上 下
26 / 60

第二十六話 高嶺城の埋蔵品

しおりを挟む

「前夜祭の司会お疲れだったね。前夜祭の時に塚本社長と話をしていたら、高嶺城とか埋蔵品とかの話を持ち出された。
そういえば淡路島の別荘で殺された大内のズボンから見つかった古文書みたいな文章にも高嶺城とか埋蔵品とかが記されていたと思う。
塚本社長は大内と懇ろの仲になっていたから、大内から古文書のことを聞いたか、または大内の別荘で古文書を手に入れたのかもしれない」

美都留は早口で吉川に語りかけた。
「古文書には『天正12年12月1日 市川経好の妻 鶴、
 ここに大内義長が残した埋蔵品の場所を記す。高嶺城天守から見渡す2九桂へ』と書いてあったよね」
「埋蔵品が塚本社長のいう金銀ザクザクの財宝の在り処なのか。
天正12年というとどの時代だったかな」
「丁度その2年前に本能寺の変が起きて、後の豊臣秀吉が天下をとるまでの移行期間よ」

「市川経好というのは?高校の日本史で聞いたこと無いよな」

「毛利元就の家臣で山口では有名な武将よ。
高嶺城は最初大内義長が築城し始めたのよ。
それをある時に市川経好きが攻略してそのあとで城を完成させたの。
その妻の名前は分からないので市川局と称されているわ。
妻の名前は判明していないの。
市川経好は将棋が好きで、よく強い人を城内に呼んで将棋を指していたと聞くの。
市川経好の姓は元々吉川で、高嶺城の城主として妻の市川局と過ごしていたのでけれど、九州に市川経好が毛利軍の一員として攻め込むために城を留守にしたの。
そうしたら、大内家の残党である大内輝弘という人物が城主の留守を見計らって攻め入ったの」

「良く知っているね」

「興味をもって前に調べたの。
何故かすごい汗を書いたときにこのあたりの夢をよく見るの。
桂馬の指し手も夢に出てくるわ。
夢というか明晰夢というかリアリティ感がありすぎるのよ」

「歴史に興味をもって調べるから夢に出るのだね。それで高嶺城は城主の市川経好が居ないから大内に攻め込まれたのかい」

「それが、妻の市川局が勇敢で天才的な城の守りを固めて籠城したのよ。城の周りを大内の兵に囲まれたにもかかわらず、城から九州の夫である市川経好に大内家に攻められていることを何とかして伝えたの。
城の危機を知った夫の市川経好は急いで九州から城に戻り、大軍で大内の兵を蹴散らして、高嶺城も奥さんの市川局も無事で奥さんは高嶺城を大内の攻撃から守り切ったのよ」
美都留の説明が熱を帯びてきた。

「それから大内義長は高嶺城の最初の主。
今回別荘で殺された大内も名前は義長で全く同じだから、因縁を感じるわ」
そうなのか。戦国時代と今回の事件は繋がるのか。
いや、偶然だろう。

「大内の乱を起こした大内輝弘と、高嶺城の最初の主である大内義長は直接の親子ではないけど縁者ね。
市川経好を含めた毛利軍に滅ぼされる前に大内義長は、大内家の財宝を持っていたとされているの。
大内輝弘が高嶺城の付近や城を攻めようとしたのもその埋蔵されたお宝を取り戻そうとしたのに違いないわ。
現地の山口では大内家の財宝は埋蔵品伝承として語られているわ。
でも正式な史料としては大内家財宝の話は残っていないのよ。」
「そうなのか」
「別荘で殺された大内とは、苗字が同じだから、先祖も戦国時代の大内家ということもありえるわ。だから秘密の古文書を持っていたとかもしれないよ」
かなり熱を帯びた美都留の説明だった。
「今日は時間も遅いし、私はビジネスホテルに戻るよ」

「今日の宿どこなの?実家には行かないのね。」
「新山口駅近くのビジネスイン新山口ホテルだよ。仕事だから実家には寄らないよ。
そっちは山水園亭か。いいね」
「代理でのお仕事だから山水園亭には部屋が空いてなくて。
ここじゃなくてホテルを自分で予約しないといけなかったのを忘れていたの。さっきのホテルに泊まるから案内してよ」
「ビジネスイン新山口ホテルだが」
同じホテルに泊まったとしても、まあ部屋は別だし問題ないか。

「先ほどの前夜祭で、色々な人と話をしていたね。何か分ったかい?」
「南場社長は愛媛の古い神社の旧家の分家だったのよ。先祖の遺産を持っていると人生楽ができるよね。下関のことも詳しかったわ。
今度山口の選挙区で議員に立候補するようなことも言っていたわ。
それから、夏山とか言う将棋の道場主は金海五段を知っているらしくて久しぶりと金海五段に声をかけていたわ」
「そうなのか。明日からの日本女流名人戦も楽しみだよね」

レクサスNXに美都留を乗せてロビーで美都留を下ろし、吉川は車を駐車場に入れてから吉川はホテルのフロントに向った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

幻影のアリア

葉羽
ミステリー
天才高校生探偵の神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、とある古時計のある屋敷を訪れる。その屋敷では、不可解な事件が頻発しており、葉羽は事件の真相を解き明かすべく、推理を開始する。しかし、屋敷には奇妙な力が渦巻いており、葉羽は次第に現実と幻想の境目が曖昧になっていく。果たして、葉羽は事件の謎を解き明かし、屋敷から無事に脱出できるのか?

「鏡像のイデア」 難解な推理小説

葉羽
ミステリー
豪邸に一人暮らしする天才高校生、神藤葉羽(しんどう はね)。幼馴染の望月彩由美との平穏な日常は、一枚の奇妙な鏡によって破られる。鏡に映る自分は、確かに自分自身なのに、どこか異質な存在感を放っていた。やがて葉羽は、鏡像と現実が融合する禁断の現象、「鏡像融合」に巻き込まれていく。時を同じくして街では異形の存在が目撃され、空間に歪みが生じ始める。鏡像、異次元、そして幼馴染の少女。複雑に絡み合う謎を解き明かそうとする葉羽の前に、想像を絶する恐怖が待ち受けていた。

学園ミステリ~桐木純架

よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。 そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。 血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。 新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。 『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。

双極の鏡

葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。 事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

友よ、お前は何故死んだのか?

河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」 幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。 だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。 それは洋壱の死の報せであった。 朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。 悲しみの最中、朝倉から提案をされる。 ──それは、捜査協力の要請。 ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。 ──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?

真実の先に見えた笑顔

しまおか
ミステリー
損害保険会社の事務職の英美が働く八階フロアの冷蔵庫から、飲食物が続けて紛失。男性総合職の浦里と元刑事でSC課の賠償主事、三箇の力を借りて問題解決に動き犯人を特定。その過程で着任したばかりの総合職、久我埼の噂が広がる。過去に相性の悪い上司が事故や病気で三人死亡しており、彼は死に神と呼ばれていた。会社内で起こる小さな事件を解決していくうちに、久我埼の上司の死の真相を探り始めた主人公達。果たしてその結末は?

眼異探偵

知人さん
ミステリー
両目で色が違うオッドアイの名探偵が 眼に備わっている特殊な能力を使って 親友を救うために難事件を 解決していく物語。 だが、1番の難事件である助手の謎を 解決しようとするが、助手の運命は...

処理中です...