを取り出そうとしたが、家来が羽交い絞めにして広間から連れ出そうとした。
諏訪は茫然と立ち尽くして女を見ていた。
女は暴れて家来や占い師の諏訪など周りの人を平手打ちして暴れた。
諏訪は広間に後ろから倒れ気絶した。
若い女は再び胸元に手をやり「マガタマ」と喚いていたが、家来たちに取り囲まれ手足をひもで縛られて広間から連れ出された。
諏訪も女中たちが広間から連れて行った。

失礼な女。貧乳女なんかじゃないし、お肌は女中の皆さんのおかげでみずみずしいわ。貧乳というより私はスリムなのよ、体も鍛えているし無駄なぜい肉が無いだけよ。
占い師を平手打ちしたことだけは非難しないけれど。

経好が口を開いた。
「何があっても私は鶴姫と結婚する。赤龍の宝も渡さぬ。私が三種の神器を集めて文句も言わせず私は鶴姫を正室にする。ここにそれを宣言する。婚約の儀は終わりだ。宴はお開きだ。」
経好が若者の眼を見て続けた。
「大内の分家なら、命だけは助けてやるからさっさとこの場を去れ。
赤龍の宝は渡さぬ。」
家来が大内輝弘という若者を広間から連れ出した。

経好が父上の眼を見て言った。
「父上、私は鶴姫と明日から赤龍の三種の神器を集めて参ります。
鶴姫は不思議な力を持っております。
私が赤龍のお宝を集めるために私に力を貸してくれる気がします。
そして最愛の鶴姫と結婚します。」

鶴姫も経好の言葉にキュンとして、立ち上がり頷いた。
「わかった。邪魔が入ったが、婚約の儀は宣言通りで終わる。
経好、誰からもつまらぬことを言わせず結婚のために赤龍の宝を持ちかえってこい。」

鶴姫は、女中たちにケアしてもらったあと今日も経好の閨に入った。
女中頭が言った。
「経好様、諏訪様は本日、具合が悪いためお見えになりません。
何かございましたらこのさよに申し付けください。
ただくれぐれも契りまではせず鶴姫様を穢さなきよう我慢していただきたくお願い申し上げます。
どうしても我慢できない場合は、私が処理させていただきますし、別の女中がよろしければ差配させていただきます。
私は閨ではなく部屋の外で控えております。」

それから女中頭は鶴姫に向って言った。
「くれぐれも契りはせぬよう我慢してくださいませ。
それから何か困ったことがあればすぐ私を呼んでくださいませ。
和紙と筆はここにご用意しておきます。」

婚約の儀の三日目の閨の中は、経好様と二人きりになったことに気づいた。
邪魔者はいなくなった。
急に体が火照るのを鶴姫は自覚した。
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