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108,結界
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「梨沙、もう大丈夫なのか?」
「あーうん、まだくらくらするけど……」
梨沙が起き上がり、上にかけておいた毛布を取って立ち上がろうとする。だが、まだ本調子では無いため、立ち上がることが出来ないようだ
「ちょ、まだ寝とけって。傷は治したけど、血は足りてねぇんだからさ」
血の生成はかなりの高位魔法師じゃないと出来ない。ヒールよりも難しい。
「それよりどうしてこんなにぼろぼろになったんだ?」
「それは……」
梨沙は言葉をつまらせた。そして、何かを考え込んでしまった。
「とても説明が難しいから、あんまり上手くまとめられないかもしれないんだけどいいかな?」
「ああ、大丈夫だ」
「わかった。じゃあ話を始めるね。私はさっき、近くの神社に行ってきたの。ネリアくんの世界で言う教会のようなもの。で、そこで私は結界の修復をしていたの」
「結界の修復?」
「そう。陰の気が現し世に届かないように全国各所に張り巡らされてるの。例えば、東京の山手線。あれは電車としてだけじゃなくて、円を描いて皇居を守るようにできてるの。風水ってやつね……まあ、そういう難しいことは別にいいや。ここ、箸墓古墳の近くにも結界があるんだけど、近年、何故か効力が弱まってきてたから修行ついでに補強しようと思ってたの」
「じゃああの荷物は」
「そう。補強用の道具。結界が張られてから結構たったから効力が落ちてきたのかなー、なんて思ってたんだけど違った。ここの結界には『野良神』が攻撃を仕掛けてた」
「野良神? どっかで聞いたな……たしか神の成り損ないじゃなかったか?」
「んー、まあ、その認識で構わないんじゃない? 厳密に言うと、神気が足りなくて土地神になりきれなかったとか、神落ちってこともあるけどね」
梨沙が補足してくれる。
「野良神が梨沙を攻撃してきたのか?」
「うん。張り直しのための作業をしてたら後ろからやられた。しかも複数体いた。多分だけど、誰かに操られてる」
「結界を壊すためにか?」
「それもあると思うけど、なにか違う気がする……ねえ」
「ったく、もう一度神社に行きたいって言うのか?」
「そ、そう! よくわかったね?」
「まあな。でも、今日はだめだ。出血がひどかったんだから。今日は近くの旅館とかに泊まって、明日行こう」
今日このまま行けば、野良神に今度こそ殺されかねない。
「うん、わかった。でも、あんまり時間が無いよ。もうここの結界は軋みをあげてる。一週間以内に確実に壊れる」
「一週間か……短いな」
「で、リーヴァちゃんにお願いなんだけど、私今、車を運転できる状態じゃないから、街の人気のないところまで送ってもらえない?」
「ぴゅー!」
任せて下さい! そう言っている気がする。
「よし、そうと決まれば移動しようぜ。そろそろ日も暮れそうだ。車から財布とか、必要品を取ってくる。あとは……」
俺は自分の血まみれの服を見る。
「服をなんとかしなくちゃな……」
「あーうん、まだくらくらするけど……」
梨沙が起き上がり、上にかけておいた毛布を取って立ち上がろうとする。だが、まだ本調子では無いため、立ち上がることが出来ないようだ
「ちょ、まだ寝とけって。傷は治したけど、血は足りてねぇんだからさ」
血の生成はかなりの高位魔法師じゃないと出来ない。ヒールよりも難しい。
「それよりどうしてこんなにぼろぼろになったんだ?」
「それは……」
梨沙は言葉をつまらせた。そして、何かを考え込んでしまった。
「とても説明が難しいから、あんまり上手くまとめられないかもしれないんだけどいいかな?」
「ああ、大丈夫だ」
「わかった。じゃあ話を始めるね。私はさっき、近くの神社に行ってきたの。ネリアくんの世界で言う教会のようなもの。で、そこで私は結界の修復をしていたの」
「結界の修復?」
「そう。陰の気が現し世に届かないように全国各所に張り巡らされてるの。例えば、東京の山手線。あれは電車としてだけじゃなくて、円を描いて皇居を守るようにできてるの。風水ってやつね……まあ、そういう難しいことは別にいいや。ここ、箸墓古墳の近くにも結界があるんだけど、近年、何故か効力が弱まってきてたから修行ついでに補強しようと思ってたの」
「じゃああの荷物は」
「そう。補強用の道具。結界が張られてから結構たったから効力が落ちてきたのかなー、なんて思ってたんだけど違った。ここの結界には『野良神』が攻撃を仕掛けてた」
「野良神? どっかで聞いたな……たしか神の成り損ないじゃなかったか?」
「んー、まあ、その認識で構わないんじゃない? 厳密に言うと、神気が足りなくて土地神になりきれなかったとか、神落ちってこともあるけどね」
梨沙が補足してくれる。
「野良神が梨沙を攻撃してきたのか?」
「うん。張り直しのための作業をしてたら後ろからやられた。しかも複数体いた。多分だけど、誰かに操られてる」
「結界を壊すためにか?」
「それもあると思うけど、なにか違う気がする……ねえ」
「ったく、もう一度神社に行きたいって言うのか?」
「そ、そう! よくわかったね?」
「まあな。でも、今日はだめだ。出血がひどかったんだから。今日は近くの旅館とかに泊まって、明日行こう」
今日このまま行けば、野良神に今度こそ殺されかねない。
「うん、わかった。でも、あんまり時間が無いよ。もうここの結界は軋みをあげてる。一週間以内に確実に壊れる」
「一週間か……短いな」
「で、リーヴァちゃんにお願いなんだけど、私今、車を運転できる状態じゃないから、街の人気のないところまで送ってもらえない?」
「ぴゅー!」
任せて下さい! そう言っている気がする。
「よし、そうと決まれば移動しようぜ。そろそろ日も暮れそうだ。車から財布とか、必要品を取ってくる。あとは……」
俺は自分の血まみれの服を見る。
「服をなんとかしなくちゃな……」
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