狂気醜行

生死の間の町

008

　由一が出た後、理緒は心配そうな顔をして「先生」と文弘に声をかける。
「僕はしばらくこっちで寝泊まりします」
「ん？」
「由一はまだ隠していることがある気がするんです。それは、とても大切なことで……。だからかもしれませんが」
「俺にはよくわからんが、お前がそう感じるならそうなんだろう」
「…………」
「うーむ」
　文弘は腕を組み、少し考えてから理緒に言う。
「俺は向こうに戻る。お前はこっちに残れ」
「え？」
「俺が調べたいものは、お前が代わりに調べろ。お前の方が色々勝手がわかるだろ？」
「え、あ、まあ。地元ですし」
「なら、任せた。俺が調べたいものについては後でメールで送るから」
　じゃ、と文弘は立ち上がり、理緒に笑いかける。
「よろしくな、北ヶ峰刑事」
　そう言うと、文弘は部屋を出た。