上 下
66 / 245

63、キャラ崩壊

しおりを挟む

「三百二十七ーっ!」
「さ、三百二十七ーっ!」
 ……死ぬ。マジで死ぬ。
「三百二十八ーっ!」
「三百二十八っ!」
 俺は筋肉強化のため、腕立て伏せをしているのだが……
「三百二十九ーっ!」
「三百二十九っ」
「声が小さいっ!」
「三百二十九!」
 桁がおかしい。普通は二桁、多くても百回ぐらいなのに……
「三百三十ーっ!」
「三百三十!」
 三百を超えた。もう腕が、というより胸のあたりの筋肉が限界……。
「三百三十一っ!」
「三百三十一!」
 結局四百まで続いた。




「うぐぉぉぉ、腕が……」
 脱いだ上着でさえ持つのが辛い。
「よく耐えたな」
 篤人がタオルを投げてくれた。
「あ、どうもです」
 ひょいっと腕を上げ――
「ぬおぉぉぉ!」
 激痛が走った。
「明日は筋肉痛だな。覚悟しといたほうがいいぞ」
 ……でしょうね。
「あ、そうだ。布志名二尉がお前を呼んでたぞ」
「俺をですか?」
「ああ。ま、そんなに急ぎの用って感じじゃなかったから、ゆっくり休んでから行けばいい」
 そう言って篤人は立ち去った。




「どうぞ」
 扉の向こうから声がした。
「失礼します」
 木製の扉を開け、中に入ると――
「……私服、ですか?」
 フリフリのレースがいっぱいついた服を着ている布志名二尉がいた。
「……失礼しました」
 パタン、扉を閉めた。
「あれ? どうしたの?」
 ……俺は何も見なかった。フリフリの服を着た布志名さんなんて!
「もう。いきなり閉めるなんてずるい!」
 ガチャっと扉を開け、布志名さん? が出てきた。いやほんと何があった!?
「あの、えーっと、一応確認してもいいですか?」
「ん? いいよ?」
 小首をかしげる布志名さん(仮)。
「双子の妹とかそういうオチですか?」
 だってだって、あまりにもキャラが違いすぎるんだもの。
「あはははっ! ネリアくん面白い!」
 爆笑されてしまった。
「今の私はね、オフモードの私なの」
「は、はぁ」
 オフモードって何?
「つまりですね」
 スッと目が細められ、いつもの布志名さんに戻った。
「今日私は、仕事がお休みなのです」
「はい」
「なので、この冷静な大人な女性という仮面を脱ぎ、この素の私に戻っているわけですっ!」
 ……ダメだ、理解が追いつかない。何なの? キャラ崩壊とかそう言う話どこじゃなくなっちゃってるんだけど。
「ま、細かいことは後にして、今は出かける準備をしてね!」
「で、出かけるんですか?」
「うん。きっとネリアくんのためになると思うんだぁ」
 ……まあ、一度この日本と言うところをじっくり知りたかったし、ちょうどいいか。
「わかりました」
「あ、それと!」
 ずびし! と指を指された。
「今はプライベートだから、梨沙ってよんで!」
「え、えぇ?」
 なんたる無茶振り。しかも年上の女性を呼び捨てなんて……。
「ほら、いいからいいから」
「わ、わかりました……」
 ええい、仕方ない。フェイウの無茶振りにも、ナナカの無茶振りにも耐えてきた俺の適応力、見せてやるぜっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...