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 ドアノブを回すのももどかしく、半ば体当たりのようにドアを開けた。
「光城先輩!」
 そこで僕が目にしたものは――
「んーっ!」
 とびっきりの笑顔でシュークリームを齧りながら椅子の上で、足をパタパタさせている先輩。
「……へっ?」
 思わず間抜けな声が漏れてしまった。
「……な、なんで真田君がここに!?」
 僕に気がついた先輩は、慌ててシュークリームを隠しながら慌てた顔をした。
「え、いや、あの、な、なんかおかしな声が聞こえたものですから、何かあったのかと思いまして……」
「そ、そう。大丈夫よ。ただ、ちょっとゴキブリが出ただけよ、ノミ野郎」
 うわー、さり気なく罵倒されちゃったよ。あと先輩、口にクリームついてます。
「さあ、さっさと出て行きなさい。貴方の顔を見ていると、虹彩に以上をきたしそうだわ」
「わかりました。じゃあ、とっとと出ていきますね」
 お疲れ様でした、と声を掛けて再び生徒会室を後にした。



「なんだったんだ、あれ……?」
 頭にハテナマークを浮かばしながら、およそ十五分ぐらい帰路を歩いていた。
「先輩、甘いもの好きなのかな? いやでも、この前のお茶うけの羊羹はすっごく微妙な顔で食べていたからなー」
 なんてつぶやきながら、すっかり寒くなった十一月の空気を吸った。葉っぱはもう紅から茶色に変わりつつある。
 ま、きっとなんかいいことがあったんだろう、と自分の中で勝手に決めたところで我が家についた。そのままポストの中の郵便物を確認しつつ、扉を開いた。
「ただいまー、って、誰も居ないか」
 そう、僕の両親は今、ふたりとも今日から出張なのだ。帰ってくるのはだいたい一ヶ月後。だから、近くのコンビニで弁当を買ってこようと思ったのだが――
「明かりが点いている?」
 台所の明かりが点いていた。僕は普段台所に行かないため、明かりは点けない。よって、他の人間の仕業となるのだが――
「母さん、まだ帰ってきてないよな?」
 繰り返し言うが、ふたりとも出張中である。まさか泥棒?
 怖くなった僕は、近くにあった孫の手を持ち、そろりそろりと台所に近づいた。すると、がさごそ動く影が見えた。間違いない。何かいる! 
 その瞬間、僕は覚悟を決めた。
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