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126,厨房は戦場

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「じゃあ、もうあんまり時間が無いから手短に説明するね」
 ヒロくんは慣れた手つきで鶏肉を刻み始めた。
「うちは他のとこと違って厨房で手作りだから、時間がかかるんだ。だからっと」
 切り刻んだ鶏肉を大きな鍋に移す。そして、コンロの火を強めた。
「こういうふうに下準備が重要になってくるわけなんだ。で、高木くんは甘いもの担当。パンケーキとか、あとは手作りショートケーキとかは主に彼が作ってるよ」
「ほぉー、体に見合わずなんて繊細な……」
 クリームを絞る高木くんはもうプロだった。
「で、僕はグラタンとか、カレー、あとはオムライスの担当だよ。でも、さすが高木くんだなぁ、あんなペースで作れるなんて」
 って、感心しているけど、その手は一度も止まっていない。それどころか、並行してホワイトソースを作り始めた。
「あれ? ホワイトソースも作ってるの?」
 流石にホワイトソースは市販のものじゃないの?
「うん。これは店長のこだわりでさ、最高の美少女と、最高の料理、その二つが揃わないと意味がない、って常々言っているんだ。あ、そうだ、やってみる?」
「うん! やってみる!」
 私は木べらを受け取りました。この木べら、大きいですねぇ。
「じゃ、いっきまーす」
 合計百食分あるというホワイトソース。かき混ぜるだけでも一苦労だ。
「ここ、お願いしててもいいかな? 僕、チキンライスを作りに行かないといけないから」
「ま、任せて!」
 すっごく忙しい! これが厨房……。
「おーい! あと少しで木ノ島さんが来てくれるってよ!」
 ショートケーキを作り終わった高木くんがスマホを片手に叫んだ。
「ありがたい! 今日は非番のはずなのに、長田くんが寝込んじゃって、手が足りなくて」
 木ノ島さん? そろそろ登場人物の収集大丈夫ですか? このままだと、誰がどこの世界のキャラかわからなくなりません?
 私はソースを煮詰めながら登場人物の心配をした。
「布志名さーん!」
「はーい! あと、七香でいいですよー!」
「じゃあ七香さーん、ソースはもういいので、火を止めて、こっち来てもらえますかー?」
「りょーかいでーす!」
 ソースもさっきより色が濃くなってきたことだし、もう良いでしょう。多分。
 ということで私は、コンロの火を落とした。
「今行っきまーす!」
 厨房は戦場とはよく言ったものですね。全くもってその通りですよ。
「この野菜、切っといてくれないかな?」
「おまかせっ!」
 ひぃぃー! ただの手伝いなのに凄い仕事量!
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