上 下
12 / 60

第十二話 淡路島別荘に死体

しおりを挟む
病院で美少女女流棋士の三島美都留から、淡路島津名の別荘で倒れている人がいると聞いた吉川は淡路島の別荘にレクサスNXプラグインハイブリッドの車で急行した。
まだ事件かどうかわからないので兵庫県警を呼ばず、一人で別荘に向った。

別荘の正面のドアは鍵がかかっている。
建物を一周すると台所と思われる正面ドアは鍵がかかっていて、反対側の出入り口の勝手口のガラスが割られていた。
勝手口のドアは開いていた。勝手口から台所に通じている。
吉川は慎重に勝手口の付近から台所の奥のリビングの部屋の中を覗いてみた。
夾竹桃の有毒ガスが漂っているといけないので勝手口から見える範囲の視線を向けてみた。
リビングには暖炉がある。

暖炉の付近を見ると、ズボンと黒い靴をはいた二本の足と白く細い足首が見えた。
吉川は慎重に勝手口で息を止めてハンカチで飯尾付近を覆って暖炉の近くに侵入した。

二人倒れている。男と女のようだ。
女性の顔の付近に携帯用の懐中電灯を照らすと思わず声が出た。
女性はオーハシポートホテルから失踪した林田桜里瑛だ。
吉川の記憶の範囲では赤龍戦で対局をして対局後の表彰イベントのときと同じ服装だ。
何故か男装風の化粧をしている。

もう一人は、県警で写真を見た大内に似ている。
スーツを着たまま倒れている。
二人の脈を素早く確認した。
脈も無く眼が濁っており硬直も解けている。
もうすでに死んでいるようだ。
今死んだのではなさそうだ。
あわてて吉川は勝手口から外に飛び出し兵庫県警に連絡を取った。

吉川の連絡を踏まえてすぐ所轄の警察がやってきた。
その後、県警本部から捜査員や鑑識が到着した。
吉川が課長に説明している。
「別荘の中で二人が死んでいます。中は毒のある煙が充満している恐れがありますが現場保全のため換気はしていません」
鑑識が防毒マスクを着けて空気の採取や現場調査を始めた。
そのあと課長と吉川は鑑識の許可を得て、別荘の扉を開け放った。

別荘の現場の捜査のあと、課長と吉川は洲本署に行きそこで鑑識の結果を待った。

遺体は、オーハシポートホテルで赤龍戦の対局後に失踪した林田桜里瑛女流棋士とその兄の大内義長と確定した。
二人の死体が栃木の淡路島津名の別荘で発見された。
別荘の室内は、勝手口のドアを除いて人の出入りができない密室状態だった。
そして美都留が病院で言っていたのは、
『別荘のドアは鍵がかかっていたので、別荘を一周して勝手口のガラスを石で割って外から手を入れて勝手口を空けたの』
美都留の言い分を信じれば、別荘の出入り口はすべて鍵がかかっているということになる。

そうすると、この別荘の二人は事故か心中で毒を飲んだのか。
いや、赤龍戦で優勝して大金を手に入れて自殺する理由は無いはずだが。
そうすると事故なのか、事故にしては大内が右手に握っていた桂馬の意味は何か。二人で居たのなら、苦しくなってドアを開けて外に逃げようとしなかったのか。また動けないなら電話で助けを求めなかったのは何故か。
あの桂馬は犯人を示すダイイングメッセージではないのか。
そうするとこの事件は密室での殺人事件ということになる。
オーハシポートホテルも殺人事件なのか。連続殺人事件なのか。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

警狼ゲーム

如月いさみ
ミステリー
東大路将はIT業界に憧れながらも警察官の道へ入ることになり、警察学校へいくことになった。しかし、現在の警察はある組織からの人間に密かに浸食されており、その歯止めとして警察学校でその組織からの人間を更迭するために人狼ゲームを通してその人物を炙り出す計画が持ち上がっており、その実行に巻き込まれる。 警察と組織からの狼とが繰り広げる人狼ゲーム。それに翻弄されながら東大路将は狼を見抜くが……。

後宮生活困窮中

真魚
ミステリー
一、二年前に「祥雪華」名義でこちらのサイトに投降したものの、完結後に削除した『後宮生活絶賛困窮中 ―めざせ媽祖大祭』のリライト版です。ちなみに前回はジャンル「キャラ文芸」で投稿していました。 このリライト版は、「真魚」名義で「小説家になろう」にもすでに投稿してあります。 以下あらすじ 19世紀江南~ベトナムあたりをイメージした架空の王国「双樹下国」の後宮に、あるとき突然金髪の「法狼機人」の正后ジュヌヴィエーヴが嫁いできます。 一夫一妻制の文化圏からきたジュヌヴィエーヴは一夫多妻制の後宮になじめず、結局、後宮を出て新宮殿に映ってしまいます。 結果、困窮した旧後宮は、年末の祭の費用の捻出のため、経理を担う高位女官である主計判官の趙雪衣と、護衛の女性武官、武芸妓官の蕎月牙を、海辺の交易都市、海都へと派遣します。しかし、その最中に、新宮殿で正后ジュヌヴィエーヴが毒殺されかけ、月牙と雪衣に、身に覚えのない冤罪が着せられてしまいます。 逃亡女官コンビが冤罪を晴らすべく身を隠して奔走します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

choice

陽芹孝介
ミステリー
共存か?支配か?脱出か? 得たいの知れない人工島に閉じ込められた男女12人が、繰り広げるミステリー。 東應大学(とうおうだいがく)で『天変(てんぺん)』と呼ばれる変人、月島葵(つきしまあおい)は、ひょんな事から幼馴染みの藤崎美夢(ふじさきみゆ)と『豪華クルージングの旅』に参加する事になる。 他の参加者とも仲良くなり、楽しい旅になろうとした矢先に、船は突然謎の光に包まれる。

マイグレーション ~現実世界に入れ替え現象を設定してみた~

気の言
ミステリー
いたって平凡な男子高校生の玉宮香六(たまみや かむい)はひょんなことから、中学からの腐れ縁である姫石華(ひめいし はな)と入れ替わってしまった。このまま元に戻らずにラブコメみたいな生活を送っていくのかと不安をいだきはじめた時に、二人を元に戻すための解決の糸口が見つかる。だが、このことがきっかけで事態は急展開を迎えてしまう。 現実に入れ替わりが起きたことを想定した、恋愛要素あり、謎ありの空想科学小説です。 この作品はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...