中途半端な俺が異世界で全部覚えました

１２１，アニメ好きだねぇ

「う、歌!?」
「そうよ、歌。ナナカは確か、歌うの好きだったわよねー？」
「はい！　……まあ、アニソンとかばっかりですけどね」
　まともな歌はまあ、あんまり期待しないでくださいね？　でもやっぱり歌といえば……
「マクロス！　最近私の中でマクロスデルタが熱いんですよ！」
　マクロスシリーズの最新作、マクロスデルタ！　つい近日、劇場版の制作が決定したとか！　おめでとうございます！
「メッサー様のシーン、熱かったわねー」
「はい！　あそこは泣けます！　白騎士との戦い、一体どれほどのファンが悲しんだか……ライブでそのシーンが流れると、みんながメッサーコールしたりして、愛を感じます！」
「はーい、その話はまた後でね？」
　やんわりとミツカお姉さまにストップさせられる。残念！
「ナナカ、今、少しで良いから歌ってみてくれない？　ワンフレーズだけでいいから」
「了解であります！　えーっと、じゃあ行きます」
　なんか変に緊張するよぉ！
「涙枯れるまで、まだ出ぬ答え、追い求めてー、涙枯れるまで、我が行方、迷いながらも、描きかけの今、刻む、証、この手でー！」
　私は心絵という、お気に入りの一曲のサビを歌った。ちなみに心絵と言うのは、メジャーという野球アニメのOPで、私のお気に入りの曲の中でも特に秀逸でね？　歌うだけで涙が出てくるぐらい熱い曲なの！　内容も凄くて主人公の……（長いので割愛）
「うん、さすがね。アニメの知識とか合わせて諸々。でも」
「でも？」
「まだまだナンバーズを会得するには至らないわ？」
　結構辛口の審査だった。
「じゃあ、もっと修行を積めと？」
「んー、そうねぇ、確か、ナナカのご主人様は日本に行くのよね？」
「はい、私もご一緒させていただきます！」
　とっても楽しみ！
「そう、それなら好都合だわ！」
　パンと手を叩き、嬉しそうに笑うミツカお姉さま。ああ、なんて素敵な笑顔！　守りたいこの笑顔！
「ナナカは日本のカラオケ、体験したことがあるかしら」
「カラオケ、ですか」
　カラオケ。それはこの世界には無い文化。歌を思いっきり歌うことができ、なんと採点までしてくれちゃうの！
「そ、カラオケで歌、鍛えてくるのよ」
「それは名案ですね！」
　カラオケ体験もできるし、ナンバーズ習得もできる、まさに一石二鳥！
「で、多分なんだけどね、お金が足りなくなると思うの」
　そー、ですね。私が持っていけるお金には限りがありますし。
「だから、ナナカはお金を稼ぐ手段も考えなければいけないの」
「アルバイトとかでですか？」
「そう！　でも、コンビニとか、身分証を提示しなくちゃいけない場所は厳しいからそこは考えないと」
「はえー、難しいですねー」
「ね？　だから今のうちにできることは考えておかないとね？」
「ですね！　それと――あ、すいませんミツカお姉さま、ご主人に呼ばれてしまったので、ここでおいとまさせていただきますっ！」
「はーい。頑張ってねー」