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220、中二病患者ではないでしょう

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「い、痛かったですご主人……」
 俺はナナカにデコピンを繰り出し、そしてなんだか暴走気味のイツカをなだめて本題へ。
「えーっとイツカさん」
「団長で!」
「ダメです。そのネタ終わりで」
「ちぇー、それならイツカでお願いします。ナナちゃんを呼ぶときの感じで」
「あ、そう? じゃあ、イツカ、魔書館で見た影、あれは君じゃ無いんだな?」
 俺はやっと聞きたかった事を聞く。
「はい、私ではありません。ナンバーズを限界まで行使した後だったので、本になって休眠中でした」
「……じゃあやっぱり」
「何者かが魔書館に侵入した、ということじゃな?」
 ソアさんが真相を突いた。
「……正直、わしには心当たりがあるのじゃ」
「え? そうなんですか?」
「うむ。消去法じゃがな。じゃが、ヤツが魔書館に来る理由がわからんのじゃ。今頃になって、一体どうして……」
 ソアさんは考え込むように顎を触る。
「とにかく、この件についてはわしが独自に調査を続けておく。だから一旦置いておいて、ネリアが出会った謎のヤツについて議論するのじゃ」
「そうですね、それは気になります」
 お茶を飲みながらサイフォスさんもうなずく。
「えー? それってただの中二病患者じゃないのー?」
 デザートを食べ終え、眠くなってきたのかフェイウがテキトーなコメントをする。
「中二病患者かもしれないですが、ただの中二病患者がご主人様の背後を取れるとは思えません」
「同感だ。アイツは普通じゃない」
 あの底なしの闇のような雰囲気。少しざらついたやや高い声。女性とも男性ともあえてとれないようになっていた。
「お主の周りは不可解なことだらけじゃの。気をつけろ、としかわしからは言えん」
 やれやれ、とソア案がかぶりを振る。
「魔王の復活の事もある。魔獣たちも各地で不審な動きをしているし、本当に警戒するのじゃ」
「……はい、気を付けます」
 その一言に、場の緊張感が一気に高まった。
「ま、そこまで気負うではない。まだ時間はある、焦らずじっくりやるのじゃ」
 ソアさんもお茶を飲み、ふーっと息を大きく吐いた。
「とにかく、暗い話はここで終わりじゃ。フェイウ、若人どうし、少し外で歩いてくるが良い」
「ほぇ? そーですね、少し行ってこようかなー。ね? 行こう、ネリア!」
「あ、ああ。わかった。それじゃあ、少し出てきます」
「うむ、行ってこい。リーヴァはそうじゃな……ワインでも飲むか?」
「飲みます! よろしいのですか⁉」
「少しじゃぞ。暴れそうになったらどこか人のいないところに転移させるから安心せい」
「いいんですか師匠⁉」
「かまわんかまわん。帰巣本能とやらが働くじゃろ」
 ……心配だぁ。
「ほらー、行くよネリア! 早く早く!」
「はいよー、わかったから急かすなって」
 少し……いや、めちゃくちゃ心配ではあるが、ソアさんにお任せして少し歩いてくるか。








「……行ったな? 二人は」
「ええ、玄関のドアから出ていきましたよ」
 サイフォスが玄関の方を見て言う。
「……じゃあ、ここからは大人の話じゃな。サイフォス、お主は魔書館への侵入者の目星がついておるな?」
「……はい、師匠と同じ者が浮かんでいます」
「そうじゃよねぇ……はーっ、どうしてこのタイミングなのか……」
「それにネリアくんが出会った影。私には偶然には思えません」
「奇遇じゃな。わしもじゃ。女のカンってやつじゃな」
「それで、どうしましょうか? やっぱり伝えた方がいいですか?」
「ダメじゃ。変なことに気を回させるでない。わしらで調べるぞ、イチカ、ニホ!」
 ソアが指を鳴らす。すると煙が二つ立ち、そこからイチカとニホが出てきた。
「……ソア様」
「んー、用件は大体理解してる」
「主らの力も借りたい、頼めるか?」
「もちろん。お任せください」
「おっけー。片手間でよければ」
「助かるのじゃ。……本来は姉の責任を、妹たちには背負わせとぉ無かったのじゃが……」
 ソアが渋い顔をする。
「気にしないでー。それじゃ……あ、そういえばこれ。フェー子に渡しておいて」
 ニホが懐から一冊の本を取り出し、ソアに渡した。
「ニホ……仕事が早いの」
「ま、かわいいかわいい妹のためだもの。姉として頑張った。でも、使えるかはあの子次第」
「うーむ、フェイウのことじゃから、大丈夫じゃとは思うぞ。それと、これ以上は主人公であるネリアの株が……」
「うむ、それは言えているな……頑張るのだネリアよ……」
 

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