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第四十二話
しおりを挟む刑事が結婚もしていない二十歳前の美少女とホテルに泊まる訳にはいかないよな。
少し残念な気持ちを抱えつつ、吉川は山水園亭の駐車場にあるレクサスNXに乗り込んだ。
吉川のスマホにメール着信が入った。
美都留から添付ファイルが送られてきた。
ファイルを開けると、
『余計な詮索は夜道が歩けなくなる。山水園亭の池庭園の滝の奥に知りたいものがある。』
と書いてある手紙の写真があった。
美都留に電話しようかと思ったら、電話がかかってきた。
「部屋に戻ったらドアの下の隙間に印字された手紙が入っていたわ。
容疑者のお出ましかも。ちょっと行ってくる」
「危ないぞ。挑発に乗るな。部屋に居て鍵を閉めろ」
「一応スマホを繋ぎっぱなしにしておくわね」
吉川は胸騒ぎがして、レクサスから降り駐車場から山水園亭の受付を目指して走った。
「池庭園の滝の奥は、どこですか」
「池庭園でございますか。ここは3つの庭園がございまして、ここを出られまして右側の歩道を進んで頂きますと回遊路がございます。その回遊路の奥に二つの滝がございます。今日は電気の調子が悪く夜の名物のライトアップはされておりません」
吉川は右側の歩道を走った。
美都留の姿は見えない。回遊路が見えてきた。
スマホに向かって怒鳴った。
「今、回遊路に入った所だ。美都留はどこだ」
「平気よ。こっちの滝かな。奥が暗くてよく見えないわ。
また、あの時の音が聞こえるよ」
その声が聞こえた瞬間、ゴツッという音がした。
「美都留、聞こえるか」
応答が無い。
「おいっ。聞こえるか」
吉川は
スマホに叫びながら、滝を目指して走った。
二つの滝の回遊路から遠い方の前で、女性が横たわっている。
「美都留!」
美都留の右頭の側から血が出ている。
呼吸はしている。
頭以外の頸部等には損傷が無いようだ。
意識は失っている。
吉川は左右を警戒しながら、119番と山口県警に電話した。
救急車が来るまで、襲われないように辺りを警戒していた。人の気配は無いようだ。
美都留の近くには石が落ちている。
救急車のサイレンが鳴り響き山水園亭の庭園の反対側に救急車がはいってきた。
タンカを持った隊員が走ってきて、美都留を運んでいく。
山口県警の所轄の警官も到着した。
警官に身分証を見せ、石のことを伝えたあと、居ても立っても居られなくなり、吉川は救急車隊員の後を追い、レクサスに乗り、救急車を追った。
こんなことになるなら、一緒にホテルに連れ帰れば良かった。
頼む。美都留、大丈夫と言ってくれ。
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