狂気醜行

春血暫

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図書室の霊

002

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 奈穂の家は少し複雑で、両親はあまり家に帰ってこない。
 奈穂は親の代わりに、美鶴の面倒を見ていた。
 自転車の子供椅子に美鶴を乗せ、幼稚園まで漕いでいると。
 出勤中の優に会った。
「あ! 佐々塚先生!」
 奈穂が声をかけると、優は「おー!」と奈穂と美鶴に気づく。
「今朝も大変だな」
「違うというと嘘になりますが、何とかやっています」
「お疲れ」
 奈穂の頭を優は優しく撫で、後ろにいる美鶴の頭も撫でる。
「美鶴くん、大きくなったかな」
「はい! みっちゃん、今日で六歳になりました!」
「六歳かあ。というと、次の春は小学生かな」
「はい!」
 美鶴の元気の良い返事を聞いて、優は笑う。
「美鶴くんは今日も元気だな」
「はい!」
「元気すぎて困ることもありますけど、救われることも多いです」
 奈穂が笑うと、優も「そうだな」と頷く。
「俺も元気になったよ」
「へへ」
「良い子だね」
 と、優は笑いかけた後、「あ」と言う。
「二人とも少し急いだ方が良いんじゃないか?」
「へ?」
 奈穂は腕時計を確認し、「あ!」と言う。
「遅刻する!」
「する!」
 奈穂の真似をする美鶴を見て、優は小さく吹く。
「気を付けるんだよ」
「はい!」
「あい!」
 急げ、と言いながら自転車を漕ぐ奈穂を優は見送った。
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