赤龍戦で対局した女流棋士が消失したら連続殺人事件が始まった

lavie800

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第七話

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吉川は朝から兵庫県警に塚本桂子を呼び事情聴取した。
「早速ですが、大内義長さんとはどういう関係ですか」
「向こうから売り込みがあったのですよ。何でも米国流の経営術を知っているとかで。今は普通の眼鏡だけだと少子化で先行き経営が不安だったので、商品のラインアップを増やす相談や、新商品を渡してモニターらしきものをやってもらっていました」
「大内さんは今どこにいるかご存じですか。県内の自宅を訪ねたのですが不在だったので」
「大内さんに何かあったのですか」
「赤龍戦で優勝した林田さんが失踪しておりまして、別の事件の参考人として探しているのです。大内さんはその林田さんの実の兄なのですよ。ご両親が分かれて苗字は違っているのですが。
大内さんに詳しく話を聞きたいと思っています。
あのホテルで火事があった日に県警の捜査員が参考までに大内さんに連絡先を聞きました。
昨日再度連絡しようと思ったのですが不在のようなので、塚本さんは、大内さんの知り合いだと聞いたものですから大内さんの行先をご存じかと思いまして」
塚本桂子はびっくりした顔をして
「そうでしたか。不思議な因縁ですね。大内さんの助言で女性向けの眼鏡でシェアをあげようということで広告を打ったほうが良いということでしたので、女性も注目する将棋の一戦で協賛に参加しました。
また、大内さんから、デザイン性に優れた眼鏡だから日本市場だけではなくソウル等でも売れるのではないかと助言を頂いて、韓国語を勉強中ですよ。そのうち二人でソウルに出張しましょうと言ってくれていました」

吉川の横には女性警官の制服を着たツインテールの美少女が伊達眼鏡を掛けて横に座っている。
一応黙って聞いている。
「大内さんがどこにおられるかご存じですか」
塚本は足を投げ出して座っている。
「わかりません。いえ。どこにいるかわかりませんが、刑事さん誰にも知られたくないのですが」
「法に触れなければ警察が口外することはありません」
「大内さんは、私の会社の経営コンサルタントをされていて会社で助言を頂いたりしています。
ただお互い独身なので、前に一度私の家で泊まったこともあります」
塚本社長は心なしが顔を赤らめていた。

「それで、会社近くで食事をした後にアルコールも入っていたせいで、経営の助言を私の家で、詳しく聞きたいと誘ったのです。
それで大内さんは私の自宅に来たことがあったのです」
吉川は続きを促した。
「なるほど。何か変わったことはありましたか」
「その時に、大内さんは淡路島に別荘をこれから購入するとか、購入したとかの話が出たことを思い出しました」

横のツインテールの美少女も二人の仲に興味ありそうな顔をして塚本社長を見ている。

「私の会社も淡路島に商品企画を担当している拠点みたいなものがあり、そこから私の自宅に眼鏡の新製品の試作品が届いたのです。
それで大内さんにそのことを言うと、大内さんも非常に興味を示しまして。」
「どういう眼鏡ですか」
「眼鏡型のイヤフォンみたいなもので耳を覆わず眼鏡だけでWi-Fiを通じて少し遠くから自分だけの音楽を楽しめるものです。
骨伝導で音声を伝えるので周りの人に音楽は聴こえないのがおしゃれです」
「大内さんは何故それに興味を持ったのでしょうか」
「わかりません。モニターでしばらく使わせてほしいといわれ、そのまま渡しました」
「そうですか。それ以外はどういうお話をされましたか」
「それで、今度淡路島の別荘に来ないかと誘われました。
そのあと私の寝室で、二人で楽しく過ごしましたので特にビジネスの会話はありませんでした」
塚本社長は顔を真っ赤にしていた。

「今どこに大内さんがいるかわかりませんが、ひょっとしたら淡路島の別荘に居るのではないでしょうか」

「ところでこの写真に見覚えはありますか」
吉川は塚本桂子に川田直久の写真を見せた。焼死体ではなく運転免許所の写真を引き延ばしたものだ。
「知り合いにはいないと思います」
塚本桂子は写真を見つめていた。
「そうですか。何か想い出したら連絡してください。それから林田さんの行方について心当たりは有りますか」
「ありません」
こちらはしっかりとした口調で塚本桂子は答えた。

塚本社長が部屋から出ていき、次に関係者を呼ぶ準備に入った。

吉川は美都留に聞いた。
「どうして、女流棋士が県警の捜査に参加できるのだ」
「本部長に、『私は吉川さんと将来を誓い合った仲だから本部長のことも任せて。守秘義務を徹底するし邪魔はしないから吉川さんの助手をさせて』と女性警官の制服のひざ下を少し上げてすり寄って耳元で囁いたら、交通安全啓蒙活動の1週間は署長代理としてOKだと本部長に言われたわ。
それより大内の別荘ね」

「将来?」
「そうよ。覚えてないの?夢の中であの時代に特別な関係だったこと」
横の美少女は、ニヤニヤしながら、また何か企んでいるような顔だった。
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